地獄の奇術師 の商品レビュー
二階堂蘭子シリーズの1作目にしてデビュー作、僕と同い年のミステリ。 序盤から漂う乱歩を想起させる奇怪さは古き良きミステリを思わせ心躍る。蘭子や黎人のキャラクターも良く、ストーリー展開も飽きさせず読みやすい。 謎解き面については、犯人は当たったがトリックは一部判らなかった。しかしそ...
二階堂蘭子シリーズの1作目にしてデビュー作、僕と同い年のミステリ。 序盤から漂う乱歩を想起させる奇怪さは古き良きミステリを思わせ心躍る。蘭子や黎人のキャラクターも良く、ストーリー展開も飽きさせず読みやすい。 謎解き面については、犯人は当たったがトリックは一部判らなかった。しかしそもそもトリック自体はあまり良くできているとは言えない。フーダニットが判るとハウダニットのいくつかは予見できるが、ハウダニットの作りが弱く古典的過ぎてやや拍子抜けする。但しそれがある意味本格の気風を表現していて物語としては面白い。 犯人の動機については大好きだった。謎解きとしてのホワイダニットではなく、物語としてのホワイダニットが秀逸。終盤で評価が一気に上がった。最終章の伏線回収には舌を巻く。 蘭子の探偵としての資質は正直未熟だと思ってしまったが、ここから始まる蘭子の名探偵としての事件の最初の1ページとして読むと話は別。蘭子の成長を見たいと強く思わせる1作目だった
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『お前の力なぞ、悪魔の力の前にはまったく無力なのだ。お前は今、こうして悪魔と戦って死ぬのだをお前の体を突き抜けたこの燭台の形を見てみろ。ちょうど十字架のようではないか。お前はここで、愛する神と共に地上より滅びるのだ?』 こういうセリフがなぜか懐かしく感じる。もう25年以上前の作...
『お前の力なぞ、悪魔の力の前にはまったく無力なのだ。お前は今、こうして悪魔と戦って死ぬのだをお前の体を突き抜けたこの燭台の形を見てみろ。ちょうど十字架のようではないか。お前はここで、愛する神と共に地上より滅びるのだ?』 こういうセリフがなぜか懐かしく感じる。もう25年以上前の作品なんだな。二階堂黎人は『聖アウスラ修道院の惨劇』しか読んでないから、他も読みたくなった。 やっぱ、名探偵、不可能犯罪、無駄な猟奇性は外せない構成要素だな。
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本格ミステリーに対する気負いが著者にあったのかもしれない。 20年以上も前の物語でもあるし、多少の古さは仕方のない面もある。 それにしても、このうんざりとするほどの注釈の多さは何だろう。 読んでいて気になってしかたがなかった。 トリックはミステリー慣れしている人にとっては驚くほど...
本格ミステリーに対する気負いが著者にあったのかもしれない。 20年以上も前の物語でもあるし、多少の古さは仕方のない面もある。 それにしても、このうんざりとするほどの注釈の多さは何だろう。 読んでいて気になってしかたがなかった。 トリックはミステリー慣れしている人にとっては驚くほどのものではない。 何よりも伏線の張り方がわかりやすすぎて、真犯人が容易にわかってしまう。 ミイラ男の登場だけでも「えっ?」と思っていたのに、限られた登場人物の中に犯人がいると考えればおのずと真犯人の姿が浮かんできてしまう。 妙に浮いてみえた惨殺方法も、横溝的な雰囲気を出したかったのだろうか。 犯行の動機やアリバイなどに大きく関わるものではなかっただけに、何故殺害方法をあれほどまでに残虐にしたのかよくわからなかった。
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蘭子さんデビュー作、良くも悪くも懐かしいというか…。いろいろぶっこまれまくりです。青春ミステリとも言えそうだし、乱歩のような怪奇的要素。うん、いろいろ乱歩だ(笑)作中では古今東西の名作に触れられ、二階堂氏のミステリ愛のようなものを感じます。おかげで読んだことない物の、ネタバレを食...
