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抱擁家族 の商品レビュー

3.8

40件のお客様レビュー

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「家族」という制度そ…

「家族」という制度そのものの不可能性を、ユーモラスで簡便な文体で綴った戦後文学の金字塔。

文庫OFF

戦後日本文学の収穫で…

戦後日本文学の収穫であるのみならず、二十世紀屈指の傑作。戦後における家族の不可能性を痛切なユーモアで描き、小島信夫の冠絶を知らしめた。

文庫OFF

最愛の人の死が悲痛な…

最愛の人の死が悲痛なユーモアとしてえがかれている!!

文庫OFF

2024/09/17

代表作ではあるけれど、ブラックな滑稽さを含んだ奇妙な空間や関係を描き出す初期と、類をみない破茶滅茶で自由な文体で文学史に残る後期の仕事に比べると、過渡期的な中途半端さがあって、他の筆者の作品ほど面白くは感じなかった。 家庭内の不和が延々と続く様を描いているけれども、その内容は他の...

代表作ではあるけれど、ブラックな滑稽さを含んだ奇妙な空間や関係を描き出す初期と、類をみない破茶滅茶で自由な文体で文学史に残る後期の仕事に比べると、過渡期的な中途半端さがあって、他の筆者の作品ほど面白くは感じなかった。 家庭内の不和が延々と続く様を描いているけれども、その内容は他の有体の私小説とは全く異質で、人間対人間の間で常に起きているコミュニケーションの不通が一切の物語的な装飾がなく描写されていて、一読しただけでは何について話しているのか、それが会話になっているのかさえ分からなくなるような感覚を覚える。そもそも、主人公の感情の種類や動き方が全く不明だ(おそらく筆者もよくわかっていないというか噛み砕いて安易な解釈やカテゴリに入れないまま物事を書いているんだと思う)。吉本隆明か誰かが、小島信夫という人間は実生活では人が嫌な気分になるようなこと、普通だったら言わないまま心に秘めておくことをあけすけに本人の前で言い出すような社会不適合な人間だと評していたけれど、それがそのまま執筆の時の態度にも向かっているような感じがする。

Posted byブクログ

2024/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

重層的な作品。 ジョージ=アメリカ・占領軍・GHQであったり、妻の時子=戦前の天皇制・伝統であったりなど、あきらかに戦後の日本の体制を描いていると見える。 死んだ時子のいた日本間(アメリカ式の家の一区画である!)に友人の木崎とともに寝に行く息子の良一も示唆的だ。 「家」にめちゃくちゃ執着する。最初の家を、妻=戦前の日本がジョージに寝取られたのちに仮の住処を一度挟んでからアメリカ式の家に住む。ただそのまま乳がんが見つかって時子はどんどん容態が悪くなってやがて死ぬ。妻=天皇がいれば雨漏りもしなかっただろうにと嘆く場面もある。 「家」が文化とか、そういう文化的な伝統みたいなものの暗喩として働いている。その中でうごめくさまざまな登場人物たち。 妻が死んでからは、新たな妻・主婦を探そうとみんなが躍起になる。神としては死んだ天王に代わる倫理的支柱を求める。「魚の眼」に思えるような女性を新たに妻にしようとする。人間化した天皇の個人としての性格は無視して、ただ象徴としての、機関としての主婦を求めていく。 家にいると自由がないと困ったり、やっぱり家にいる方が自由だと感じたり、「家」をめぐって自由に関する意識もねじれている。核家族という新たな形式にも未だ慣れることはない。 しかもこの小説、そういうメタファーを一切とっぱららったとしても面白い。服屋の店員が妻の病名を聞かなかったり、娘の泣くのをちょっとだけ見下したような目線で見たり、そういう人間の美しくない機微を逃すことなく捉えている。大谷さんが玄関で転ぶのを俊介が目に入れてしまうこともそう。 ジェンダー的な読み方もできそう。

Posted byブクログ

2023/05/29

ものすごく奇妙な文体。妻の不貞がきっかけで…というプロットは濱口竜介っぽくもある。易しい言葉遣いでするする読めるのに意味がわからない。登場人物の思考回路はまったく予想がつかずあれよあれよと別人のように豹変していく。いきなり時間軸が飛んだりするので余計に厄介。

Posted byブクログ

2022/12/28

『アメリカンスクール』の煮詰まった文体から力が抜け、以降小島信夫の作品を彩るのはのらりくらりと抽象的でどこか滑稽な語り口。 転換点とも言える本作の、シリアスな内容なのに笑えてしまうギャップが最高に面白い。

Posted byブクログ

2022/05/02

時子が浮気をし、病気でいなくなって初めて彼女が妻の存在を持っていたことに気づき、自分は家庭の中の夫、父になろうとして「なろう」としている時点で本物ではなく妻からも子供からも空回りして、でも自分の家族は紛れもなくここにしかないという喜劇。(後書きにも喜劇という文字があったけど、読ん...

時子が浮気をし、病気でいなくなって初めて彼女が妻の存在を持っていたことに気づき、自分は家庭の中の夫、父になろうとして「なろう」としている時点で本物ではなく妻からも子供からも空回りして、でも自分の家族は紛れもなくここにしかないという喜劇。(後書きにも喜劇という文字があったけど、読んでて疎外感とかもがく悲しさしか感じなかったけど、思い返してみるとそれは喜劇と呼ぶしかない) 私小説なのかしら。 時子の乳癌が、大丈夫、病室の◯◯に比べればまだ大したことないと思ってる間にあっという間に容体が悪くなって衰えて死んでしまうのが怖かったな。

Posted byブクログ

2021/05/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

たしかに家族の話なんだけど、切り取るところがすごい独特な気がする。自分の家に変な人がたくさんいる。(変人がいるという意味ではない)〈家族としてあるべき姿〉という概念がずっと物語の中に漂っていて、まあ言い換えればそれだけが浮かび上がっているというべきか。 主人公と妻の話だと思って読むから、妻が亡くなってもこの話が平然とつづいていくのがやっぱ変。でもだからこそ、〈家族としてあるべき姿〉が浮かび上がっている気がする。でも登場人物、とくに主人公の気持ちを追うのがむずかしい。 一読したうえでは、おもしろい!とは自信を持って言える確固たる感触は持てていないのだけど、これを読んだ人と語りたい感じはある。

Posted byブクログ

2019/12/22

面白いことは間違いないのだが、その面白さが一体どこからくるものなのか、今ひとつ上手く言葉にできない類の小説だった。 ただ一つ言えるのは、主人公である三輪俊介の内省がめちゃくちゃリアルに感じたいうこと。 そのリアルさというのは、だれもが思っていても敢えて言葉にしないような、でも意識...

面白いことは間違いないのだが、その面白さが一体どこからくるものなのか、今ひとつ上手く言葉にできない類の小説だった。 ただ一つ言えるのは、主人公である三輪俊介の内省がめちゃくちゃリアルに感じたいうこと。 そのリアルさというのは、だれもが思っていても敢えて言葉にしないような、でも意識するかしないかのギリギリのところで確実に思っていて、それが明文化されたときに、思っていたことに初めて気がついたように感じるような、そんなリアルさである。

Posted byブクログ