無限論の教室 の商品レビュー
なんつーか、所々に現れる人名が面白かった。まず、大森荘蔵が野矢の大先生であり、そして野矢のほぼ同期にあたるのかな?が田島正樹なのだろう。個人的に中島義道の名前を期待したのだけれども、それはさすがに出てこなかったようだ。まあ、哲学者はどいつもこいつも偏屈なやろうばかりなのだけれども...
なんつーか、所々に現れる人名が面白かった。まず、大森荘蔵が野矢の大先生であり、そして野矢のほぼ同期にあたるのかな?が田島正樹なのだろう。個人的に中島義道の名前を期待したのだけれども、それはさすがに出てこなかったようだ。まあ、哲学者はどいつもこいつも偏屈なやろうばかりなのだけれども、野矢さんはまともな人なのだろうなと思った。比較的にだけれど。この人は、なんつーのかなそれだけ客観視できているからね、本著的に言えばメタ的にね。ほんものはメタ的な視点をもてないだろうね、ニーチェに然り。いや、持っているんだけれども、おそらくそれがどっかでよくわからなくなる。けれどそれでよくわからなくなってしまうような人には哲学をわかりやすく噛み砕くことはできはしないだろう、だからメタ的に捉えられることは野矢さんの才能だろうし、しかもそれでいながらしっかりと哲学できているのは、竹田や西とは違うのだろうなと思う。別に竹田は西を馬鹿にしているわけではないのだけれども、彼らは矛先みたいなのが哲学とは別の道へと進んでいる気がする。 本著の内容からはそれてしまっていることばかり書き連ねてきたが、本著はタイトルのとおり無限論について述べている、まあ、しかし、「可能性としての無限論はあるけれども、それはあくまで可能性でしかなく、ないのと一緒だ」という直観主義が披瀝されており、本著のタジマ先生はその考え方に則っているから、無限論を否定しているといってもいいような著書である。まあ、可能性としては認めているというのが基本スタンスだから、無限論そのものを否定しているというと語弊があるのだけれども。本著の流れとしては、まずは実無限という無限論が実在しているという考え方=カントールの流れをとり、それがラッセルによってしかし矛盾するという問題へと持ち込み、それを直観主義によって乗り超えることになる。だが、その直観主義へと反論が食らわせる(その理由は、直観主義を貫ければ排中律{A or notA}が成立しなくなるからである)。ヒルベルトである。そしてそのヒルベルトをゲーデルが不完全性定理によって打破する。だが、不完全性定理によってゲーデルが意図したのは、ヒルベルトのように直観主義にへりくだる必要がないということを示すことであって、直観主義の立場からヒルベルトプログラムを否定してたわけではないということである。そして最終的にはいまだに決着がついていないと言える。あとがきにもあったが、やはり頭をよぎるのはヴィトゲンシュタインである。とはいえヴィトゲンシュタインは背景みたいなものなのだけれども、直観主義によってそんなの意味がないという、あのラディカルな破壊性なんかにはそれとなくヴィトゲンシュタインが感じられるし、まあ、なんなのだろう、本著の締め方はよかったよね、後は読者にゆだねる、と。あなたはあなたの哲学を持ちなさい、とそういわれているようで少し安堵する。本著の内容は全てが抽象的で意味がないといわれてしまうかもしれないし、実際に自分もそう感じそうになったが、それは一つのわななのかもしれない。なぜなら本著の戦いは、具象と抽象との戦いだからである。可能無限は具象に近しいだろう。実無限は抽象に近しいだろう。具象は直観であり、抽象は形式とも言える。本著での最終的な争いは、直観主義と形式主義となっているがそれは換言すれば、具象と抽象との争いなのである。哲学者は誰も彼もが抽象的な戦いをしているのではなくて、むしろ抽象と戦うこともあるのである。とりわけ数学は抽象的な学問であるから(実はこのことはあまり実感されていないように思われるけれど)、だからこそ戦いは熾烈になる。どこまで言っても二つの相反する対立から逃れられないからこそそれを壊そうとするヴィトゲンシュタイン。メタ、超越、しかしそれが更に否定され再び二つの相反する対立へと引き戻される。ルサンチマンがそこここに感じられる。 ※追記。タカムラさんかわいい。
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自宅で本を整理していた際に出てきて、気になったので再読。10年前に購入した本のようだが、内容は全く覚えていなかった。というより多分途中で挫折したんだと思う。ゲーテルの不完全性定理が理解できたわけではないが、久しぶりに受験数学以外の数学本(というか教養本でしょうか)を読めたのはよか...
