ヘミングウェイ全短編(1) の商品レビュー
ヘミングウェイ若かりし頃の短編集であるが、鱒釣り、闘牛士、ボクシングなどの題材では、その精緻な表現につい引き込まれるし、いくつかの作品でのテンポのよい会話がいかにもその場の雰囲気をよく表現していて、若書きの作品集ではあるが、その才能の一端を窺い知ることができる。
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2019.7.26 図書館 初ヘミングウェイ。 老人と海の人。ノーベル文学賞の人。 がちがちのハードボイルド! 元祖らしい。無駄な状況や心情説明を省いて、最低限の状況と会話で成り立たせている。 読んでいくうちに、なんとなくこういう状況か、ってわかってくる。 ただし、かなり短い短編が多いので、なんとなくわかったところで終わったりする。 なる・・・ほど・・?みたいな読後感が多い。 分かったようでわからないようで、なんとなくわかる。 ハードボイルド大好き。無駄がなくてわかる人にはわかるように完成されている文章。変にきれいにまとめないところもよい。 筒井康隆のショートショートと似た雰囲気を感じた。 けれども、中には長々と状況説明を繰り返している話も数篇あった。 この数篇は他に比べて長い短編で、釣りや闘牛といった一つのコンテンツを細かく説明している。 その情景はリアルで、作者の好きが伝わってくる。 これはこれで高く評価されているのもわかる。が、私にはくどく感じてしまった。 他の短編との緩急も、この短編集の良さなのかもしれない。 有名な老人と海は、私の苦手な方の流れかなあと思うが、一度は読んでみようと思う。 2巻目も楽しみ!
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解説に書かれているような作者の背景的なことの読み取りとか 文章の技法的なことはなるほどと思うけれども 前者は国語のテストだし後者は原語で読まなければ意味がない アメリカ文学史の一資料として以上にどう楽しんだら良いか良くわからず
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文豪が若き修行時代を過ごしたパリでの日々を綴ったエッセー『移動祝祭日』を読んだのが、今年の一月。その時から気になっていたのが、そのパリ時代に書かれた二つの短編集を収めたこの一冊。 荒い展開の中にも繊細さが感じられる、男のための小説がぎっしりつまっている。その中でも、老いた闘牛士を...
文豪が若き修行時代を過ごしたパリでの日々を綴ったエッセー『移動祝祭日』を読んだのが、今年の一月。その時から気になっていたのが、そのパリ時代に書かれた二つの短編集を収めたこの一冊。 荒い展開の中にも繊細さが感じられる、男のための小説がぎっしりつまっている。その中でも、老いた闘牛士を描いた「敗れざる者」がいい。頭では分かっているはずなのにプライドがそれを認めないがために闘いを求める男の姿は、哀愁を感じさせると同時に勇気も与えてくれる。
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ヘミングウェイは長らくご無沙汰でしたが、若き日のパリ時代を回想した『移動祝祭日』が思いのほか面白かったので、再読しました。 1921年、ヘミングウェイは米国からパリに移住します。セーヌ左岸の製材所の上のアパートに住み、近くのカフェに通いテラス席で執筆する日々。そこで書き上げたの...
ヘミングウェイは長らくご無沙汰でしたが、若き日のパリ時代を回想した『移動祝祭日』が思いのほか面白かったので、再読しました。 1921年、ヘミングウェイは米国からパリに移住します。セーヌ左岸の製材所の上のアパートに住み、近くのカフェに通いテラス席で執筆する日々。そこで書き上げたのが本作所収の『二つの心臓の大きな川』や『殺し屋』などの短編です。 テーマは、ボクシングや闘牛などヘミングウェイらしいものあり、幼少期の森での生活や熱中した釣り、インディアンとの交流など開拓時代をほうふつとさせるものありで、アメリカ文学の雰囲気を堪能できました。生活に根差した喜びや哀しみを簡潔な文章で捉える腕前はさすがです。(ノーベル賞受賞者に向かっていうのも何ですが) 例えば、闘牛がテーマの短文。 ▼それが自分のすぐ目前で起きていたら、ビリャルタが雄牛に毒づき、悪態をつくさまが見えただろう。雄牛が突進すると、彼は風に吹かれるオークの木のように、たじろがずに身をひるがえした。両足はぴっちりと揃い、ムレタ(赤い布)が宙を舞い剣がそのカーブの軌跡を追う。それから、彼はまた雄牛をののしり、雄牛に向かってムレタを突きだし、両足をしっかり踏んばって雄牛の突進から身をかわす。ムレタが弧を描き、彼が身をひるがえすたびに、観客がどよめく。 いよいよ仕留める段になっても、やはり勝負は一瞬のうちだった。雄牛は憎悪に燃えて、真っ正面から彼を見据える。彼はムレタの裏から剣を抜きだし、前と変わらぬ動きで狙いを定めて、雄牛に叫ぶ。トーロ!トーロ!雄牛が突進する。ビリャルタが突進する。束の間、両者は一つになる。ビリャルタが雄牛と一体になった瞬間、決着はついていた。ビリャルタはすっくと立ち、雄牛の両肩のあいだには剣が鈍く光って突き刺さっていた。ビリャルタが観客に向かって片手をあげ、雄牛は血を噴きだしながら唸り、ビリャルタをひたと見据えてから、膝を屈した。 一読して、井上靖さんの詩を思い出しました。 『猟銃』や『輸送船』と同じで、難しい言葉は使っていないのに、場面が臨場感をもって伝わってくる。 達意の文章だと思います。
