辺境・近境 の商品レビュー
村上春樹さんのエッセイは、以前別の本を手に取り、あまりにつまらなくて(失礼)挫折した経験がある。 「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」は大変に面白くて、のめり込むように読んだけれど、ブーム?になった「ノルウェイの森」はいたって退屈で、この物語の良さが全然分からなかった。...
村上春樹さんのエッセイは、以前別の本を手に取り、あまりにつまらなくて(失礼)挫折した経験がある。 「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」は大変に面白くて、のめり込むように読んだけれど、ブーム?になった「ノルウェイの森」はいたって退屈で、この物語の良さが全然分からなかった。たぶんわたしが若過ぎたんだ思う。 そんな苦手意識のある著者のこの本を手にしたのは、題名とカバー写真に気を惹かれたから。パラパラっと軽く文字を追うと、わたしにも面白い。 発行が1998年だから、村上さんのかなり昔の作品ということになる。 が、読みやすくてとても面白かった。 読みやすいのに驚いた。笑 印象に残ったのは、メキシコ大旅行と、カバー写真にもなった、ノモンハン鉄の墓場。 特にノモンハンは、著者がずっと熱い興味を持っていた土地で、その歴史など分かりやすく解説もしてくれている。 中国で日本が戦争を行なったこと、満州国という国を半ば無理やり作ったこと、中国の人々を兵隊・民間人区別なく虐殺していること、戦争に負けてソビエト軍に辛酸を舐めさせられたこと、くらいはなんとなく知っている。 著者の考察も鋭いし、分かりやすい。 日本独特の戦争観=世界観がノモンハンの4ヶ月弱の局地戦でソビエト軍に完膚なきまでに撃破され蹂躙されたにも関わらず、軍指導者はそこからほとんど何一つとして教訓を学びとらなかったこと。結果として太平洋戦争では二百万人を越す兵士が戦死した。 消耗品として極めて効率悪く殺されていった、という表現が、ちょっと歴史をかじったわたしには深く突き刺さる。 日本軍はノモンハンの要塞を作るために強制的に地元の人を働かせ、口封じにその後殺した。その人数ははっきりとしないが、一万人であっても二千人であるにしろ、その数字の変化によって今ここにある自体の本質が大きく変わる物ではない、との言及にも唸った。 うっすら感じていたこと、言語化できていなかったことが、はっきり言葉になった。 評価の高い作家さんって、こういう側面も持つんだ。 面白かったのは、モンゴルの解放軍の招待所のトイレが悲惨な状態になっていたところ。インド旅行でのトイレ状況を思い出した。 アメリカ大陸を車で横断した話しは、片岡義雄さんの世界を彷彿とさせた。 香川で讃岐うどんを食べまくった話には笑った。 デープなうどん屋さん、今もあるのかな。
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とても端正な文章で 色んな土地の紀行文 考えさせられたり ほっこりしたり 思考の断片のようなものが さらりと書かれていたりして 興味深い 単行本で読めて良かった まなみ古書店にて購入
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村上春樹に苦手意識があったけどこのエッセイは普通に読んでて笑い声が漏れるやつ。 春樹さんの中では一番好きだなあ。
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1998年5月15日 第二刷 再読はしないかな この頃の村上春樹氏の所蔵本に第二刷が多いのは、地方に住んでいてネットもまだ無くどーしても第一刷が手に入らなかったのねえ。懐かしい思い出。
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若い頃、村上春樹の著作といえば、小説しか読まなかった。その時の勝手な作者像(やたらに性的なメタファーを散りばめたり、やたらにビールやクラシック音楽の描写が多かったりするところから勝手に作った作者像)と、旅行記に出てくる村上春樹は、だいぶ違う。 旅をする村上春樹は、なんというか、...
若い頃、村上春樹の著作といえば、小説しか読まなかった。その時の勝手な作者像(やたらに性的なメタファーを散りばめたり、やたらにビールやクラシック音楽の描写が多かったりするところから勝手に作った作者像)と、旅行記に出てくる村上春樹は、だいぶ違う。 旅をする村上春樹は、なんというか、チャーミングだ。虫だらけの無人島に辟易したり、メキシコちゃんちゃか歌謡曲に辟易したり、アメリカの温水プール付きのモーテルに辟易したり。そう、この人の旅は、失敗や後悔ばかりなんじゃあないだろうか?とひたすら笑える旅行記なのだ。 旅は非日常の営みである。そしてこの「旅における笑い」こそが、村上春樹が旅行記を書く理由なのではないか?ハレとしての旅行記は「笑い」をもたらし、村上春樹のシリアスな自己探求の小説と対置される。そこに一種の小説家•村上春樹の均衡を見いだす。 キャンプ中にコットで寝そべりながら村上春樹の旅行記を読む。そして、次の旅はどこへ行こうかしらん?と思いを馳せる。旅行記は旅行中にこそ読むべきもの、そんな間違った考えを思いつくともなく思った。
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まずはやはり「讃岐・超ディープうどん紀行」でしょう。結局香川まで行ったんだから。あとのものに関しては、これまでの作者の旅行ものとははっきり違った視点が感じられた。一言でいえばパッセンジャーとしての視点である。 「遠い太鼓」は旅行記というよりも滞在記であり、物事を見つめる視点にも...
