さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記 の商品レビュー
平家の没落を描かれて…
平家の没落を描かれている話。激動の世であったはずなのに、淡々と主人公の視点から語られている。そこが、読んでいてつらく思った。
文庫OFF
伊坂幸太郎編の短編集の中に井伏鱒二の「休憩時間」があり、そういえば、「山椒魚」と「黒い雨」以外読んだことなかったなあ、と、名前は有名な「ジョン万次郎漂流記」を読んでみた。 司馬遼太郎の作品にジョン万次郎はしょっ中登場するけれど、彼を主人公にするとまた違った物語りに感じた。 漂...
伊坂幸太郎編の短編集の中に井伏鱒二の「休憩時間」があり、そういえば、「山椒魚」と「黒い雨」以外読んだことなかったなあ、と、名前は有名な「ジョン万次郎漂流記」を読んでみた。 司馬遼太郎の作品にジョン万次郎はしょっ中登場するけれど、彼を主人公にするとまた違った物語りに感じた。 漂流者は5人いた訳だが、ジョン万次郎だけが、抜きん出て語学を習得出来て、観察眼に優れていたのは何故か。シンプルに、若く知的好奇心が強くかつ地頭がよかったんだろう。 語学の面では、後に続く者は大量にいただろうから、やがて相対的な価値は落ちていったのだろうが、あの時日本にジョン万が出現した、ということは奇跡のような出来事だと思う。 正しいときに正しい場所にいることの難しさと、そうなった時のダイナミズムを感じる作品だった。
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「さざなみ軍記」は読んでいる時はなんだかやけに淡々とした話が続くなあ、と言う感覚だったのだけど、解説を読んで足かけ9年かけて少しづつ発表して主人公の成長を描こうとした作品だったと知ってなるほどと納得がいった。それにしてもそれだけ長い期間かけて割と短い期間7月から3月までの必ずしも...
「さざなみ軍記」は読んでいる時はなんだかやけに淡々とした話が続くなあ、と言う感覚だったのだけど、解説を読んで足かけ9年かけて少しづつ発表して主人公の成長を描こうとした作品だったと知ってなるほどと納得がいった。それにしてもそれだけ長い期間かけて割と短い期間7月から3月までの必ずしもクライマックスがあるわけでもない作品を淡々と書くのもなかなか。 「ジョン万次郎漂流記」はとても面白く読めた。数奇な運命というしかないけど、どこまでが史実でどこまでが井伏鱒二の創作なのかはわからない。もちろん基本的な出来事は実際の記録に基づいているのだろうけど小説的なセリフや行動は登場するアメリカ人たちの振る舞いが井伏鱒二的な鷹揚さを感じさせて良い。昭和12年の作品ということはまさに戦争に進んでいく日本でこのような作品が描かれて直木賞も受賞していたわけで、何となくの感慨がある。 「二つの話」は実験的な小説を手元にある材料で作ってみようとしたけどオチはつけられなかったというかんじ。二つのエピソードはそれぞれ面白いんだけどね。
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『ジョン万次郎漂流記』のみの感想。 幕末から明治初期にかけての実在の人物についての小説。資料にない部分は井伏氏の空想で補われている。 冒険譚として非常に面白かった。 土佐で貧しい漁師だった万次郎は15歳の時の正月に他の四人とともに漁船に乗っていて、嵐に会い、一週間ほど漂流し...
『ジョン万次郎漂流記』のみの感想。 幕末から明治初期にかけての実在の人物についての小説。資料にない部分は井伏氏の空想で補われている。 冒険譚として非常に面白かった。 土佐で貧しい漁師だった万次郎は15歳の時の正月に他の四人とともに漁船に乗っていて、嵐に会い、一週間ほど漂流した。 ようやく周囲が一里ばかりの無人島に到着し、そこを当座の棲家とした。彼らは島でただ一箇所岩の窪みに水が溜まっている所だけを“井戸”として大切に使い、あほう鳥を取って食べるなどして命を繋いでいたが、それも限界に達した頃、そばを通りかかったアメリカの漁船に助けられた。 身振り手振りでかなり言葉が通じ、そのアメリカ人たちは万次郎たちに大変親切にしてくれた。 ハワイのオアフ島で5人は上陸し、4人はそのままオアフ島に残り、生活の保護まで受けて不自由なく、暮らしたが、万次郎だけはホイットフィールド船長に大変気に入られたので、そのままジョン・ホーランド号に乗り続け、太平洋を横断しながら捕鯨し、やがて、アメリカのマサチューセッツに上陸し、船長の家族と共に暮らすことになった。 アメリカで万次郎は学校にいかせてもらったり、農耕牧畜の余暇に読書したり、測量を教わったりして、教養を身に着けた。また、捕鯨船に乗り組んで、アフリカやインドのほうまで捕鯨に行ったり、一人カリフォルニアまで銀の採掘に行ったりもした。 立身出世する人というのは、いつの時代でも、どんな場合でもやることが違うのだなと感心した。面白かったのは、万次郎が捕鯨船で世界を回っているとき、2回くらい、日本の船と出会っているのに、その時は言葉が全然通じていないのだ。アメリカの船に助けられた時にはあんなに言葉が通じたのに、いくら万次郎の土佐弁とその時出会った船に乗っていた日本人の方言が違うといっても、心の問題なのだな。 何年かたち、ある時、万次郎はハワイに行って、昔一緒に漂流した仲間を訪ねる。一人は病死してしまっていたが、あとの3人は元気に働いて暮らしていた。日本へ帰る相談をし、一人はハワイに残ると言ったが、万次郎を含むあとの三人は中国へ行く商船に乗せてもらい、日本の近くで下ろして貰ってそこから小舟で自分たちで上陸する計画を立てた。