ヘミングウェイ全短編(1) の商品レビュー
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★★★2017年5月のレビュー★★★ パリ時代のヘミングウェーの短編集。 なんといっても面白いのは「殺し屋」。 荒木飛呂彦はこの短編からストーリーの作り方を学んだという。確かに、その場の空気が伝わってくるようなは迫力がある。荒くれものがカフェに乗り込んでくると、「あ、悪い奴が来た」とピリピリする。怖い感じも伝わる。そこからのカフェの店主と荒くれもののやりとりは最早芸術の域に達している。たまたま居合わせたニック・アダムス(ヘミングウェーの化身)の巻き込まれよう、まるで自分がニック・アダムスになったかのよう。 殺される(予定)の、オーリ・アンダースンという男のけだるい感じも良い。夏の夕方の西陽を思い出す。 「ぼくの父」も印象に残った。 騎手をしていたお父さんと、幼い子供の物語。 「でも、ぼくには分からない。この世の中って、せっかく本気で何かをはじめても、結局、何もあとには残らないみたいで。」 果たしてそうだろうか? 新しくスタートを切った「ぼくの父」は何もあとに残さなかっただろうか? 解説を読んで「あ~、そういう事だったのか」と気が付く部分が大いにあった。なので、いつの日か再読した時にはより深い読書ができるはずだ。 ☆☆☆2018年12月再レビュー☆☆☆ 「二つの心臓の川」 戦争で傷心のニックが1人原野でキャンプをして過ごすという物語。戦争から帰ってきた男の孤独を表現している点がポイント。風景の描写が詳細で、朝露に濡れた草原でニックがバッタを大量に捕まえ、川鱒を釣る様子が目に見えるようだ。夜のテントでは缶の食材を空け、コーヒーを沸かす。一つ一つの動作を自分が行っているように感じる。 一度目に読んだ時にはあまり感じることのなかった作品だが、今回読んでみてより作品を身近に感じるようになった。 「敗れざるもの」 ベテラン闘牛士・マヌエルの闘いを描く。何度倒れても立ち上がる男の姿。彼はこの闘牛のあと医務室に運ばれる。そこでの手術の場面で物語は終わるが、マヌエルは死んだのだろうか? 「陳腐なストーリー」で最後に埋葬された闘牛士、マヌエル・ガルシア・マエラは「敗れざるもの」のマヌエル・ガルシアと同一人物だろうか?
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ヘミングウェイ自身の戦争体験からの克服がテーマの「われらの時代」と、青年期の煩悶を扱う「男だけの時代」。 マッチョなイメージがあるヘミングウェイだが、そんな彼も繊細で悩みぬいた青年期があったのだと思うと親近感がわきます。 自分も、後年くらいは彼のようになりたい。読了
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「われらの時代」「男だけの世界」という初期の作品集を掲載。凝縮された言葉で行間を読ませるヘミングウェイの文体が、その効果を十分に発揮します。
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失われた世代の代表作家、ヘミングウェイの短編集。一般的に、ヘミングウェイの作品は長編より短編のほうが高質だと言われるが、読んで納得。こりゃすごいわ、ここまで冷徹に物事を書いているのに差し迫ってくる物語は、並の人には書けない。いい作品はたくさんあったけど、一番のおすすめは『五万ドル...
失われた世代の代表作家、ヘミングウェイの短編集。一般的に、ヘミングウェイの作品は長編より短編のほうが高質だと言われるが、読んで納得。こりゃすごいわ、ここまで冷徹に物事を書いているのに差し迫ってくる物語は、並の人には書けない。いい作品はたくさんあったけど、一番のおすすめは『五万ドル』。
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時代背景を考えるとこういう書き方は斬新かつ、ある意味乱暴?かなり勇気の必要な独特な書き方。 散文的で、単調なリズムなので、さっと読むだけではよくわからないのではないだろうか。辛抱強く読んで、何度も読みこめば、そういうことなのか。と腑に落ちる。味わいとはこんな感じなのかな。。。
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ヘミングウェイの短篇集第一弾。気にいったのは、さわやかな読後感のする「三日吹く風」、非日常的な出会いと別れ「ファイター」、解説を読むべし「兵士の故郷」、乾いた手で鱒を触ると粘膜が取れて白い黴が生えて死んでしまうらしい「二つの心臓の大きな川」、テンポの良い「白い象のような山並み」、...
ヘミングウェイの短篇集第一弾。気にいったのは、さわやかな読後感のする「三日吹く風」、非日常的な出会いと別れ「ファイター」、解説を読むべし「兵士の故郷」、乾いた手で鱒を触ると粘膜が取れて白い黴が生えて死んでしまうらしい「二つの心臓の大きな川」、テンポの良い「白い象のような山並み」、これぞヘミングウェイ的「敗れざる者」、こっちもヘミングウェイ的「五万ドル」。ヘミングウェイという作家は「男性的」「マッチョ」という印象だったがむしろ「女性的」「弱さ」を描いた作品が多いと感じた。「弱さ」を知ることで人は強くなるのだろうか…?
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ヘミングウェイの短編集。 闘牛やボクシング、釣りに戦争・・・ヘミングウェイが体験した、あこがれた物事を主題に逞しい短編が語られます。 「インディアンの村」~「三日吹く風」、「二つの心臓の大きな川」、「敗れざる者」が特にお気に入り。
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ヘミングウェイの初期の短編集。「われらの時代」は24歳ごろ、「男だけの世界」は27歳ぐらいの作品である。さまざまな趣向の作品があるが、兵士、ボクサー、闘牛士、殺し屋、罪人など限界に置かれた人々の話が心に残った。
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いわずと知れたパパ。自然、釣り、アウトドアに関する小説はおもしろいなぁ。短編なのでさくさく読めるし、まだ読んだことない人は読むといいよ!
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「おねがいがあるんだけど、聞いてくれる?」 「ああ、どんなことでもするぜ」 「どうかおねがい、おねがい、おねがい、おねがい、おねがい、おねがいだから、黙ってくれない?」 男は何も言わずに駅舎の壁にもたせかけてある鞄を眺めた。そこには、これまで二人が共に夜をすごしてきたすべてのホテ...
「おねがいがあるんだけど、聞いてくれる?」 「ああ、どんなことでもするぜ」 「どうかおねがい、おねがい、おねがい、おねがい、おねがい、おねがいだから、黙ってくれない?」 男は何も言わずに駅舎の壁にもたせかけてある鞄を眺めた。そこには、これまで二人が共に夜をすごしてきたすべてのホテルのラベルが貼ってあった。(「白い象のような山並み」)(p.300)
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