薔薇の名前(下) の商品レビュー
最近「バウドリーノ」上下巻が岩波文庫から出版されたので、20世紀に読んだエーコの「薔薇の名前」を登録した。当時は勢いで読破し大筋は押さえても細部はその気になっただけで後にショーンコネリーの同名映画を観て再読した記憶がある。
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※このレビューにはネタバレを含みます
"いつか辿り着きたいと思っていたミステリーの頂に、一度だけ足を踏み入れてみた"といった読書体験だった。この物語との対峙はこれで終わりではなく、「10年後にまた会おう!」と言いたくなるような物語だった。 ミステリー小説の世界最高傑作とも言われる「薔薇の名前」。超難関な物語を覚悟して読んでみたところ、意外なほどにすんなりと読める。プロローグこそ難解な文章が続くが、本編が始まってみると文章は非常に読みやすい。 物語の構成も突飛なところはなく、ホームズとワトソンを思わせる二人組が、ある閉鎖環境で起きた殺人事件の謎を解いていく。迷宮のような館を舞台に隠された暗号を解読しながら、黙示録に見立てられた連続殺人を解決。まさに基本で王道なミステリーのプロットだ。 しかし、そこに圧倒的物量の情報の洪水が押し寄せている。キリスト教の様々な宗派、様々な立場の登場人物が「異端とは?正統とは?」という問いに対し、持論を語りまくる。 メインシナリオは一行に進まず、ただただ情報が溢れる。 似ている小説で言えば「ダ・ヴィンチ・コード」。ただ、ダ・ヴィンチ・コードをより知的で難解にしたよう。流れ混んでくる情報が「薀蓄」ではなく「思想」だから重みが違うのだ。 最後の訳者による解説に、”『薔薇の名前』には読み解くべき物語が重層的に嵌めこまれている。読者は、豊かな読書経験を持てば持つほど、たくさんの物語をこの小説のうちに見出すであろう"とある。 まさにこれが『薔薇の名前』の最大の特徴。聖書やキリスト教に関する知識、世界史の知識。このあたりのピースが決定的に欠けていたため、今回の読書では『薔薇の名前』の表層を撫でただけにすぎないのはいたいほど感じている。 だからこそ、今まで以上の豊かな読書体験を積んで、もう一度この小説を読みたい。 "犯人が捕まり事件が落着したときに、慰め(エンターテイメント)の文学が終わったところに、文学の大道が始まる”"それぞれの犯罪には、結局、別の犯人がいるか、誰も居ないことを、発見したのだった” と語られる本作の結末を、いつかもっと深い場所で理解できるように、これからも豊かな読書を続けていこう!
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ほとんどのレビューが沢山の星を与えているのに、そこまでの魅力を感じることが出来なかった。 最大の理由は、日本語が難しすぎて十分な理解が出来ない。 原文由来の難しさなのか、訳の問題なのか、それともやはり、自分の読解力の問題なのか? そして、僧院内部の細かな記述がビジュアライズ...
ほとんどのレビューが沢山の星を与えているのに、そこまでの魅力を感じることが出来なかった。 最大の理由は、日本語が難しすぎて十分な理解が出来ない。 原文由来の難しさなのか、訳の問題なのか、それともやはり、自分の読解力の問題なのか? そして、僧院内部の細かな記述がビジュアライズ出来ない。 プロテスタントではあるけれど、普通の日本人に比べればはるかにキリストに触れている自分が、書かれている記述を頭に描けない。イタリア、フランス、イギリスの教会を経験しているのでそこそこは分かるにしても、理解出来ないで文字だけを追って行くのはつらい。 確かに、修道士が殺され、ウイリアムとアドソによる犯人探しの推理が始まった所は、いよいよ来たか!っと感じたが、その後の展開に大きなドンデン返しがある訳でもなく、最後まで読み進めるのがどんどん辛かった。
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キリスト教、黙示録、異端と正統。 こういったキリスト教についての事柄が物語全編に記されている。 キリスト教に馴染みのない日本人には読みにくいところも多いと思う。寧ろ、キリスト教徒であるわたしの方が考え考え読むため読み進めることが難しかった。 多くの変死事件が閉ざされた空間である...
