大人のための残酷童話 の商品レビュー
昔子供の頃に読んだ童…
昔子供の頃に読んだ童話が、毒の入った現実的な話に書いてあるところが、おもしろいと思う人と、不快に思う人に、分かれるかもしれません。
文庫OFF
鋭い一冊
それぞれの話の最後に「教訓」が書かれているのですが、それが著者独特の毒を含んでいて、思わずニヤリとしたり痛かったり……。童話の裏側に隠れた人間の本質を、さらりと書き出した一冊です。
yoko
おびのりさんの本棚でお見かけして妙にきになりました所、昼休みに読めるとの事で隙間時間用に。 これが驚きの読みやすさで、隙間時間に読んでいただけなのに現在進行中の2作より先に読み終えてしまいました。 おびのりさんのレビューにもあるように、基本的な古より伝わる童話、神話に作者様の創...
おびのりさんの本棚でお見かけして妙にきになりました所、昼休みに読めるとの事で隙間時間用に。 これが驚きの読みやすさで、隙間時間に読んでいただけなのに現在進行中の2作より先に読み終えてしまいました。 おびのりさんのレビューにもあるように、基本的な古より伝わる童話、神話に作者様の創作が入りエログロの大人向け童話となっております。 エロさは『魔獣狩り』を読んでいる私にとっては最早可愛いものですが、おびのりさんとは衝撃を受けた話が違いましたので、中でもなんだってぇ?!となった作品を4つだけご紹介したいと思います。 作品ごとに教訓が一行書いてあります。ネタバレになるかも知れませんがこれ有りきなのでいくつかだけ書かせて頂きます。 『猿蟹戦争』 猿が蟹に意地悪をして仕返しをするという有名なアレです。 本作ではこの仕返しのレベルが異常値。 以前に同じく猿に酷い目に合わされたムカデやナメクジなどが大集合。俺もあいつを許せないのだぜ!!と寄って集って蟹の元に集まり猿を懲らしめる。 教訓「※※を支援する会」事始め ブラックすぎる。 被害者の会のような趣ですがここまでやると復讐の連鎖は何処まで続くのだろうか、的な深い話になりそう。 『かぐや姫』 ほぼ、そのまんま竹取物語です。かぐや姫は宇宙人説はよくある話だと思いますが、問題なのはこのかぐや姫の住んでいた星の政治的問題。 なんだかえらいことになってますけど?と思っていたら、最終的にえらいことになったのはかぐや姫本人でした。 高畑勲もびっくりです。 教訓「かぐや姫は宇宙人だった。そして宇宙人は醜い」 言い切った、言い切ったよ!! 今でこそ美しい宇宙人という設定が多くありますが、当時(昭和59年)はグレイマンのようなイメージしか無かったのですかね。 まあでも、宇宙人が醜くかろうがなんだろうが、結局1番怖い面を持っているのは人間なんだろうな、と何とも言えない気持ちになった一作でした。 『異説カチカチ山』 お婆さんを殺した狸に、お爺さんの代わりに兎が復讐するという、原作も中々にヘビーな話なのですが。 本作はカニバリズムを含む内容なのもあってより一層、物騒な事になっています。 お爺さんとお婆さんの性格が改変されていて、この本は人間の嫌な面を知らしめる作品なのか?!と震えましたが、1番震えたのは狸の憎悪に対してです。 お婆さん、何度も騙されるなよ、DHAが足りないんじゃないの?!と冷や冷やしましたが、待っているのは最悪な結末でした。 教訓「狸だって復讐します」 そんな、誰でもやるよね?みたいなライトな感じで書かれても…。 これは『猿蟹戦争』と少し通ずるものがありますね。 だから復讐の連鎖が何処までも… 駄目だ、もうマザーテレサかモハメド・アリになるしか解決法がない! 『魔法の豆の木』 駄目だ、これは本当に駄目! 罪のないお子様にそんな事したら駄目だぁー!! ジャックと豆の木です。 天国に行ってしまったお母さんと会う為に、怪しい豆を植えて天まで伸びた木に登ってしまう男の子。 父親も正座させて小一時間ほど説教したいのですがまだ可愛いもんです。 お母さんは、元の姿で待っているのか…?! 教訓「子供を棄てた母親は鬼になるのです」 もう何も言えない。 また小田和正さんが流れてくる。 けれど今回は嬉しくて♪とはなりません。ただただ言葉に出来ない。 もう木ごと全部燃やしたろかい。 このように、中々に衝撃な話が続きます。 恐らく殆どは皆さんがご存知のお話がベースですが、一応巻末に元になった本のタイトルが全て表記されてあります。 ちょこちょこ知らないのもありましたね。 おびのりさんのレビューにも書かれてある通り、10数ページに満たない作品もありますのでさくっと読めてしまいます。 よくこんなに思い付くなあと感心しましたが、一寸法師のアレだけ一寸のままの話は最後がもう滅茶苦茶で唯一笑った作品でした。 小さくたって、良いじゃないか!!傷つくよ!! (最近下の話が多いなあ…)
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噂には聞いていたエログロ童話集 1984年の作品 全26作品 一作10ページほどの短編 それでも各作品何を元としているか明確 そこにより残酷で非現実的なストーリーに仕上げている、あくまで大人の為の童話 各作品のラストにそのストーリーからくる教訓で締めくくるが、そちらもブラック 倉...