まずはやはり「讃岐・超ディープうどん紀行」でしょう。結局香川まで行ったんだから。あとのものに関しては、これまでの作者の旅行ものとははっきり違った視点が感じられた。一言でいえばパッセンジャーとしての視点である。 「遠い太鼓」は旅行記というよりも滞在記であり、物事を見つめる視点にも生活感があった。でもこの作品に収められている紀行はどちらかというと「雨天・炎天」のトルコ篇に近い印象を受けた。あくまでも通りすがりのものとしての視点を感じる。それがよいといえばよいが、物足りないといえばそういえなくもない。特に「遠い太鼓」を面白く読んだものにとっては一寸食い足りないかな、という気がする。 「ダンス・ダンス・ダンス」に出てきたユキの父親の牧村という小説家の名前が村上のアナグラムになっているというのがずっと頭から離れなかった。多分村上は自分のこうしたところをもとに牧村という人物を描いたのではないだろうか?(でも書かれた年があわないか)
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村上春樹のエッセイものは、村上朝日堂が初めてでした。 やはり、この人の感覚は素晴らしい。物事をうまく文学的に捉えられるのだなぁと感心してしまう。 印象深いのは香川のうどん屋の話。 ちょうど、先日高松に行った時に、この本で紹介されたうどん屋に行った。というか、この本で紹介されて大...
村上春樹のエッセイものは、村上朝日堂が初めてでした。 やはり、この人の感覚は素晴らしい。物事をうまく文学的に捉えられるのだなぁと感心してしまう。 印象深いのは香川のうどん屋の話。 ちょうど、先日高松に行った時に、この本で紹介されたうどん屋に行った。というか、この本で紹介されて大人気になった店に行ったのである。 中村うどん、今は当時ほど尖ってなかったです。 小縣屋は多分当時と変わってないです。 あと、ノモンハン。行ったら後悔すると思うけど、気になりますね。 旅に出たくなる、そんな本でした。
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村上春樹は小説よりもエッセイが好き、っていう人が多い。僕はやっぱり小説の方が好きだってのを再確認した一冊。確かに目の付け所は独特だし、本当に退屈なアメリカ横断をした時の観察は「ふんふん」って思えるものがある。でも、読み終わったら忘れちゃうんですよね。 「ねじまき鳥」や「羊男」、「...
村上春樹は小説よりもエッセイが好き、っていう人が多い。僕はやっぱり小説の方が好きだってのを再確認した一冊。確かに目の付け所は独特だし、本当に退屈なアメリカ横断をした時の観察は「ふんふん」って思えるものがある。でも、読み終わったら忘れちゃうんですよね。 「ねじまき鳥」や「羊男」、「世界の終わり」とか、何年も前に読んだのにまざまざと筋書きやイメージが湧いてくるのとはあまりにも対照的。それほどインパクトが強くなかった「カフカ」や「1Q84」でも断片的なイメージや、読んだときに感じたざらっとした気味の悪さははっきり思い出せるのに。 つまり、「村上春樹」じゃなくても読めるんですよね、エッセイだったら。 「村上春樹エッセイ」のファンの方、ごめんなさい。
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辺境というには緩い旅ながら苛酷な旅日記でした。私には村上節が難しすぎて分からないのが正直なところですが、アメリカ大陸横断、モンゴル ノモンハン大地、雄大な光景と退屈だったこと、香川のうどんが美味しかったことはわかりました。そして辺境でも簡単にどこでもいける世の中になった、でも、一...
辺境というには緩い旅ながら苛酷な旅日記でした。私には村上節が難しすぎて分からないのが正直なところですが、アメリカ大陸横断、モンゴル ノモンハン大地、雄大な光景と退屈だったこと、香川のうどんが美味しかったことはわかりました。そして辺境でも簡単にどこでもいける世の中になった、でも、一生に一度いけるかどうかわからない辺境の地に行ってきたんだと確かに感じさせはる文章はさすがであります。
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村上春樹の旅のエッセイ。 メキシコやノモンハン等の辺境への旅の話は、世界の広さと世界における日本の特殊性(安全、平和、経済発展)を感じました。 小説の中では出てこないような表現が見られるのは、エッセイの面白いところだと思います。
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