キリスト教、黙示録、異端と正統。 こういったキリスト教についての事柄が物語全編に記されている。 キリスト教に馴染みのない日本人には読みにくいところも多いと思う。寧ろ、キリスト教徒であるわたしの方が考え考え読むため読み進めることが難しかった。 多くの変死事件が閉ざされた空間である修道院で起きる。その事件の謎を解く探偵小説として十分愉しめる。 信仰に生きるひとが集う修道院で、何故ひとが殺されていくのか。 殺人事件とは縁遠いはずの場所で起きる事件の背景には、人間が人間であるがゆえの様々な欲が渦巻いている。 謎の“アフリカの果て”とは何のことなのか。 誰が犯人なのか。 修道院はどうなってしまうのか。 こういったことが名探偵ウィリアムとアドソの推理と活躍によって解き明かされる。 修道士となるときは誰もが敬虔な信者であったはずなのに、欲に負けてしまったり信仰を歪ませてしまう。 人間が人間である以上、誰もが罪深い。 だからこそ、ひとは神に縋るのだ。 言葉は記号。 この記号の意味することを知りたいと望み、記号が正しく伝わらないと諍いが起きる。 記号論学者であるエーコならではの作品だった。 真の愛とは愛される者の喜びを願うものだ(p225) この言葉は愛を簡潔に説明している。 神様はいつもわたしたち人間を深い愛で見守ってくださる。 教会に行かなくちゃ。
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中世イタリアの僧院を舞台に次々と死者が出る。そして、最後は壮絶なクライマックスを迎える。 あらすじ自体も複雑なうえ、背景となるキリスト教の歴史の理解もないから読むのに骨が折れた。また、セリフや描写が長いところも本書を難しくしている印象。 ただ、内容はそれを上回る面白さだった。...
中世イタリアの僧院を舞台に次々と死者が出る。そして、最後は壮絶なクライマックスを迎える。 あらすじ自体も複雑なうえ、背景となるキリスト教の歴史の理解もないから読むのに骨が折れた。また、セリフや描写が長いところも本書を難しくしている印象。 ただ、内容はそれを上回る面白さだった。話が重層的に折り重なっており、推理小説やミステリーという範疇にくくれない深さを持った作品に思えた。 主人公の一人のウィリアムが、ブリテン島出身者のステレオタイプらしく描かれたところは妙にツボにはまった。
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始まりから終わりまで、頭の中で壮大な映画が繰り広げられているものの、途中しばしば難解なせりふや引用が用いられるので、四苦八苦。高品質なミステリー小説であると同時に、登場人物を通して哲学的議論に触れられるのも面白い。翻訳もすごい(ような気がした)と思ったが、そしたら国際的な翻訳の賞...
始まりから終わりまで、頭の中で壮大な映画が繰り広げられているものの、途中しばしば難解なせりふや引用が用いられるので、四苦八苦。高品質なミステリー小説であると同時に、登場人物を通して哲学的議論に触れられるのも面白い。翻訳もすごい(ような気がした)と思ったが、そしたら国際的な翻訳の賞を受賞していたようだ。読む時間が無駄にならない一冊。
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おもしろかった〜! イタリア古典は神曲地獄編くらいしか読んだことないけど、デカメロンくらいは読んでおかないといけないなあ。勉強すればするほど楽しめるとなると果がない、、! 薔薇の名前と彼女の名前を村上陽一郎さんが考察したというものが解説に載っていたけど、私はちょうど市民ケーンを観...
おもしろかった〜! イタリア古典は神曲地獄編くらいしか読んだことないけど、デカメロンくらいは読んでおかないといけないなあ。勉強すればするほど楽しめるとなると果がない、、! 薔薇の名前と彼女の名前を村上陽一郎さんが考察したというものが解説に載っていたけど、私はちょうど市民ケーンを観たばかりだったのでやはり彼女の名前すなわち愛という印象を強く受けた。 これはそのうち読み直したいしその時こそは読み飛ばした議論のあたりも理解してみたい
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舞台は中世イタリア。カトリック修道院内で起こる怪事件の謎を、かつて異端審問官として名を馳せていたバスカヴィルのウィリアム修道士と物語の語り手である見習修道士メルクのアドソが解き明かしていく。 ホームズとワトソンを彷彿とさせる彼らの謎解きを軸に、緊張感のある7日間を描き出していま...
