異人たちとの夏 の商品レビュー
某所読書会課題図書: テレビドラマのライターの原田英雄が体験する奇妙な出来事をドラマ風に記述した物語だが、現実の世界と非現実的な風景が頭の中で入り乱れる感じがした.48歳の英雄の両親は36年前に交通事故で死んだが、浅草のアパートで生活している部屋を訪ねて交流する英雄.一人住まいの...
某所読書会課題図書: テレビドラマのライターの原田英雄が体験する奇妙な出来事をドラマ風に記述した物語だが、現実の世界と非現実的な風景が頭の中で入り乱れる感じがした.48歳の英雄の両親は36年前に交通事故で死んだが、浅草のアパートで生活している部屋を訪ねて交流する英雄.一人住まいのマンションに現れる藤野桂との交流も奇妙だ.両親に会って痩せ衰えた英雄を労わる桂.プロデューサーの間宮が英雄の状態を心配し、彼を幻想から救い出すことになるが、顛末はすっきりしない.
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純粋に面白いと感じた。 主人公はかなり不幸な人生を歩んでいた上に、仕事仲間に妻を取られていたという残酷な現実。 仕事はフリーで、身寄りもほとんどおらず、離婚して、人との強いつながりをどんどんなくしていき、社会からふわりの浮いてしまったよう。それで異人たちが現れたのだろうか。 「〜...
純粋に面白いと感じた。 主人公はかなり不幸な人生を歩んでいた上に、仕事仲間に妻を取られていたという残酷な現実。 仕事はフリーで、身寄りもほとんどおらず、離婚して、人との強いつながりをどんどんなくしていき、社会からふわりの浮いてしまったよう。それで異人たちが現れたのだろうか。 「〜の会社に所属の〇〇さん」「〜さんの旦那さん」という社会での肩書きは自分がこの世との強固な繋がりなのかもしれない。社会に"所属"することで、人は現世にいられるのかもしれない。 ラストにかけては個人的には少し陳腐な印象を抱いてしまった。 異界のものと出会ってる時とその直後は力が出るが、離れると衰弱していっているというのは、別のホラー作品でも見たことがある光景だった。 それが父母と出会っている時だけに起きている現象ではないことに気づき、"異人たち"が父母だけではないことに途中で分かったので、それもあり、ラストのホラー展開に物足りなさを感じたのだと思う。 父母の、言葉にせずともわかる、自分を包んでくれる温かさ。嘘でもいいから亡くなった両親に会いたいというのは人間の素直な感情だと思う。 すき焼き屋でのシーンは何とも言えないやるせなさがあった。主人公はこれで両親と二度目の別れになる。それがまたつらい。 ケイとは一時的な愛だったかもしれないが、ラストの一行が全てだと思う。
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少し前に読んだ「敗者たちの想像力ー脚本家山田太一」で言及されていたので。 映画化されていて、一場面だけ見たのを覚えていた。読んでいる間はどうしても両親が鶴太郎と秋吉久美子になってしまう。 どうして両親は亡くなって30年以上もして出てきたのか。それだけ親の愛は深いということか。 主人公がやつれたのは、両親のせいより、ケイのせいだよね。
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随分前テレビで放映されたのを観て、両親と息子がすき焼きを食べるやるせない場面が頭に残ってた。 数年前、東京へ出かけ(そちらに住む)叔母と浅草ですき焼きを食べた(こんなことは後にも先にも一度きりだ)。この懐かしい感じは…、と辿ってみたらその映画で舞台となった店だと知った。すき焼きの...
随分前テレビで放映されたのを観て、両親と息子がすき焼きを食べるやるせない場面が頭に残ってた。 数年前、東京へ出かけ(そちらに住む)叔母と浅草ですき焼きを食べた(こんなことは後にも先にも一度きりだ)。この懐かしい感じは…、と辿ってみたらその映画で舞台となった店だと知った。すき焼きの後はどうだったか覚えてなかったので、いつか読みたいと。 喧騒に包まれる都会とは裏腹、孤独が身に沁みる主人公。そんな主人公原田のもとに訪れたものは。 するするっと非現実に入り込む、怖いというより、ラストはすっきり心が晴れ温かさを感じた。 わかってはいても両親との別れのすき焼きの場面は泣けてしまう。父母の言葉に。子供をよく理解しているのは親だな、と思う。ノスタルジー漂う下町の背景は、ざ昭和で、自分の子供の頃(より少し前かな)、親の時代だったなと思う。親孝行しなくては。 とても郷愁に駆られ、親の愛を感じるお話だなと思う。田辺聖子さんの解説、良かった。
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映画「異人たちとの夏」を何度か観て原作を読んでみたいと思い手に取った。原作と映画ではえてして内容が異なることがあるが、本作は映画通りというより映画が原作通りだったことで、とても安心して読み終わることができた。切ない気持ちが残った。
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再読。 昭和63年に刊行された小説だが、好きな作品なんで、これまでに何度も読み返している。 作品全体に漂う夕暮れ時の描写というか、セピア色のけだるい色彩もいい。 両親との最後の食事シーンは、やっぱり泣けてしまった。 僕にとっては一押しの、毎年、夏になると決まって読みたくなる作品で...
再読。 昭和63年に刊行された小説だが、好きな作品なんで、これまでに何度も読み返している。 作品全体に漂う夕暮れ時の描写というか、セピア色のけだるい色彩もいい。 両親との最後の食事シーンは、やっぱり泣けてしまった。 僕にとっては一押しの、毎年、夏になると決まって読みたくなる作品である。
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著者は脚本家なんですね。 後書きで知りました。 ふぞろいの林檎たち、懐かしい。笑 確かに、読んでたら映像化の方が 映える気がしました。 と思ったら映画化されてましたね! 内容は、途中戸惑いがありましたが 最後の一文で、読んで良かったと 思いました。
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むかし読んだ時は単にホラーだったのに、今読むと胸が苦しくなります。年代によってこんなに感じることが違うかなと少し驚きました。 主人公が子供の時に事故で亡くなった両親とある日巡り会う。自分の方が歳上になっているのに両親は昔の両親のまま深い愛情を主人公に注いでくれます。 幾つになって...
むかし読んだ時は単にホラーだったのに、今読むと胸が苦しくなります。年代によってこんなに感じることが違うかなと少し驚きました。 主人公が子供の時に事故で亡くなった両親とある日巡り会う。自分の方が歳上になっているのに両親は昔の両親のまま深い愛情を主人公に注いでくれます。 幾つになっても両親の愛はかけがえなくそして自分を子供の自分に戻してしまう。 そういう事が若い時にはわからなかったわけです、自分は。 切なく涙をおさえられなかったです。
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大学生の頃読んだが、この年で読み直すと、若く元気な頃の両親と再会というシチュエーションに涙する。話を全部忘れていたので、ラストの急展開に背筋が凍った。タイトルの「たち」にそんな意味が隠されていたとは。夏の終わりに良い体験をした。
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- ネタバレ
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オチはなんとなく読めていたけど、けっこう怖い感じになるんだなと。 ほのぼのホラーから戦慄ホラーへ。 主人公を蝕んでいたのは両親ではなくて、ケイってこと? 文字通り精力を吸われて… なら、両親は消えなくてもよかったのだろうか? あと、やたらビールが美味しそうで飲みたくなる。
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