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この人の閾 の商品レビュー

3.6

31件のお客様レビュー

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2016/06/27

「この人の閾」 大学時代、同じ映画サークルに属していた男女が 旧交を温める話 しかしヒューマニズムをめぐる微妙な考え方の齟齬ができてて 少し戸惑ってみたりもするのだった バブルの余韻がぎりぎり残ってた時代の、長閑さが充満した作品 「東京画」 バブル時代の開発ブームで、東京の古い...

「この人の閾」 大学時代、同じ映画サークルに属していた男女が 旧交を温める話 しかしヒューマニズムをめぐる微妙な考え方の齟齬ができてて 少し戸惑ってみたりもするのだった バブルの余韻がぎりぎり残ってた時代の、長閑さが充満した作品 「東京画」 バブル時代の開発ブームで、東京の古い風景が更新されていく 上書きされて消えたデータは 人々の集合無意識に蓄積されているのだ …ホントに? 「夢のあと」 あらゆる事物の消費財化と、ポストモダンの浸食を受けて 社会はぐずぐずになりつつあった 内需拡大を煽るそれら物語が、貿易摩擦解消の必要悪だったとはいえ 未来をみずから食いつぶすよう、人々に促したことも やはり確かなことであろう 収録作品のなかで実はいちばん古い(平成二年)

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2015/02/03

正直あんまりおもしろくなかった。一読してよくわからん。二回読んで、こういうことが言いたいのかな?というのがやっと分かるレベル。文章は読みやすいし雰囲気があるんだけど、書いてあることがとても普通で、見逃しそうになることを書き留めてあるような感じです。言ってることが哲学になりきれず飲...

正直あんまりおもしろくなかった。一読してよくわからん。二回読んで、こういうことが言いたいのかな?というのがやっと分かるレベル。文章は読みやすいし雰囲気があるんだけど、書いてあることがとても普通で、見逃しそうになることを書き留めてあるような感じです。言ってることが哲学になりきれず飲み屋の絡み酒レベルなのも妙にそれっぽいです。で、一生忘れないことはそうそうないけど、この女性との間にはそれなりにあったということが言いたいのかなと思った。 まとめるとそれだけだと思う。 この作者さんの文章は1文が長くてわりとどうでもいいことを描写するのが多くて、なんかあんまり合わない。たぶん自然な空気をつくろうとしてるんだろうけどただただ冗長な文章が続いてるようで、つまらなく感じた。

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2014/08/18

第113回(平成7年度上半期) 芥川賞受賞作「この人の閾 」収録。表題作が取り立ててすばらしい!なんて、これっぽっちも思わなくて、個人的には収録されている中では「東京画」・「夢のあと」の方が記憶に残っているし、『季節の記憶』の方が好きだなあと思った。どれもこれも、しばらくしたら中...

第113回(平成7年度上半期) 芥川賞受賞作「この人の閾 」収録。表題作が取り立ててすばらしい!なんて、これっぽっちも思わなくて、個人的には収録されている中では「東京画」・「夢のあと」の方が記憶に残っているし、『季節の記憶』の方が好きだなあと思った。どれもこれも、しばらくしたら中身忘れちゃいそうだけど、やっぱ、保坂さんの小説は会話がいいよなあ。

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2014/08/12

この人の評論は間違いない、と大学時代の恩師に言われ、何度か読んだが難しすぎて分からなかった。でもかろうじて理解できる部分に、間違ったことは書いてなかったと思う。 この人の閾、新しい小説の一つとして、悪くない読書時間だった。ちょいちょい出てくる考察がいらない、いっそそういうものすら...

この人の評論は間違いない、と大学時代の恩師に言われ、何度か読んだが難しすぎて分からなかった。でもかろうじて理解できる部分に、間違ったことは書いてなかったと思う。 この人の閾、新しい小説の一つとして、悪くない読書時間だった。ちょいちょい出てくる考察がいらない、いっそそういうものすらなくした小説が読みたい、読者に対するヒントなしの。この地に足がついた文章は読んでいて心地よい。 芥川賞の選評見ても、まぁどの芥川賞も大抵そうだけど、賛否両論。技術的な部分やまとまりはともかく、みんなそれぞれ独自の小説観を持っていて、それはプロの作家であるのに、賞レースにおいても一定の評価基準がないのは、芸術であるがゆえ。一つの小説で色んな読み方が、楽しみ方、うまい部分、表現があると思うけど、たぶんいい読み手はそれをなるべく多く汲み取れるし、いい作品はそれが多くて質も高いんだと思う。 シンプルなゆえに味わい深く、そういうことを考えた。

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2014/01/11

1995年上半期芥川賞受賞作。仕事先の小田原でぽっかりと空いてしまった3~4時間を、大学の同級生真紀さんと、ちょっとビールを飲んだり、庭の草むしりをしながら語りあう―プロットを語ればこんなものだ。そこにはおよそ事件も、物語的な展開も何もない。語り手の「ぼく」は37歳、真紀さんは3...

