カラーパープル の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
1983年にピューリッツァー賞を受賞した、黒人女性作家アリス・ウォーカーの渾身の作。 私は‘94年、大学1年の時に大学の講義で出会って初めて読んだ。 アメリカに生まれ、黒人の女性であるというそれだけのために、真実を知らず、男に服従し、何も考えずにただ耐えるだけしか選択肢がなかったセリーが、シャグという”解放された"女性との出会いをきっかけに変わってゆく。 奴隷として連れてこられた黒人の2世・3世は、アフリカがどこにあるかも知らない。 本当のことなど知る必要もないとされていた。 セリーの妹ネッティーは、自らの生き方を選択し、宣教師(の手伝い)としてアフリカへ渡る。 アフリカの黒人と、アメリカから来た黒人との間にも埋めようのない溝がある。 アメリカの黒人は、「我々を白人に売り飛ばした兄弟」と考える。 アフリカの黒人は、アメリカから来た者たちのことを見ようともしない。 無知だったセリーが、シャグを愛することと、ネッティーからとどく手紙から「自ら生きる」ということに目覚めてゆく様は感動に値する。 黒人だから、女だからと価値を認められず、誰にも愛されずにいると、人は何かを知りたいとも「生きよう」とも思えない。 でも愛があれば、愛を知れば、強く「生きたい」と願い、「知りたい」と感じ始める。 私は黒人でもないし、女だけど女だからと蔑視されたことはあまりないけど、この壮大なストーリーには一人の人間として深く感動します。
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「風と共に去りぬ」を面白く読んでいる限り、当時の黒人社会が苦しんだ魂の叫びはわからない。「マミーやポーク、プリシー」として重要な脇役の黒人たちではあったのだが。 うかつなことに黒人の作家が黒人のおかれている状況、奴隷としてアメリカに売られてきた人たちの精神の苦闘を描いた本は読ん...
「風と共に去りぬ」を面白く読んでいる限り、当時の黒人社会が苦しんだ魂の叫びはわからない。「マミーやポーク、プリシー」として重要な脇役の黒人たちではあったのだが。 うかつなことに黒人の作家が黒人のおかれている状況、奴隷としてアメリカに売られてきた人たちの精神の苦闘を描いた本は読んだことがなかった。しかも、人種、性差と差別の階段を下りていくような小説は初めてであった。 アメリカ南部ジョージア州に住む黒人の姉妹は世間の荒波に出る前、すでに親にもひどい仕打ちうけていた。それはむごいと思うが鬱積した黒人社会には弱いものに向かっていかざるを得ないものがあるのだろう。 前妻の子の世話のため名ばかりの結婚をした姉「セリー」は家出した妹「ネッティ」との音信を糧に生きていた。それも結婚相手の底意地の悪さで封じられてしまうのだが、不屈の魂で人種差別や性差別と闘っていく。なんというエネルギーだろうか!すさまじいというほかない。 むごい、すさまじい血も涙もないと苦しく読み進む。しかし、物語の進行に従ってある感動へ導かれるので救われる。作者の意図は女の、黒人の、先祖が奴隷の苦しみから解き放たれるには何が必要なのか解き明かしたいのだと思う。 新年に読むには重すぎたが、ほんとうに知らなければならないことではあるのだ。 1983年のピュリツアー賞受賞、全米図書賞である。
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初めて読んだジャンルでした。 読みだしたら止まらなく、とても心に残る作品。 主人公と自分を合わせてみると、ポッと心に火が灯りました。
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たまには黒人文学を、と思ったけれど、黒人+女性という蔑視のなかの蔑視を描いたものには、正直胸焼け感がある。この本は、わたしはこんなに辛かった、と悲劇的に差別の現状を嘆くのではなく、二重差別のなかでいかに生きていくかというポジティブな面に目を向けたものだったので、その点が新しく感じ...
たまには黒人文学を、と思ったけれど、黒人+女性という蔑視のなかの蔑視を描いたものには、正直胸焼け感がある。この本は、わたしはこんなに辛かった、と悲劇的に差別の現状を嘆くのではなく、二重差別のなかでいかに生きていくかというポジティブな面に目を向けたものだったので、その点が新しく感じられて最後まで楽しく読めた。黒人女性、さらにレズビアンというセンシティブな問題を扱っていながらも、全体を通じて力強い印象。かなり苛酷な内容含んでいて、こんなことが、と息を呑む場面もあった。翻訳の面でちらほらよく分からないところがあった気がした。
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女を嫌い蔑み、その実恐れている。愛せなくても愛されたがる。うまくいかないと暴力を振りかざす。そうした男たちが、この物語のなかではまるで障害物のようだった。実際に、「男がぜんぶだめにしちゃうんだ」というような台詞がある。 男たちと対照的に「愛にこたえられる」シャグ。セリーは彼女に出...