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原書名:The complete short stories of Ernest Hemingway われらの時代◆北ミシガンで◆だけの世界 著者:アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961、アメリカ・シカゴ、作家) 訳者:高見浩(1941-、東京、翻訳家)
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「われらの時代」と「男だけの世界」の二つの短編集を所収. 高校生ぐらいの頃に大久保康夫訳でいくつかのヘミングウェイの短編を読んだことがあるはずだが,全く印象は残っていない. この1995年の新訳は非常によみやすい.前半の「われらの時代」は大部分が,筋も文章も切り詰められていて,そ...
「われらの時代」と「男だけの世界」の二つの短編集を所収. 高校生ぐらいの頃に大久保康夫訳でいくつかのヘミングウェイの短編を読んだことがあるはずだが,全く印象は残っていない. この1995年の新訳は非常によみやすい.前半の「われらの時代」は大部分が,筋も文章も切り詰められていて,その背後を想像しないと,なんのことだかわからない.詩と似ている.それでも私には珍しく退屈せずに,最後まで一気に読んでしまった. しかし,やはり,ストーリーのはっきり見える方が楽しめるわけで,中でも,釣り(「二つの心臓の大きな川」)闘牛(「敗れざるもの」)などは,体と心の声がうまく描写されており秀逸.他にも拳闘やスキーなど,筋肉系のヘミングウェイ好きのテーマがたくさん.
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村上春樹の「女のいない男たち」のまえがきで、ヘミングウェイの「男だけの世界」についてふれられており、その流れで読むことにした。「われらの時代」という短編集も収められていて、順番はそちらが先だ。最初何篇かはニックというアメリカの少年を中心に描かれており、その成長記のようなものなのかと思った。しかし短編と短編の間に1ページも満たないヨーロッパ戦線の描写と思われる文章がはさまれており、ニックの話との関連性がわからなかった。読み進めるうちに短編のほうもニックが出てこなくなり、ヨーロッパを旅する夫婦の話のようなものが何篇かあり、またニックがでてきたりと話の関連性は全くつかめなかった。「男だけの世界」のほうも小説らしい起承転結を持った作品もいくつかあるが、題名に背いて女性が主な登場人物であったりする作品もあり、作者が何を描きたいのかわからなかった。まぁこれが純文学というもので、ちゃんと文学を勉強しないとわからない鑑賞方法があるのだろうと思った。いろいろ?が頭に残ったが、少し興味も出てきたので他の作品も読んでみようと思った。
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タイトルから分かる通り,短編集で,ちびちび読むのに最適.扱っている題材は闘牛や釣り,野宿など,一見ゴツゴツしているようで,でも,心の動きが繊細で,どのお話しも短編映画のような味わいがある.書きたいことを直接書いてない,とでも言おうか,精密な影絵によって却って本当の形が浮かび上がっ...
タイトルから分かる通り,短編集で,ちびちび読むのに最適.扱っている題材は闘牛や釣り,野宿など,一見ゴツゴツしているようで,でも,心の動きが繊細で,どのお話しも短編映画のような味わいがある.書きたいことを直接書いてない,とでも言おうか,精密な影絵によって却って本当の形が浮かび上がってくるとでも言おうか,
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再読。 釣り、闘牛士、戦争、スキー、夫婦、親子、アメリカ、ヨーロッパ、若さ、結婚、ボクシング、などなど。いろいろな闘いがある。そして勝ち負けがある。いろいろな勝ち方、負け方がある。
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