自宅で本を整理していた際に出てきて、気になったので再読。10年前に購入した本のようだが、内容は全く覚えていなかった。というより多分途中で挫折したんだと思う。ゲーテルの不完全性定理が理解できたわけではないが、久しぶりに受験数学以外の数学本(というか教養本でしょうか)を読めたのはよかったと思う。
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駒猫を手懐けているという駒場の重鎮、野矢先生の無限論に関する一冊。生徒二人と先生だけという授業の様子が軽快に描かれている。「無限とは何か」そんな問いに哲学的に立ち向かっていく。自分もその教室の一室にいるような気持ちで楽しく読み終えることができた。本当にこんな授業があったらいいのに...
駒猫を手懐けているという駒場の重鎮、野矢先生の無限論に関する一冊。生徒二人と先生だけという授業の様子が軽快に描かれている。「無限とは何か」そんな問いに哲学的に立ち向かっていく。自分もその教室の一室にいるような気持ちで楽しく読み終えることができた。本当にこんな授業があったらいいのにな。
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無限について。 この先生がうざい。 でも、無限に対しての考え方をいろんな角度からわかりやすく解説してあり、最終的にゲーデルの不完全性定理まで持っていく。 とても分かりやすかった。 でも先生がうざい。
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通読の結果、実無限派と可能無限派それぞれの解釈の違いや、一般対角線論法は、研究室での先生と2人の生徒とのやり取りを通して理解できた。ただ、第11章以降は理解をしながら読み進めることができなかったため、再読を通して読了する必要がある。
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[ 内容 ] アキレスと亀から不完全定理まで、かろやかに笑う哲学講義。 「無限は数でも量でもありません」とその先生は言った。 ぼくが出会った軽くて深い哲学講義の話。 [ 目次 ] 第1週 学生が二人しかいなかったこと・教室変更 第2週 気まずい時間・アキレスと亀・自然数は数えつ...
[ 内容 ] アキレスと亀から不完全定理まで、かろやかに笑う哲学講義。 「無限は数でも量でもありません」とその先生は言った。 ぼくが出会った軽くて深い哲学講義の話。 [ 目次 ] 第1週 学生が二人しかいなかったこと・教室変更 第2週 気まずい時間・アキレスと亀・自然数は数えつくせない 第3週 チョコレートケーキ・パラドクスへの解答・可能無限と実無限 第4週 全体と部分・キリンとカバ・次元の崩壊 第5週 実数・独身製作器としての対角線論法・喫茶店のネコ進法講義 第6週 実数とは何か・ピタゴラスと豆大福・余興 第7週 マジタ・ベキ集合と概念実在論・羊羹の思い出 第8週 一般対角線論法・無限の無限系列・カントールのパラドクス 第9週 土手の散歩・ラッセルのパラドクス・嘘つき・自己意識の幻想 第10週 直観主義・パラドクス断罪・虚構と排中律・ブラウアーの手袋 第11週 暑い部屋・形式主義はいかにして排中律を取り戻そうとしたか 第12週 ゲーデルの不完全性定理・G・インドのとら狩り [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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数学めいたタイトルと異なり内容は哲学とお茶目な教授の話。 無限という概念のほかに学生生活の一辺が見えて面白い。
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純粋に楽しかった。部分的にヤスパちょんの自我論を読んだばかりだったのだけど、彼の人間理解と可能無限論にちょっとした類似を思ったり。
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集合論の解説書ですが、無限論の講義を受ける「僕」という物語仕立てになっていて、サラリと、本当にサラリと読めてしまいます。範囲もけっこう広いのに、こんなに分かりやすく解説してくれるなんて、有難くて涙が出ます。
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微積のゼミで、レポート課題として読んだ。 野矢茂樹氏の本は、外れ無し。 無限について考えさせられる。 面白い秀作。
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