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堕落論 の商品レビュー

4.1

55件のお客様レビュー

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2023/02/19

もともと人間は長く生きれば、光り輝いていた頃から徐々に堕落してくものなのだ。赤穂浪士の志士を処刑したのは、長く生きながらえて生き恥をさらないようにしたため。軍人の妻で未亡人となった者の結婚をしばらく禁じ得たのは、時期がたてば不倫をしてしまうため。もともと二人の君主に仕えるな、それ...

もともと人間は長く生きれば、光り輝いていた頃から徐々に堕落してくものなのだ。赤穂浪士の志士を処刑したのは、長く生きながらえて生き恥をさらないようにしたため。軍人の妻で未亡人となった者の結婚をしばらく禁じ得たのは、時期がたてば不倫をしてしまうため。もともと二人の君主に仕えるな、それなら潔く死なば諸共、一つの君主に仕えよという武士道の教えは、こういう規律でも作らない限り、やすやすと他の君主に願えることを見越していたため。こんな元々の人間の行動・思考特性にそぐわない旧来の価値観に縛られるな一度人間の本性というものに立ち返って堕落してみよ、というのがこの本で述べている堕落の意味。とても面白い。

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2022/12/09

高校の頃読んだのをコロナ期間に再読 やっぱり文体も内容もテンポも最高 「桜の森の満開の下」も本当に美しくて大好き

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2022/10/31

あるべき姿とか〇〇道とかよりもありのままの人間の真実、生命の生きようとする力、多様性や強さも弱さもあるしたたかさ、そこに人間性が滲み出しているよう思う。

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2023/03/14

堕落論と続堕落論だけちゃんと読んだけどオーすげと思った 孤独な人やアウトサイダーやらに対しての愛を感じる 

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2022/12/25

言葉の役割は明確に伝えることだが、文化、芸術としては、明確にしすぎず、相手の想像に任せる部分もある。 読者はそこまで文学に寄る必要があり、作家は読者の「わかりやすさ」まで降りてくる必要はない。

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2022/01/02

『堕落論』『続堕落論』を含む9つのエッセイや小説からなる本。 坂口安吾を読んだのは初めてだが、著者についての感想は「戦前・戦中・戦後を生きたビート(北野)武」。 皮肉・批判・ユーモア・耽美など、作品ごとに異なる多彩な才能を感じた。 本への掲載順は時系列ではないので、以下では時...

『堕落論』『続堕落論』を含む9つのエッセイや小説からなる本。 坂口安吾を読んだのは初めてだが、著者についての感想は「戦前・戦中・戦後を生きたビート(北野)武」。 皮肉・批判・ユーモア・耽美など、作品ごとに異なる多彩な才能を感じた。 本への掲載順は時系列ではないので、以下では時系列で記載する。 1.風博士 1931年、25歳で発表した短編小説(?)。ミステリ調でありつつ、ユーモラスな文体。 2.FARSEについて 1932年発表。文学や芸術の在り方を論じたエッセイ。 3.文学のふるさと 1941年に発表したエッセイ。 4.日本文化私観 1942年発表。「高尚な文化」のみを文化と捉えず日本文化を語ったエッセイ。 5・6.堕落論、続堕落論 1946年発表。 ここでの「堕落」とは「欲しがりません勝つまでは」的な「戦時中の異常な精神状態」から「人間としての当たり前」へと戻ることを指す。 現代では一般的な戦争への考え方を、敗戦直後のGHQ占領下で既に喝破していることに驚かされる。 『続堕落論』では筆のノリがよく「作家としての語り」よりも本音が強く出ている。 7.恋愛論 1947年発表。本来は日本になかった「愛」という言葉について「好き」「大切」といった日本語などと比較しながら考察するエッセイ。 8.桜の森の満開の下 1947年発表。耽美的な短編小説。山に生きる山賊と都会の娘の物語。 9.不良少年とキリスト 1948年に発表。自殺した太宰治へのメッセージ。

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2021/12/29

●最後 人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。 戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ...