大変危険な計画だったが果たしてそれは成功し、万次郎達は沖縄の島の一つに上陸出来た。 一通りの取り調べを受けたが、アメリカのことや英語を知っているということで、薩摩藩主らに気に入られ、やがて日本に黒船がやって来たころ、通訳として江戸に呼ばれた。その後、捕鯨、造船、測量の分野などで活躍し、福沢諭吉や勝麟太郎らとともに咸臨丸に乗ってサンフランシスコにも渡った。晩年には開成学校で英語教授をした。そして、アメリカに行って、恩人ホイットフィールド船長にも会うことが出来た。 初めに漁船が漂流した時には生きていたことだけでも奇跡であったのに、その後はなんと運が良かったのだろう。勿論、運を引き付けるものを万次郎たちは持っていたのだろうが、鎖国時代で、しかも日本がアメリカに武力を見せつけられて脅される少し前に、万次郎たちが出会ったアメリカ人たちはなんといい人たちだったのだろう。ファンタジーかと思うくらい素晴らしかった。 この小説が発表されたのは、昭和12年、日米間が険悪になり始めたころだそうだ。
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「2つの話」はよく分からなかったけれど、残りの2つはとても良かった。 漂流記の方は、調書や文書等ジョン万次郎記念館を思い出しながら読んだため面白かった。こちらはほぼ作者の味付けはなく、ノンフィクションのように感じた。帰国後の国の情勢やジョン万の行動については記念館よりもわかりやす...
「2つの話」はよく分からなかったけれど、残りの2つはとても良かった。 漂流記の方は、調書や文書等ジョン万次郎記念館を思い出しながら読んだため面白かった。こちらはほぼ作者の味付けはなく、ノンフィクションのように感じた。帰国後の国の情勢やジョン万の行動については記念館よりもわかりやすかったように思う。 さざなみ軍記は平家物語に人情味を増やしたような感じ。内容はとても好きで良かったのだが人物が多く名前も覚えづらい、また文体も難しいので読みづらくてもったいない。
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井伏鱒二、優れた作家と思いきやあまりの面白くなさに辟易した。3話の中でも最後の「2つの話」は最低であった。
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表題作に加え、「二つの話」と合わせ短編三つ。「さざなみ軍記」。平家の都落ちの過程で主人公の成長の様子を描いたもの。戦を忌避したい気持ちも窺える。「ジョン万」。実在した人の話だが、資料が少ないので虚構の部分が多いが、それがゆえおもしろい。「二つの話」。過去にタイムスリップするフイク...
表題作に加え、「二つの話」と合わせ短編三つ。「さざなみ軍記」。平家の都落ちの過程で主人公の成長の様子を描いたもの。戦を忌避したい気持ちも窺える。「ジョン万」。実在した人の話だが、資料が少ないので虚構の部分が多いが、それがゆえおもしろい。「二つの話」。過去にタイムスリップするフイクション。2019.12.3
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この小説は、「さざなみ軍記」「ジョン万次郎漂流記」「二つの話」の三作品が収録されています。 「さざなみ軍記」は、平安時代末期から鎌倉時代初期と言いますが、前夜までを平家の某と言う主人公からこの時代を語っています。 「ジョン万次郎漂流記」は、日本史でも少し習っている当時の漁民の一人が漂流して帰国した話です。 「二つの話」は、新井白石の時代の話です。
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確か『黒い雨』でも感じたが、この作家の特徴は見た目はシンプル、意図が濃密に詰まっているところか。 表題作二作ともに、パーツは淡淡としているのだが、退屈させることなく、かつ、主張をさりげなく刷り込んでくる。書かれた時代背景を考えれば、この作家の反骨心と才に一目を置かずにはいられない...
確か『黒い雨』でも感じたが、この作家の特徴は見た目はシンプル、意図が濃密に詰まっているところか。 表題作二作ともに、パーツは淡淡としているのだが、退屈させることなく、かつ、主張をさりげなく刷り込んでくる。書かれた時代背景を考えれば、この作家の反骨心と才に一目を置かずにはいられない。
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「ジョン万次郎漂流記」.そっけないくらいの淡々とした文章で,偶然と時代の流れによって大きく変わってしまった一人の男の人生が語られる.帰国後,幕末から維新にかけての大活躍は,一見したところ,成功した人生にも見えるのだけれど,私には彼の身の丈にあった生き方ではなかったように思えてなら...
「ジョン万次郎漂流記」.そっけないくらいの淡々とした文章で,偶然と時代の流れによって大きく変わってしまった一人の男の人生が語られる.帰国後,幕末から維新にかけての大活躍は,一見したところ,成功した人生にも見えるのだけれど,私には彼の身の丈にあった生き方ではなかったように思えてならなかった. 「さざなみ軍記」.西国に落ちていく,平家の若侍の手記の形をとった小説.読んでいて,気持ちが塞いだ.こちらは星2つ.
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