第三の嘘 の商品レビュー
『ふたりの証拠』よりも、これはいつの誰?という戸惑いが長かった。 本作が種明かしになるどころか、真実と嘘がより一層混じり合ってしまった。 アゴタ・クリストフの自伝的要素が入っているがゆえに、嘘は真実であり、真実は虚構。 とても完結篇にふさわしい内容だったとは思えないが、読後...
『ふたりの証拠』よりも、これはいつの誰?という戸惑いが長かった。 本作が種明かしになるどころか、真実と嘘がより一層混じり合ってしまった。 アゴタ・クリストフの自伝的要素が入っているがゆえに、嘘は真実であり、真実は虚構。 とても完結篇にふさわしい内容だったとは思えないが、読後はこの物語から抜け出すのにふさわしい虚脱感があった。
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これまでの2作は何だったの……? 離れ離れになった方も孤独だったけど、残った方も同じように孤独だったんだ。 憎むべき相手が分かっているだけ、いない方と比べられてけなされるだけ、残った方が辛いのかな。 とにかくすごい物語だった。夢中で読んだ。
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うーん、結局訳がわからかった。 「悪童日記」も「ふたりの証拠」も作品だったということなのか? クラウスを名乗っていたリュカ、 母の撃った弾丸でケガをし、病院への爆撃を逃れ、 農婦に預けられ、国境を越えて国外で生活していたリュカの作品なのか? どこまでが事実か、どこまでが創作なのか、 なにが真実なのか、なにが嘘なのか。 それとも、すべてが創作ですべてが嘘なのか。 いずれにしても、大変面白い作品だった。
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(1999.10.18読了)(1999.10.10購入) (「BOOK」データベースより)amazon ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結...
(1999.10.18読了)(1999.10.10購入) (「BOOK」データベースより)amazon ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。 ☆関連図書(既読) 「悪童日記」アゴタ・クリストフ著・堀茂樹訳、早川書房、1991.01.15 「ふたりの証拠」アゴタ・クリストフ著・堀茂樹訳、早川書房、1991.11.15
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2013.5.25読了。 凄まじいエンディング、ゾッとして、ホッとして、彼ら双子と共に終焉を迎える。
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読み終えた後に、空しさと悲しさを感じる一冊でした。 前作の2つがかなり衝撃的な内容とラストだったということもあり、今作は静かだけど主人公の双子それぞれに人間味が加味され全く違った印象の内容でした。 四歳の時の事故や戦争が原因で、リュカは想像の中で双子のクラウスと生活し、クラウス...
読み終えた後に、空しさと悲しさを感じる一冊でした。 前作の2つがかなり衝撃的な内容とラストだったということもあり、今作は静かだけど主人公の双子それぞれに人間味が加味され全く違った印象の内容でした。 四歳の時の事故や戦争が原因で、リュカは想像の中で双子のクラウスと生活し、クラウスはリュカはもう死んだものだと思いながら生きていた——しかし、一時期本当に同じ街に住んでいた...という読者だけが知り得る悲しい現実。 戦争を知らない世代なので、どう頑張ってもその辛さを完全に理解することは不可能だと感じていますが、それでもこの本を通して、戦争によって人々が精神的にも肉体的にも蝕まれ、ある人は現実と想像を混同して言わば自己防衛のようなことをしたり、完全に精神を病んでしまったりといった辛い実態に触れることが出来た気がします... ずっとクラウスに会うことを望んでいたリュカのとった最後の行動と、その後のクラウスの「列車。良い考えだな。」というたった一文に悲しさのみならず背筋がゾッとしました。 戦争を経験していないからこそ、この本は読むべきものなのではないかと個人的に思いました。
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なんてことだ、どうして第3作目のこれはハードカバーの絵がないんだ!衝撃の結末。悪童日記もふたりの証拠も創作だったというていになってる。まぁ悪童日記はそうだけど、ふたりの証拠もそういう風に持ってくるとは。双子が登場するけど、最後は切ない。不幸な現実を乗り切るために楽しい嘘をつづっていたとは。そしてその嘘も決して楽しいものではない。ほんと、解説にも書かれてるけど、続編とはいえ全然テイストが違う。2作目で変わり、3作目でも変わり。でも一文は短く、淡々と進むところは変わらない。やっぱ悪童日記が一番さっぱりしているというか明るい感じがする。2作目、3作目も面白かったけど、非常に暗い。
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「ところが、ピューマは私を追い越し、そのまま悠然と歩いていくと、その前方、通りの端にいる一人の子供の足元に寝そべる。子供は、さきほどまでそんな所にいなかったのに、今は、足元に寝そべったピューマを撫でている。子供が言う。『おとなしいよ。ぼくのなんだ。怖がることないよ。人を食べたりし...
