死の泉 の商品レビュー
ドイツ民族の純血性の確保と人口増加を目的に設立されたSS(ナチス親衛隊)の機関<レーべンスボルン(生命の泉協会)>。その施設に身をおく母親と子どもたちが、喧騒と狂気の世界に翻弄されていく〝この世の地獄〟が描かれた重厚、絢爛たる物語。アウシュビッツのメンゲレ医師(死の選別人)をライ...
ドイツ民族の純血性の確保と人口増加を目的に設立されたSS(ナチス親衛隊)の機関<レーべンスボルン(生命の泉協会)>。その施設に身をおく母親と子どもたちが、喧騒と狂気の世界に翻弄されていく〝この世の地獄〟が描かれた重厚、絢爛たる物語。アウシュビッツのメンゲレ医師(死の選別人)をライバルと誇示するバイエルン州・レ-ベンスボルンの所長(クラウス)の生体実験、ヒトラ-別荘地のベルヒテスガーデンと地下岩塩坑道、古城に眠る略奪名画、ナチスの狂気が子供たちにもたらした不条理・・・深い疵の毒に浸されたような読後感。
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読後放心状態からなかなか立ち直れない。衝撃的な展開で後半読みながら息ができなかったし、後書きでさらに鳥肌が止まらなかった。フランツがやるせなさすぎる、、救いがなさすぎて、、、 あの悪夢のような世界観から抜け出したいのに抜け出せなくて他の本がまだ読めない。やはり皆川博子は天才。
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レーベンスボルンで、カストラートで、マッドサイエンティストなお話。 また、知らない世界を知っちゃたなという感じ。 最後の最後になるまで全く違和感なかったのに、ラストに明かされた真実には驚きました。 全てがクラウス一人に関わったせいで起きてるのが逆にすごい。マッドサイエンティスト怖...
レーベンスボルンで、カストラートで、マッドサイエンティストなお話。 また、知らない世界を知っちゃたなという感じ。 最後の最後になるまで全く違和感なかったのに、ラストに明かされた真実には驚きました。 全てがクラウス一人に関わったせいで起きてるのが逆にすごい。マッドサイエンティスト怖い…
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久々に再読しましたが、今回もこの世界に絡め取られました。面白かったです。 ギュンター・フォン・フュルステンベルク著、野上晶訳の「死の泉」なのですが、あとがきまで作り込んであって最後まで翻弄されます。 第二次大戦中のドイツ、ナチズムと選民思想の酷さと、クラウスをはじめとする研究者た...
久々に再読しましたが、今回もこの世界に絡め取られました。面白かったです。 ギュンター・フォン・フュルステンベルク著、野上晶訳の「死の泉」なのですが、あとがきまで作り込んであって最後まで翻弄されます。 第二次大戦中のドイツ、ナチズムと選民思想の酷さと、クラウスをはじめとする研究者たちの狂った人体実験…人体を結合する事で生き永らえるなんて。「我が血は、汝が血。汝が血は、我が血。我が肉は、汝が肉。汝が肉は、我が肉。」… カストラートは歌声を聴いたことが無いので気になります。 真実にも驚かされました。フランツ、エーリヒ、ミヒャエル…どこまでも翻弄された生でした。彼らのその後が幸せなものでありますようにと思いますが、ひとりはきっと…そして、あとがきでまた心配になりました。 崩壊が美しいラストシーンです。 皆川作品は昏く重厚な世界観に圧倒されます。わたしの言葉では全く足りません。。
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初皆川博子氏。第2次大戦時、 戦後のドイツを舞台とした耽美で幻想的でもあり、 人間の業・哀しみ慈しみを描いた壮大な物語。 本当にドイツ作家の翻訳本のようで騙される。 久々に、全てが美しいと感じながら読み終えた。 畸形も人々の醜い本質も汚物のような出来事も。 皆川博子氏の他の作品も...
初皆川博子氏。第2次大戦時、 戦後のドイツを舞台とした耽美で幻想的でもあり、 人間の業・哀しみ慈しみを描いた壮大な物語。 本当にドイツ作家の翻訳本のようで騙される。 久々に、全てが美しいと感じながら読み終えた。 畸形も人々の醜い本質も汚物のような出来事も。 皆川博子氏の他の作品も早く読みたい、酔いしれたい。 魅惑溢れる世界観に囚われてみたい。
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二つの扉とあとがきとは一体何案ですかを思いつづ読んだら… 皆川先生の物語の構成力に私の最大限の敬意を!
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素晴らしすぎます。なんという狂気、偏愛…。途中で疑問だった文章も、最後に全て納得できました。ああ、フランツが何故あそこまで、クラウスに憎悪を募らせたのかも…。それにしても、マルガレ―テは、本当に魅力的な女性だったのでしょう。ラストは…悲しいですが、一緒に逝けて二人は幸せだったので...
素晴らしすぎます。なんという狂気、偏愛…。途中で疑問だった文章も、最後に全て納得できました。ああ、フランツが何故あそこまで、クラウスに憎悪を募らせたのかも…。それにしても、マルガレ―テは、本当に魅力的な女性だったのでしょう。ラストは…悲しいですが、一緒に逝けて二人は幸せだったのでしょうか。
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皆川さんの魔術的ともいえるような筆致に感服。唯美そして退廃、歴史に芸術。幻想。重厚なストーリー。私の好きな要素がすべて詰まっている!
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金髪碧眼のアーリア人種に対するナチスのこだわりの権化のような保育施設「レーベンスボルン」。 優れた民族の血の確保を目的にかき集められた私生児、孤児、誘拐児たちの坩堝は、その裏で行われる非人道的な実験と相俟って、生命の泉というよりもまさに死の泉という名が相応しい。 ”永遠の少...
金髪碧眼のアーリア人種に対するナチスのこだわりの権化のような保育施設「レーベンスボルン」。 優れた民族の血の確保を目的にかき集められた私生児、孤児、誘拐児たちの坩堝は、その裏で行われる非人道的な実験と相俟って、生命の泉というよりもまさに死の泉という名が相応しい。 ”永遠の少年”カストラートの超越的な歌声に向けられる芸術信奉者の歪んだ愛情、それでも寄り添い合うように生まれた家族の中に決定的に刻み込まれる悲愴な愛憎が、物語をねっとりと染め上げていた。 冷酷な人間のほんの気まぐれな優しさを、大切な記憶として心に刻みつけてしまう子どもの純真さが、ひたすらに切ない。 語り手の構造上、真実は曖昧なまま終わるが、いずれにしろ美しくも惨い結末だ。
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赤い革表紙の本に記された記憶は真実なのか。 第二次世界大戦中、そして戦後のドイツを舞台に、美しくも狂気的な悲劇。 読み終わった人誰もが、最後に驚きの声を上げるのではないだろうか。結局どういうことなの?とパラパラと数ページ戻って確認してしまう。その驚きと疑問を含む構成全体が面白か...
赤い革表紙の本に記された記憶は真実なのか。 第二次世界大戦中、そして戦後のドイツを舞台に、美しくも狂気的な悲劇。 読み終わった人誰もが、最後に驚きの声を上げるのではないだろうか。結局どういうことなの?とパラパラと数ページ戻って確認してしまう。その驚きと疑問を含む構成全体が面白かった。 実際に作中のクラウスの爆発するような笑い声が耳の奥で響いている気さえしてくる。
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