●最後 人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。 戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。人間は結局処女を刺殺せずにはいられず、武士道をあみださずにはいられず、天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。だが他人の処女でなしに自分自身の処女を刺殺し、自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。そして人の如くに日本も亦堕ちることが必要であろう。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。政治による救いなどは上皮だけの愚にもつかない物である。 ●キーワード? 堕落、戦争、天皇、闇屋、美しいものを美しいままで終わらせたいという心情の傾向は残っている、天皇制に就ても極めて日本的な政治的作品を見る、運命に従順な人間の姿は奇妙に美しい ●あの偉大な破壊の下では、運命はあったが、堕落はなかった。無心であったが、充満していた。 ●偉大な破壊、その驚くべき愛情。偉大な運命、その驚くべき愛情。それに比べれば、敗戦の表情はただの堕落にすぎない。 ●規約を制定してみても人間の転落は防ぎ得ず、よしんば処女を刺し殺してその純潔を保たしめることに成功しても、堕落の平凡な跫音、ただ打ちよせる波のようなその当然な跫音に気づくとき、人為の卑小さ、人為によって保ち得た処女の純潔の卑小さなどは泡沫の如き虚しい幻像にすぎないことを見出さずにいられない。

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2021/09/21

人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるのだ 堕落せよ、生きよ、堕ちよ。 人間は堕ちるとこまで堕ちて、そこから人生はつくられていく。果たして私は今まで堕ちるとこまで堕ちただろうか。人生ってなんなのさ。

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2021/07/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

長い感想。 自分が何を欲するか分かるためにはまず堕ちないといけない。けれど、堕ちぬくほど人間は強くない、という安吾の指摘。 これを終戦後に読んだ人たちは なんてクールなんだ!という気持ち反面、そんな事言われても自分が何がしたいか分からないよ、なんて思ったのではないかと。 戦争前、天皇制のもと、このように生きてください、こうすればあなたはいい国民です、こういう悪いことしたら非国民です、と導いてもらってきた日本国民。 だけど敗戦した、では今後どう生きればいいんだろう。ここで、安吾は「いっかい堕落してみろ。そうすれば、再生できるんじゃないの?」と言いたかったのかなと思った。 安吾のいう堕落って、自堕落な生活みたいなイメージよりかは 「私は○○がしたい」→「そのためには○○が必要だ。」みたいなことを自分で考えて生きていこ、ということが言いたかったのでは。 それから続堕落論の農村の精神なんて最高! 言い切ってて爽快!ごもっとも!と拍手したくなってしまった。 現代の日本にもそういうメンタル、あるのでは?と感じた。たとえば公(オフィシャル)と私(プライベート)という二面性があるとき、私を犠牲にして汗流して時間かけて苦労してガンバッてます!みたいな。そういうお話に「いいね〜」と思う自分もいるよな、と気付かされた。 日本は変化することを得意としない国とおもっているけど、そんな昔の人もそう思っていたのね、という衝撃も受けた。 以下、好きなところを抜粋。 ・終戦後、我々はあらゆる自由を許されたが、人はあらゆる自由を許されたとき、自らの不可解な限定とその不自由さに気づくであろう。 ・人間は可憐であり脆弱であり、それゆえ愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。 続堕落論 ・農村の美徳は耐乏、忍苦の精神だという。乏しきに耐える精神などがなんで美徳であるものか。 ・日本の精神そのものが耐乏の精神であり、変化を欲せず、進歩を欲せず、〜〜。 ・ボタン一つ押し、ハンドルを廻すだけですむことを、一日中エイエイ苦労して、汗の結晶だの勤労のよろこびなどと、馬鹿げた話である。しかも日本全体が、日本の根底そのものが、かくのごとく馬鹿げきっているのだ。

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2021/01/26

戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。 終戦後翌年発表され影響は凄かったらしい。 自死した太宰治を分析した不良少年とキリスト他。 ちょっと賢いジャイアンがぶった斬る戦後。 戦後75年経った今日にも通ずるかも

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