舞台は中世イタリア。カトリック修道院内で起こる怪事件の謎を、かつて異端審問官として名を馳せていたバスカヴィルのウィリアム修道士と物語の語り手である見習修道士メルクのアドソが解き明かしていく。 ホームズとワトソンを彷彿とさせる彼らの謎解きを軸に、緊張感のある7日間を描き出しています。もともとラテン語で書かれ、フランス語に訳されたメルクのアドソの手記を「私」(エーコ)が手にするという枠物語の形式で始まります。 怪事件自体は割とシンプルなものです。ところが、教皇と皇帝の権力闘争や宗教論争、終末意識、キリスト教の教典など歴史的背景が複雑に絡み合い、右へ左へと脇道に逸れていきます。その度に「フランチェスコ会…ふむふむ」「ローマ教皇のアビニョン捕囚?…ほうほう」などと脇道にすっかり腰を下ろしてしまいなかなか立ち上がれない。立ち上がった頃には「この人誰だっけ」と数ページ戻りながら遅々として進みません。事前に色々と知識を蓄えていればより面白く、よりすらすらと読み進められるのでしょうが、このみちくさ読書も楽しかったです。 そして何よりこの縦横無尽に張り巡らされた脇道も、一行たりとも不要な箇所はないと気付きます。読み終えると様々な問いが浮かびます――「信仰とは?」「正しさとは?」「神とは?」。 血生臭い描写も多いのですが、事件の鍵と見られる異形の塔にある文書館に迷い込む場面や、アドソの初恋(とあえて呼びます)の描写は幻想的かつ甘美で美しいものです。 読書の面白さを十二分に体験できる、知的好奇心が思いきり刺激される作品でした。 とはいえ重厚感のある上下二巻を読み終えたものの、博識のエーコが示した意図の半分も汲めていないはず。そして訳者である河島英昭氏の下巻巻末に書かれた解説を読むと、こぼれおちたパズルのピースを拾うように再び冒頭から読み直したくなる気持ちになります。今すぐは難しいですが、また挑みたくなる本となりそうです。 普段の倍以上の時間をかけて読み進めている間に、まさか著者の訃報(2016/2/19)を聞くことになるとは思いませんでした。残念でなりません。 ~memo~ 伊語・原タイトル『Il Nome della Rosa』 英訳『The Name of the Rose』
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知の迷宮に喩えられるこの小説。そして連続殺人の犯人探しの小説だったはずなのに、キリスト教の議論、様々な文学との関連、歴史的文脈、哲学的思考…と読んでいくほど自分が小説のどこに迷い込んだのか分からなくなります。 最後まで読み終え犯人にたどり着いた、という意味では自分は一応この...
知の迷宮に喩えられるこの小説。そして連続殺人の犯人探しの小説だったはずなのに、キリスト教の議論、様々な文学との関連、歴史的文脈、哲学的思考…と読んでいくほど自分が小説のどこに迷い込んだのか分からなくなります。 最後まで読み終え犯人にたどり着いた、という意味では自分は一応この本の迷宮を抜け出せたのかな、とは思うのですが、でも一方で 解説にあるような様々な文学作品へのオマージュだとか、作中の登場人物たちの議論が理解しきれなかった、という点においては、この迷宮を完全に制覇はできなかった、 ゲームのダンジョンふうに言うなら、脱出はできたけど、隠し通路や宝箱なんかを見つけられないまま抜け出した、ということになるのかな、と思いました。 しかし、それでも上巻の文書館の探索シーンと、下巻の壮絶なクライマックス、そして一冊の本と文書館をめぐる謎と冒険部分だけでもこの本を読んだ価値はあると自分の中では思っています。 そして読んでいて伝わってきたのが著者のウンベルト・エーコの本、そして知識に対する敬虔の念。この小説は全ての先人、そしてこれから生まれてくる本と知識に対する敬虔の念が根底にあるように思います。 またすぐ読み返す気分にはなれませんが、いつか覚悟と装備をある程度整えてこの迷宮に立ち向かってみたいと思わされる小説でした。
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伊版•八ッ墓村続編。 数々のシリアルマーダーは毒殺に基づく可能性が発覚。確信に近づくに連れ描写は荒くなり→僧院全焼w このハチャメチャ感は、どっちなんだろう… うー、リメイクするならオダギリジョー登用は外せないかも…
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