蘭子さんデビュー作、良くも悪くも懐かしいというか…。いろいろぶっこまれまくりです。青春ミステリとも言えそうだし、乱歩のような怪奇的要素。うん、いろいろ乱歩だ(笑)作中では古今東西の名作に触れられ、二階堂氏のミステリ愛のようなものを感じます。おかげで読んだことない物の、ネタバレを食らった気も。先ほども言ったとおり、ミステリ愛が強すぎて乱歩を筆頭に作品の背後に先達の方々が見え隠れしているように感じました。とはいえ、この古めかしい雰囲気も結構好き、蘭子のムカッとこさせる言動もかわいいし、もう少し追跡です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
犯人に意外性は感じず、想定していた人物でした。余韻がある終わり方が個人的には気に入りました。蘭子と黎人にとって事件で失った人物がどういった存在であったのだろうかと考え、少し切ない気持ちになりました。
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黎明期の二階堂蘭子。 その友人、黎人が書き手となり、連続殺人事件の謎を解き明かす。 描写にぞっとするところもありなかなか読み進められず日数がかかってしまったけれど。
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本格推理らしい作品。時代背景が現代ではないものの読みやすい。笠井潔のカケルシリーズが好きなので、こういうのも好きなんだなあ。
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二階堂黎人のデビュー作『地獄の奇術師』を読了。 正直、微妙だった。プロットは如何にも本格ミステリで、それはオレの好みでもあるからいいのだが、問題点が多少見受けられた。 まず、トリックがあまりにも分かり易い。かなり序盤に「あの手しかないだろう」と言わざるを得ないことをやってしま...
二階堂黎人のデビュー作『地獄の奇術師』を読了。 正直、微妙だった。プロットは如何にも本格ミステリで、それはオレの好みでもあるからいいのだが、問題点が多少見受けられた。 まず、トリックがあまりにも分かり易い。かなり序盤に「あの手しかないだろう」と言わざるを得ないことをやってしまっている。さらに最近のミステリではあまり見かけない稚拙なミスも、一回ならまだしも犯人は二回してしまう。 それとちょくちょく出てくる注釈。いや、注釈自体はいいのだが、それが全て最後の解説の前にまとめられている。少量の注釈ならそれでも構わないのだが、本作のようにかなり大量にある場合、それぞれの注釈が出てきたページの最後にまとめていた方が読者も読み易い。 リアリティも無い。フィクションにリアリティを求めること自体愚かしいことだと解ってはいるが、あまりにもリアリティが無さすぎるのだ。 例えば、探偵役は警視庁警視正の義娘で女子高生の二階堂蘭子だが、捜査に参加したり警察から普通に情報を得ることが出来るのはいくらなんでも情報の取り扱いが軽すぎる。 さらに何らかのトリックが出てくる度に、他作品のタイトルとそれで使われたトリックを説明し、それを警察が納得するところは不自然だとしか思えなかった。 そしてエピローグ。人によるかもしれないが、オレには完全に蛇足としか思えなかった。 ただ、作品全体に漂う雰囲気とどんでん返しは楽しめた。乱歩やカーの影響が大きいに違いない。ストーリーもなかなか面白かった思う。 ここまで批評してしまったのは初めてかもしれないが、デビュー作としてはまあまあかもしれない。 二階堂作品には『人狼城の恐怖』などもあるし、いつか読んではみたいと思う。
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【背表紙】 十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか。女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡...
【背表紙】 十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか。女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡る、本格探偵小説。 度重なる不可能犯罪。 複雑な人間関係。 読み応え十分の作品。 このシリーズも集めよう。
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序章からして面白いです。ワクワクするような始まり方。 二階堂作品って予想がつかなくて好きです。 もしかしてこうかな?と思っていると、トンでもない方向に向かったり。 そういう意味では読者を裏切らない作家さんです。 二階堂蘭子シリーズも正統的な本格ミステリの道を進み、そこを二階堂兄妹...
序章からして面白いです。ワクワクするような始まり方。 二階堂作品って予想がつかなくて好きです。 もしかしてこうかな?と思っていると、トンでもない方向に向かったり。 そういう意味では読者を裏切らない作家さんです。 二階堂蘭子シリーズも正統的な本格ミステリの道を進み、そこを二階堂兄妹がいい味を出しながら事件を解決へと結びつけます。 本書でも私の好きなディティールがいっぱい! 館、一癖も二癖もある実業家の一族、謎の怪しい男。 やはり基本的にはこういう正統派の本格を読むのが私はやっぱり好きなんだなぁ~と再確認しました。 舞台が昭和40年初頭というのも楽しめた要因かもしれません。 蘭子さんシリーズは大作が多くて、本当に読み応えのあるシリーズです。
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