噂には聞いていたエログロ童話集 1984年の作品 全26作品 一作10ページほどの短編 それでも各作品何を元としているか明確 そこにより残酷で非現実的なストーリーに仕上げている、あくまで大人の為の童話 各作品のラストにそのストーリーからくる教訓で締めくくるが、そちらもブラック 倉橋さんは、何かを教示るとかではなく、大人の読者が楽しめれば良いという事に徹したのかなと思う 衝撃的だった作品 〈人魚の涙〉 上半身が魚で下半身が人の人魚が王子に恋をする 人は下半身に恋をしない 〈一寸法師の恋〉 一寸法師のお姫様の大人のおもちゃ化 鬼退治の後、小槌で身体を大きくしてめでたしのはずが、一寸法師のままのところがあってだね… 世の中、厳しいんだよと再確認できる童話集
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
童話にエログロとか毒や悪意を盛り込んで作り替えたもの。 本書とは関係ないが、小さい頃に何も考えずに歌っていた、本当は怖い歌をいろいろと思い出した。 てるてるぼうず、赤い靴、花いちもんめ、かごめかごめ、通りゃんせ、など。 大人になって冷静に歌詞を読むと、どんな世の中だったのかと思う。 童謡はさておいて、この「残酷童話」は人の醜い心が満ち溢れている。 食欲、性欲、物欲、支配欲、何をとっても意地汚く、自尊他卑でどの話にも光明が見られない。 加えて支離滅裂・目茶苦茶・下品・復讐心・無秩序・不合理・理不尽といった言葉しか浮かんでこないストーリー。 どの物語にも最後に"教訓"が添えられている。 2つだけネタバレするとこんな感じ。 ・鏡を見た王女(原作:谷崎潤一郎「春琴抄」) 【教訓】鏡は己の醜さを見るためにある ・飯食わぬ女異聞(原作:日本昔話「飯食わぬ女」) 【教訓】女を食わせぬ男は女に食われます 現実の中にひっそりと存在する残酷さが見え隠れする、現実離れした世界を描いた作品集でした。 私が苦手な悪趣味な話ばかりなのに、嫌悪感が湧いてこなかったのが不思議。
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再読。 単行本にあった旧仮名遣ひと「教訓」がなくなったのが残念。 うろ覚えだが 「人は下半身には恋をしないものです」 「真の愛とは醜いものを愛すること、つまり不可能」 「愚か者が幸福になることはありません」 「坊やに恋をする資格はないのです」 「自分のルーツを調べるものではあり...
再読。 単行本にあった旧仮名遣ひと「教訓」がなくなったのが残念。 うろ覚えだが 「人は下半身には恋をしないものです」 「真の愛とは醜いものを愛すること、つまり不可能」 「愚か者が幸福になることはありません」 「坊やに恋をする資格はないのです」 「自分のルーツを調べるものではありません」 「厄介者をどうにかするのは家族の責任」 「神様とはつまりお化けなのです」 「人は自分を愛してくれる人を愛するとは限りません」 …読みたかった。 単行本のあとがきに「救いのない話」とあったような気もするが、愚かな者は酷い目に遭い、凡庸な者にも「お前は中途半端に賢く、妙に物分かりがよさそうで、責任を取らず、決断せず、判断はいつも少しずつ狂う。そういうお前の愚行の積み重ねが今日の結果を生んだのだ」と容赦がない。 指輪の話で王様の「大胆な説だが根拠がない」が少しツボった。
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童話が持つ残酷さ、不条理さを前面に押し出したリライト。 人間の醜さ、愚かさがつきつけられる。 ただ、不思議なことにそれがどこか清々しい。 露悪趣味に溺れているような感じはないからか。 性愛の問題を扱うことが多いのだが、どこか筆致が冷めている。 が、話に精彩が出てくるのだ。 不思...
