抱擁家族 の商品レビュー
何だか何がしたいのかよく分からんおっさんは、ある意味シンパシーを感じないこともない。突然怒ってみたり、と思ったらいじけてみたり、妻とも文句を言ったり言われたり、本当に、実にどうでも良いことばかりで、これが2000年後に未来人が戦後の日本人のおっさんがどんな暮らしをしてたかを調べる...
何だか何がしたいのかよく分からんおっさんは、ある意味シンパシーを感じないこともない。突然怒ってみたり、と思ったらいじけてみたり、妻とも文句を言ったり言われたり、本当に、実にどうでも良いことばかりで、これが2000年後に未来人が戦後の日本人のおっさんがどんな暮らしをしてたかを調べる際には、映画や小説や、はては素人の日記なんかに比べてもリアリティがあるかもしれんけど、言うても面白いかっって言ったらつまらんにょ。
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フェミニズムやジェンダーに興味があった頃に、なにかの本で紹介されていて購入した本。 H31.4.30再読。 平成最後に読み終えた本となった。 もう、早く読み終わりたくて仕方がなかった。 文章自体は読み易いので、すぐ読了できたけれども、読んでいて始終苦痛だった。 奇妙で不愉快。 ...
フェミニズムやジェンダーに興味があった頃に、なにかの本で紹介されていて購入した本。 H31.4.30再読。 平成最後に読み終えた本となった。 もう、早く読み終わりたくて仕方がなかった。 文章自体は読み易いので、すぐ読了できたけれども、読んでいて始終苦痛だった。 奇妙で不愉快。 当時まだ主流であった(今だってまだまだ拭い去れない)「家父長制」の崩落が描かれているように感じた。 崩れゆく「家族の形」とか「絆」のハリボテを躍起になって支えている或る家族、という印象。 各々役割を演じながら、そんな自分や家族を相対的に観察して、修正を施そうとしてもどうにも上手くいかない。 綻びは広がり続け、ついには決壊してしまう。 家は欠陥だらけ、妻の病気は進行して死に至り、狂っていく主人公、出て行く息子、噛み合わない歯車があったことで全てが狂ったのか、あるいは全ての歯車がそもそも微妙にズレていたのか。 「主婦」という部品を求めて早急に再婚相手を探す俊介や子供達が恐ろしかった。 いちいち煽るようなみちよも怖い。 こんな複雑な感情を喚び起こす、奇妙な読書体験を提供してくれる本はそうない。
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戦後の空気が色濃い日本のある家族。 アメリカ人と関係を持ちながらも悪びれることもなく、ただただ唯我独尊であり続ける妻。 なんやかや葛藤しながらも、それを受容し続ける夫。 勝手気ままに振る舞う息子と娘。 そして、クセの強い家政婦。 脆いような、実は意外にタフなような家族の関係。 こ...
戦後の空気が色濃い日本のある家族。 アメリカ人と関係を持ちながらも悪びれることもなく、ただただ唯我独尊であり続ける妻。 なんやかや葛藤しながらも、それを受容し続ける夫。 勝手気ままに振る舞う息子と娘。 そして、クセの強い家政婦。 脆いような、実は意外にタフなような家族の関係。 これも一つの家族の形か。
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家に出入りする米軍士官への嫉妬から 家族は仲良くあらねばならないという理想を引っ張り出して 妻を拘束しようとする夫の話 しかし所詮それはプライドを守ろうとする行為でしかなかった ゆえに道化にはなりきれず、お大臣の夢を語るでもなく なにより敗戦国の美徳観念が抑制をかけるのか 何をや...
家に出入りする米軍士官への嫉妬から 家族は仲良くあらねばならないという理想を引っ張り出して 妻を拘束しようとする夫の話 しかし所詮それはプライドを守ろうとする行為でしかなかった ゆえに道化にはなりきれず、お大臣の夢を語るでもなく なにより敗戦国の美徳観念が抑制をかけるのか 何をやってもかっこつけに見えて 妻のみならず、みんなに馬鹿にされてしまう ところがその妻も 米軍士官の誘惑を受けた負い目があるのか あるいは貞節を傷つけられた恥の意識に苛まれてか どうもヒステリーで支離滅裂になっており そのことが小説を悪文に見せてわかりにくくすらしているのだった それでも家長の威厳を保つため、主人公は 家をポストモダンに新築するが まもなく癌で妻が死に 新しい結婚相手を探すうち 要するにわれわれは自由主義と封建主義のダブスタで生きてるのだ 進歩的とはそういうことだ そうわかってきて、生前の妻の偉大さが身にしみると 家政婦の誘惑も目に入らないのだった
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興味を持つきっかけは、福田の採点本。その後もあちこちで賞賛のコメントを見かけ、これは是非読んどかないと、ってことで。『仮往生~』のことがあったから、読むまではちょっと不安だったけど、こちらは良かったです。家父長たる威厳を示したいけど、だんだんそういう風潮でもなくなってきている父親...
興味を持つきっかけは、福田の採点本。その後もあちこちで賞賛のコメントを見かけ、これは是非読んどかないと、ってことで。『仮往生~』のことがあったから、読むまではちょっと不安だったけど、こちらは良かったです。家父長たる威厳を示したいけど、だんだんそういう風潮でもなくなってきている父親の葛藤とか、一歩下がって支えたい願望もありながら、米人の乱入とか自身の闘病とかでそれどころじゃなくなった母親とか。あくまで会話分を中心に、そこから色んな情景が浮かび上がってきて、読み心地も良好。なかなかに素敵な読書体験でした。
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タイトルとはほど遠い、じわじわと家庭が崩壊していく様子を描いたもの。ちょっとしたアクシデント、病気、思い違い、仕事、店員など、なんでもない小さなことが家庭に入り込んで少しずつ歯車が合わなくなっていく。「問題」を無くしていくと最後に残るのは自分だけという不幸。
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主人公がほとんどわけのわからぬ周囲の言説に振り回され、さらに自身の言動に対してすら実感が薄くなる、この愉快な狂気が実に優れている。
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何もかもが噛み合わない。さっぱりした文体と舌足らずで宙に浮いた語りで居心地が悪い。男のエゴ。家の閉鎖性。女性の謎。 勝手な男と、それに対して焦点を結ばない犯行を続ける妻に、昭和の家族の典型的な暗さを読み取ってしまった。
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アメリカかどっかで刊行されている世界文学全集的なものには、小島信夫のアメリカンスクールが常連らしい。ということで、代表作を読んでみたが、合う合わないでいったら合わない小説だった。 気持ち悪い読みにくさがあるのは、それぞれの登場人物にまったく共感できないからなんだろう。妻が死ぬ当た...
アメリカかどっかで刊行されている世界文学全集的なものには、小島信夫のアメリカンスクールが常連らしい。ということで、代表作を読んでみたが、合う合わないでいったら合わない小説だった。 気持ち悪い読みにくさがあるのは、それぞれの登場人物にまったく共感できないからなんだろう。妻が死ぬ当たりまでは、何か分かる感じがしたんだが、それ以降がよくわからん。というか、この息子と娘がまったく理解できない。娘にいたっては、読み飛ばしたかもしれんが、だいたいの年齢すら不明。なんとも不思議で気持ち悪い小説だった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。 たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し次第に自己を喪失する。 無気味に音もなく解けて行く家庭の絆。 現実に潜む危うさの暗示。 時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。 第1回谷崎賞受賞。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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