「ところが、ピューマは私を追い越し、そのまま悠然と歩いていくと、その前方、通りの端にいる一人の子供の足元に寝そべる。子供は、さきほどまでそんな所にいなかったのに、今は、足元に寝そべったピューマを撫でている。子供が言う。『おとなしいよ。ぼくのなんだ。怖がることないよ。人を食べたりしないから。肉は食べない。食べるのは魂だけ』」 第一の嘘は、双子が書いたという日記がLucas一人によって書かれたものだということ。 第二の嘘は、Lucasが書いたという小さな町の物語の中で、国境を越えたはずのC(K)lausが実際には国内に残り、国内のこととして書かれた物語は隣の国でLucasに起こったことだったといこと。 そして、第三の嘘は、戻ってきたLucas(Claus)に対してKlausが語る話。 もしも第三の書のLucasとKlausの話を根拠として整理すれば、すべての辻褄が一応合わされ、双子の謎は明かされる。何が嘘で何が真実であったかが解明され完結する、ということになる。しかし真偽の判断を、このどんでん返しの繰り返される三部作の最後の書の言葉に判断の根拠を委ねて下してしまってよいのか。いつの間にか引き込まれてしまったアゴタ・クリストフの虚構の奥深さに、眩暈がしそうになる。 第二の書では、第一の書の一人称の語りが一転して三人称の語りとなりメタな視点が与えられるが、それを双子の物語の中でLucasが書いた物語というような構造的な入れ子を示す変更である、と見ることもできるだろう。しかし、何かが引っかかる。この物語の主人公であるLucasの回りに登場する人物が、実際に国境のこちら側にとどまった筈のKlausの身の回りに表れる人物の面影を持つような気がする。するとこれはLucasが書いた物語ではなく、KlausがLucasを騙って書いた彼自身の物語なのか。であるとすれば、この第二の書は厳密には嘘ではない。すると嘘の数の辻褄が合わなくなる。たった一つの物語の裏表が入れ替えるだけで、全ては一転不確かとなり、何一つ解決できない。恐ろしい小説。 例えば、第三の書はLucasとKlausが各々一人称で語る物語である。一般的に、物語が一人称で語られる時、読者は主人公が物語の終わりでも存在しているだろうと思いこむ。そうでない場合は、その語りは手記として残されたりするような心理上の辻褄合わせが必要だ。一見したところ、第二部でKlausに残された手記があるという説明があり、その一部として第三の書の第一部が残っているようにも錯覚するが、残された手記は新しい紙に書き直された物語、素直に読めばLucasが書き直したはずの第一の書がそれに当たるはず。するとやはり第三の書の第一部を書いた人物Lucasは、心理作用としては死んでいない状態を想定しなければならなくなる。そして第二の書はLucasではなくKlausがLucasの残した手記の続きを自分の人生の出来事をLucasになぞらえて書いたと見るのが自然であるような気がする。しかし第三の書の語り手は残された手記の著者は死んだとする。そこに微妙な隙間が生じ、やはり双子は一つの肉体を持つのではないかという疑問が再び湧き上がる。存在していない人間は死ぬこともない。この驚くべき三部作は、ゆるぎなく解決することを拒む。 第一の書から第二の書への手触りの変化に増して、第三の書で再び大きな手触りの変化がある本書は、驚き、という言葉で表現するのが最も適していると思う。ここには既に誰かを鋭く刺すような警句は見当たらず、あるのは現実に打ちひしがれた人々の夢想のアイロニーばかり。そしてその印象が再び新たな錯覚を生みだす。この三部作がKlausが作り出した想像の物語であって、彼は幼いころに亡くした双子の兄弟にばかり愛情を注ぐ母親にうんざりしながら、現実ではない物語を夢想したのではないか、という錯覚である。その錯覚は物語として本の中から完全に抜け出し切りはしないけれど、一つメタな世界へ跳躍するエネルギーがある。すると、書かれてはいない物語、この本を書き上げたKlausが彼の「大きな帳面」を閉じる姿が記した物語が想像される。そして、本を閉じるシーンが連続して二度繰り返されるようなイメージが沸いてきてしまうのを止められなくなる。
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最初の1/3は過去と現在が交錯し,夢と現実が混ざっていて読みにくいのだ〜僕は観光ビザで帰ってきた。家族を捜すためだ。数回の延長を申し入れたが,金もなくなり,書店の二階に住み,ハーモニカを居酒屋で演奏して金を稼ぐが遂に不法滞在で捕らわれた。大使館では双子を捜し当ててくれたが,本当の...
最初の1/3は過去と現在が交錯し,夢と現実が混ざっていて読みにくいのだ〜僕は観光ビザで帰ってきた。家族を捜すためだ。数回の延長を申し入れたが,金もなくなり,書店の二階に住み,ハーモニカを居酒屋で演奏して金を稼ぐが遂に不法滞在で捕らわれた。大使館では双子を捜し当ててくれたが,本当のクラウスは僕を兄弟だとは認めない。書き続けたものを渡して,僕は列車に飛び込む。/僕らは4歳まで平和に暮らしていたが父が記者として従軍する前日,父は母に帰国したら離婚して新しい女性と生活をすると云いだし,母は拳銃を乱射し父を殺し,撥ねた銃弾でリュカを傷つけてしまった。父が死に母は捕らえられて精神病院に,リュカは病院からリハビリセンターに,僕クラウスは父の愛人に引き取られた。生まれた妹サラの面倒は僕が引き受けることになった。僕は退院した母と暮らし始め,印刷所で働き始める。母は殺してしまったと思い込んでいるリュカを恋しく思っている。やがて,植字工として自分の組んだ活字が陽の目を見る。訪ねてきたリュカに本当のことは告げられない。〜戦争で心が引き裂かれた彼女の体験が書かせた小説だ。戦争と全体主義は,こんなにも人の心に傷を与えるモノなのだな。これで完結したが,二作目の『ふたりの証拠』を読まなくては。
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