1995年上半期芥川賞受賞作。仕事先の小田原でぽっかりと空いてしまった3~4時間を、大学の同級生真紀さんと、ちょっとビールを飲んだり、庭の草むしりをしながら語りあう―プロットを語ればこんなものだ。そこにはおよそ事件も、物語的な展開も何もない。語り手の「ぼく」は37歳、真紀さんは38歳なのだが、学生時代くらいまでは「現在」だけが凄まじいスピードで過ぎて行くが、ここにある時間は過去を持つ重層的なそれであり、流れもゆるやかだ。また、「動かされない駒」でありたいと願う「ぼく」には、すでに諦念のようなものさえ漂う。

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2013/10/17

保坂和志って、基本的に全然意味が分かんないw。でも、不思議とほんのり、針の穴を通すような、ものすごく微妙な感情が伝わってくる。こういうかたちでしか伝えられないエッセンス何だと思う。「この人の閾」が一番好きだな。

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2012/11/07

日常茶飯な会話や光景なのであろうが、 鋭い観察眼と感性を持った保坂さんが、 あろうことかそれを言葉、文章で表現する能力をも、 持ちあわせていらっしゃった奇跡に感謝。 エラそうでゴメンナサイ。 「この人の閾」1995 年 第 113 回 芥川賞受賞作品。

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2012/11/03

第113回芥川賞を受賞した表題作を含めた4話からなる短編集。どれも繊細かつ緻密な描写による文章が淡々と丹念に積み重ねられていているのですが、そこに描かれているのは何気ない日常の風景であって、ドラマ性は皆無でただただ過ぎ去った時間をいかに受け止めていくかといった視点のもとで綴られた...

第113回芥川賞を受賞した表題作を含めた4話からなる短編集。どれも繊細かつ緻密な描写による文章が淡々と丹念に積み重ねられていているのですが、そこに描かれているのは何気ない日常の風景であって、ドラマ性は皆無でただただ過ぎ去った時間をいかに受け止めていくかといった視点のもとで綴られた文章は、まるでエリック・サティのピアノ作品を可視化したようなきわめてアンビエントで既視感を伴ったモノといった印象を強く受けます。 そもそも普通の生活を送っていれば、日常でさほどドラマティックなことが起きるでもなく、ひたすら時間の海に溺れて生きているようなものなのですが、それを客観視した上で言語化すれば、きっとこの短編集のような話はそれこそ無数に生み出せるでしょう。そんな平凡な日常をあえて文章化するということは、すなわち時の流れによって変化していくモノ - 人であったり、街並みであったり、風景であったり - をそのまま受容することであり、変わっていく様子をありのままに認識するということなのでしょう。 関係性すら排除したような作風なので、読みづらい=感情移入できないという面は否定しませんが、たまにはこういった鏡面的な内省を含んだ文章というものを欲するときがあるのです。 秋の夜長に最適な一冊ですね。

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2012/10/23

ストーリーを要約してしまうと、 おそらく原稿用紙一枚ですら書ききるのも難しいだろう。 それくらい淡々と、そこはかとなく、流れる会話と時間。 それが長いと飽きてしまう。 一気に読むのではなく、ちょこちょこ読めば良かった。 ええ、最後の方は飛ばし読みでした。 そんな私の感想。 知...

ストーリーを要約してしまうと、 おそらく原稿用紙一枚ですら書ききるのも難しいだろう。 それくらい淡々と、そこはかとなく、流れる会話と時間。 それが長いと飽きてしまう。 一気に読むのではなく、ちょこちょこ読めば良かった。 ええ、最後の方は飛ばし読みでした。 そんな私の感想。 知識を持っていても使わない。 沈黙は金。 そういう人に惹かれる。 でも、なんか、淋しい。

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2012/08/02

先日、若いガールフレンドの1人に「なんにもしてない人になりたいんですよね〜。やっぱり、ダメなのかな〜」と言われて、「そうだよな〜」と思うとともに、この短編集を思い出して、約10年ぶりに読んだのだが、やはり面白かった。彼女の言う「なんにもしてない人」とは、「社会的な立場を持たない、...

先日、若いガールフレンドの1人に「なんにもしてない人になりたいんですよね〜。やっぱり、ダメなのかな〜」と言われて、「そうだよな〜」と思うとともに、この短編集を思い出して、約10年ぶりに読んだのだが、やはり面白かった。彼女の言う「なんにもしてない人」とは、「社会的な立場を持たない、乃至はそれにアイデンティティを置かない人」「自分への興味が薄く、才能や知識を仕事に結びつける気がまるでない人」「非社会的時間、引き伸された時間、緩慢な時間に身を置いている人」といったぐらいの意味だろうが、本書に登場しているのはそういう人たちだ。著者の保坂和志には、『プレーンソング』『季節の記憶』『カンバセイション・ピース』などの優れた長編があるのだけれど、それらを気に入るかどうかは、本書を面白いと思うかどうかで、たぶんわかる。本書には、著者の小説に対する態度やエッセンスが、モチーフと言ってもいいぐらいに随分とはっきりと表われていることが、再読してみてわかった。はっきりと表われ過ぎていることが著者には不本意だろうが、それが、大成する作家の初期の短編集の醍醐味でもある。福田和也が「ずるい」と言った大貫妙子による解説文も、当を得ている。

Posted byブクログ