高瀬舟 の商品レビュー
この小説は鴎外の短編にして代表作で、短時間で読めてしまう作品だが内容的に重く数々の問題を投げかける作品だと思います。 主人公にして罪人(罪人とされる喜助)は、人間として生きる満足のレベルが一般庶民と違うのだと感じました。 それは喜助の生い立ちによる底辺を知っているからだろう。...
この小説は鴎外の短編にして代表作で、短時間で読めてしまう作品だが内容的に重く数々の問題を投げかける作品だと思います。 主人公にして罪人(罪人とされる喜助)は、人間として生きる満足のレベルが一般庶民と違うのだと感じました。 それは喜助の生い立ちによる底辺を知っているからだろう。そのことを考える時に、たとえ遠島を申し渡されたとしても、今迄の生活より低くなることはないからだ。最低限の生活の保障を得ることが出来る現在では、一部の人たちを除いて到底考えられないかもしれない。 弟の自死の発端は、弟の病苦から来るものではなく金銭的余裕のない兄に対する迷惑を考えた上の心の表れかもしれないが、兄喜助は弟の病苦も自分自身の生活苦の一部にしか捉えていなく、弟を邪魔者として生活してきたのではない。寧ろ弟の自死に対する気持ちを尊重している。 だから事に及んだ弟の安楽死を、是認したのではないかと思うのです。 それは著者鴎外自身が医師として、病に苦しみ助けられない人の生死の権利を世に問いかけたのではないか・・・。 ネットで調べてみると、『山椒大夫』とセットの作品といわれているので続けて読んでみます。
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※このレビューにはネタバレを含みます
【内容】 罪人を遠島に運ぶ高瀬船の上で、弟の自殺を助けて罪人になった男と同心との対話。 【感想】 こんなに短く、簡潔な文章なのに引き込まれた。 自殺を助けたのは罪なのか、罪人になったことでかえって現実の生活苦から抜け出した兄にとって遠島は罰なのか、などいろいろと考えさせる話。 弟を殺めるシーンはゾクゾクした。
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【現代でも通用する、社会のあり方を説く】 財産の多少と欲望の関係、安楽死をテーマにしていると言われているが、私は「社会のあり方」を説く作品であると感じ取った。 200文という少額にも関わらず、人生初の貯蓄ができたと喜ぶ喜助。それを自分の生活と比較し、彼の人間としてのすばらしさを...
【現代でも通用する、社会のあり方を説く】 財産の多少と欲望の関係、安楽死をテーマにしていると言われているが、私は「社会のあり方」を説く作品であると感じ取った。 200文という少額にも関わらず、人生初の貯蓄ができたと喜ぶ喜助。それを自分の生活と比較し、彼の人間としてのすばらしさを感じる庄兵衛。彼ら二人のやり取りを描いた小説が、本作品「高瀬舟」だ。 私にとって印象的であった箇所は2つある。 ① 喜助の金の稼ぎ方を庄兵衛が比較している場面でのことだ。庄兵衛が「桁は違えど右から左へ人手に渡して暮らしているに過ぎない」と感じるシーンがある。つまり、稼ぎの額が違うだけで、自分も島流しにあった喜助と同様のことを行って、お金を稼いでいるのだと気づく箇所。 ② 喜助のすばらしさを考えた庄兵衛が、「彼のすばらしさは、普通の人であれば欲が湧き、次から次へと富を欲しくなる所がないことだ」と気づく箇所。 上記から考えたことは、2つある。 ①「お金が発生する全ての活動は、右から左、左から右に、モノ・サービス・金などが渡ることから成り立っている」ということであり、「どんな金持ちがしていることでも、どんな貧乏がしていることでも、桁が違うだけで根本は同じである」ということ。 ②「欲を無くすということは、現実的に考えて不可能である。しかし、欲の満たし方を自分の為に満たすのではなく、他人の為に満たすのであれば、欲を持つことは良いのではないか」ということ。 お金持ちは、右から左へ、左から右へ流すスキルが他人より多くあった人である。 流すスキルは、勉強に得意な人と不得意な人がいるように、運動に得意な人と不得意な人がいるように、得意な人と不得意な人がいる。それは、努力をすれば何とかなる領域はあるものの、勉強や運動と同様に、才能が寄与するところもある。 同じ活動の中で、偶然あった才能で手にした富を、自分のためだけに使うのでいいのだろうか。 現状に満足しないという心持ちは、非常に大切だ。それが無いと、自己の成長だけでなく、人間としての成長がストップしてしまう。ただ、その成長をする目的が自分なのか他人なのかで、大きく異なる。 他人の人生である以上、私はどちらの人生を取るべきなのかを強制することは出来ない。しかしながら、少なくとも私は、「高瀬舟」が説く方向性を全うしたいと思う。
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夜の海の水を「黒い」と表現するのは結構好き 藤原敏行の「住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ」とか 境遇の違いを「算盤の桁違い」と言うのもかっこいいな
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中3国語の教科書に載っている本。 私も中3のときに読んだ。 国語の授業時に先生が高瀬舟の朗読テープ(CDじゃなくテープって・・・歳がバレてしまう)を流したことを覚えている。なぜなら、弟の剃刀を引き抜くシーンを想像してしまったから!その後、気持ち悪くなって顔面蒼白。私は高瀬舟なら...
中3国語の教科書に載っている本。 私も中3のときに読んだ。 国語の授業時に先生が高瀬舟の朗読テープ(CDじゃなくテープって・・・歳がバレてしまう)を流したことを覚えている。なぜなら、弟の剃刀を引き抜くシーンを想像してしまったから!その後、気持ち悪くなって顔面蒼白。私は高瀬舟ならぬ担架で保健室送りになった。 それはともかく、喜助の「足ることを知る」ということは今でもすごいと思う。いや、今だからこそすごいと思うのか。中学生のときはそんなこと思っていなかった・・・。
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「兄弟愛とオオトリテエ」 法の不完全さと、 安楽死の問題箱。 どうせ、 死ぬなら、 苦しまず、 死にたいよね? ね?
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サウンド文学館・パルナス「森鴎外」 『高瀬舟』『高瀬舟縁起』 高瀬舟は良かったけど、解説で台無しだ。
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森鴎外難しすぎる……! 解説を読まないといまいちわからない話が多い……奥が深すぎる……。 普通の「物語」として読もうとするのがいけないような気がする。 話を楽しむのではなく、自分がどう思うかが主題なのかもしれない。 短編集ですが、いちばん入り込んで読むことができたのは、物語性の...
森鴎外難しすぎる……! 解説を読まないといまいちわからない話が多い……奥が深すぎる……。 普通の「物語」として読もうとするのがいけないような気がする。 話を楽しむのではなく、自分がどう思うかが主題なのかもしれない。 短編集ですが、いちばん入り込んで読むことができたのは、物語性の強い「山椒大夫」でした。 これは姉弟の行く末が心配ですごく引き込まれた。 他は本当に難しかった。 でも、語彙などの勉強になります。
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高校時代の現国で読んだ事はあるがある。 当時はクラスメイトと「痛い痛い」と読みながら騒いでいたが、 それが高瀬舟だとは… 改めて読んだが、美しい文章で淡々と描写している所が余計に痛い。 一世紀前に書かれた話だが、「足る事を知る」と言う事が出来ていない事は人類の永遠の課題なのかな?
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鴎外は「高瀬舟縁起」で財産(知足)と安楽死(ユウトノミイ)に関心を示し、それに沿って読まれてきた。 一方で、庄兵衛と彼に近い語り手は、徐々に喜助への猜疑から離れていく。喜助は真実を語ったのか? 2010冬講座
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