女を嫌い蔑み、その実恐れている。愛せなくても愛されたがる。うまくいかないと暴力を振りかざす。そうした男たちが、この物語のなかではまるで障害物のようだった。実際に、「男がぜんぶだめにしちゃうんだ」というような台詞がある。 男たちと対照的に「愛にこたえられる」シャグ。セリーは彼女に出会い愛を知る。そんなシャグを指して「男らしい」と称した(つもりなのだろう)アルバートに、セリーは「とても女らしいと思うけどね」と言って返す。シャグは繊細で誇り高く強い。最後まで読むと、女たちは皆そうだ。繊細で誇り高く強い。お互いに影響しあい成長を重ねる。男たちはいつでも邪魔をするのだが、その度乗り越えてより結束を強める。結束した女ほど強いものがあるだろうか。 しあわせを作り守るという平和な強さ。登場する女が皆愛おしく、また勇気をくれた。読んでよかった。
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女は、男に従属して生きるのが当たり前の時代の話。 とても昔のようだけれど、現代とあまり隔たりのない頃の話。 主人公の女性は、貧しい黒人で、家族や他人からとても軽んじられている。 ひどく愚かな男に嫁ぎ、人生を諦めている。 その主人公が恋をする。 自分の足で歩き出す。 人間の強...
女は、男に従属して生きるのが当たり前の時代の話。 とても昔のようだけれど、現代とあまり隔たりのない頃の話。 主人公の女性は、貧しい黒人で、家族や他人からとても軽んじられている。 ひどく愚かな男に嫁ぎ、人生を諦めている。 その主人公が恋をする。 自分の足で歩き出す。 人間の強さと脆さと優しさとしなやかさで、 中盤から最後まで、胸がいっぱいになり通しでした。
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アメリカでのかつての黒人差別を描く小説。 差別を題材にしていてもそれの批難よりも、そこから立ち上がる人間の強さみたいなものを強調している辺り爽やかに読み終えられますね。 個人的にはその差別を知ることはできたのですが共感は難しかったです。時代背景とか宗教的な考えとかを理解してい...
アメリカでのかつての黒人差別を描く小説。 差別を題材にしていてもそれの批難よりも、そこから立ち上がる人間の強さみたいなものを強調している辺り爽やかに読み終えられますね。 個人的にはその差別を知ることはできたのですが共感は難しかったです。時代背景とか宗教的な考えとかを理解していないとそこは難しいのでは。
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黒人女性の一生を描いた本。黒人内での男女差別。アフリカ人からかつて奴隷として売られたことと、アフリカに対する思い。主人公セリーは悩み苦しみながらも、友情や愛を支えに精神的自立をします。いやはや大きいよ。女は。
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明るい未来性のある物語の割りにはパッとしなかったような。 見えた黒人社会の歴史には驚きばかり。 精読したい。
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読み終わるまで一気に進んだ。 最初は、主人公・セリーのあまりのひどい境遇に憤りを感じていたけど、セリーの夫の愛人、シャグが現れてから、徐々にセリーが強くなっていく姿に胸をうたれた。セリーは、無理やり結婚させられた夫を愛していない。でも、シャグに強い憧れと尊敬の気持ちを抱くのだ...
読み終わるまで一気に進んだ。 最初は、主人公・セリーのあまりのひどい境遇に憤りを感じていたけど、セリーの夫の愛人、シャグが現れてから、徐々にセリーが強くなっていく姿に胸をうたれた。セリーは、無理やり結婚させられた夫を愛していない。でも、シャグに強い憧れと尊敬の気持ちを抱くのだ。シャグからも愛されて、セリーは自分をとりまく環境と闘い、自立していく。愛の力は偉大だ。 この物語は、力強くて気も強く、周囲と闘う女性とは対照的に、強がっているが実は内気で、料理や裁縫などの家事が得意な男性が多く登場する。でもそういう男性も、妻である女性が自分の言うことを聞かないと、自分に服従させようと、暴力を使って躍起になるのだ。セクシャリティだけじゃなく、ジェンダーにもちょっとだけ触れているところが面白い。 1900年代初頭のアメリカを舞台にした黒人女性が主役の物語ということで、トニ・モリスンみたいな物語かなあと思っていたけど、終わりはハッピーなのでほっとできる。こんなうまくいくわけないじゃん、という意見もあるだろうけど、たしかにかなりの大円団だけど、とってつけたようなわざとらしさはないので、いいんじゃないでしょうか。
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