童話が持つ残酷さ、不条理さを前面に押し出したリライト。 人間の醜さ、愚かさがつきつけられる。 ただ、不思議なことにそれがどこか清々しい。 露悪趣味に溺れているような感じはないからか。 性愛の問題を扱うことが多いのだが、どこか筆致が冷めている。 が、話に精彩が出てくるのだ。 不思議な感覚だった。 童話のリライトというと、太宰治の「お伽草子」。 あるいは最近(?)では三浦しおんの「むかしのはなし」。 特に太宰の「カチカチ山」と倉橋版のそれを読み比べてみると、作家の個性が歴然として面白い。
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74冊目『大人のための残酷童話』(倉橋由美子 著、1998年8月、新潮社) 「人魚姫」や「白雪姫」「浦島太郎」「竹取物語」といった有名な童話や昔話を、倉橋由美子流に味付け。 原作本来の毒気やエロティシズムを増幅し、それらを前面に押し出すことでブラックユーモアな世界観を作り出してい...
74冊目『大人のための残酷童話』(倉橋由美子 著、1998年8月、新潮社) 「人魚姫」や「白雪姫」「浦島太郎」「竹取物語」といった有名な童話や昔話を、倉橋由美子流に味付け。 原作本来の毒気やエロティシズムを増幅し、それらを前面に押し出すことでブラックユーモアな世界観を作り出している。 全26作品が収録されているが、1作品はだいたい10頁程度。明瞭な物語が大半で、文章も非常に読みやすい。 文庫本でありながらカバー裏まで装丁が凝っており、なかなか洒落ている。 「でも肝腎のところが一寸法師のままですもの」
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
毒が凄い。今のグリム童話や日本昔話も元々の毒がマイルドになっていますが、原作より悪意と婬靡さがありました。 倉橋由美子さんはこうでなくちゃ!みたいなのがあるので楽しく読みました。各話終わりの教訓一文も好き。「愚かな人間が幸福になることはありません」。 原作には日本昔話やグリム童話、アンデルセン童話などの童話も、ギリシャ神話も。 でもこれは童話では無くあれでは…と思ってたら、谷崎潤一郎「春琴抄」やカフカ「変身」、中島敦「名人伝」もありました。この辺りは既読だったのでわかりましたが、森鷗外「父と妹」や今昔物語集まで。幅広いです。 「子供たちが豚殺しを真似した話」、存在を知ってからグリム童話で一番ウッ…となるお話です。どうやってもマイルドにならない。何故グリム童話になっているのか謎です。
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毒気を抜かれたというか、当てられたというか。すごい。 山本文緒さんの短編が近いのかな。同じ毒でもこちらは現代、したがって整合性があるような。 倉橋さんのは昔話からもじったストレートパンチ。つじつまもあったものではないのにいやに現実味をおび、しかもエロチック。 子供のころに知っ...
毒気を抜かれたというか、当てられたというか。すごい。 山本文緒さんの短編が近いのかな。同じ毒でもこちらは現代、したがって整合性があるような。 倉橋さんのは昔話からもじったストレートパンチ。つじつまもあったものではないのにいやに現実味をおび、しかもエロチック。 子供のころに知ったおとぎ話はこんな風にインパクトがあったよな~との思い。 例えば、「養老の滝」(居酒屋さんじゃありませんよ)親孝行の息子が働けど食べさせるのに精一杯で、老親に満足するほど好きなお酒を飲ませくつろがせてあげられない。(なんで貧乏なのに酒のみたいなどほざくのかこの親、とも思うけど)ある日息子は香り高いお酒の湧き水を見つけ、思う存分孝行できましたとさ、孝行息子に神様のご褒美、というのがオリジナル。 ところが倉橋さんは、その後親子共々、その泉でおぼれるように酒に浸り廃人になってしまったのだとか、あげくの果てはうわさを聞いた人々が駆けつけ、争って群がり酔死多々、悪臭を放つ泉になり酷いことになったしまったと終わる。 「教訓 ただ酒は人を堕落させる」と結ぶ。 大人になった私はこのパターン、いろいろ応用きくよと思うのであった。 こんなお話が26編。おもしろうござった。
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