1,800円以上の注文で送料無料

アンダーカレント の商品レビュー

4.2

82件のお客様レビュー

  1. 5つ

    30

  2. 4つ

    28

  3. 3つ

    10

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2026/04/14

この作品、他者へのイメージの投影と知ること、思考の放棄っていうのも題材にしていると思いました。そして作者はそれに警鐘を鳴らしているのかな、と。 また、どうしても人は人が一面的ではなく多面的なものということを忘れがちですが、そういうのも物語に組み込んでいると思いました。 まず、...

この作品、他者へのイメージの投影と知ること、思考の放棄っていうのも題材にしていると思いました。そして作者はそれに警鐘を鳴らしているのかな、と。 また、どうしても人は人が一面的ではなく多面的なものということを忘れがちですが、そういうのも物語に組み込んでいると思いました。 まず、主人公のかなえは小さい頃から知ってるはずのサブ爺のことも長く生活を共にした夫のことも新しい従業員である堀のことも調査を依頼した山崎のことも知らないし、深く知ろうとしない。人と会った時には必ず、かなえないしは周りの人が「〜みたい」な人、「〜な」人と言った見た目から来るイメージを投影しています。そして人々はイメージの投影で満足し、他者を知ること、思考を放棄します。 また、かなえ自身も小さい頃に〜な子というイメージを投影されていることから、周りからの評価に沿うような振る舞いをしています。(さなえに対する罪滅ぼし的な同一化ともとれる) これらを物語上に散りばめながら、他者理解とイメージの投影の危険性を訴えているんじゃないかと。 物語の最後にはかなえが他者を自らのイメージで固定することから脱却する第一歩を踏み出します。

Posted byブクログ

2026/02/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

日常生活を淡々と描いている、そこにある激しく噴き出すものが徐々に鎮まっていく。その時間が苦しく切ない。 表紙が美しい。こうして横たわっていられるのは、すでにあらわれた出来事を超えて、激しさなどない世界に住み始めているのだろう。 生活をこなしていくには、時間の起伏を渡っていかないといけない。 夫が突然いなくなっても、急にあらわれて消える男も、一時の流れにしかならない。 何もしないわけではない。夫はなぜどこに消えたのだろう、と思いながら生きている。 謎が解けてみれば、わがままであっても自分勝手であっても、人はただ一日一日を積み重ねて生きていかなくてはならない。 言葉や行為が人を傷つけたり、救ったりしながらでも。 そうして生きることが、庶民の暮らしだと語っている。 心を傷つけあったり、気持ちの騒ぎを抑えて、憎んだり許しあう、はた目から見ればさほどでもない、ありきたりの出来事が、胸に残るようなしっかりとした、静かな筆致で進んでいく、繊細な物語にひかれた。 題名もいい。

Posted byブクログ

2024/07/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

きっとまた読み返したくなる作品 最後、サブじいが堀さんに言ってたことが全てだと思う 人のことを、その心まで完全に理解することはできない。でも、自分のことは分かってもらえないだろう、言ってもなんにもならないだろうと決めつけて、黙って離れるだけで解決することはない。少しでも分かってもらうために、お互いに分かりあうために言葉を交わす。それで分かり合えるとは限らないし、どういう結果になるかも分からないけど、苦しみを内に秘めても身を腐らせるだけ… 悟は本当にかなえが好きだったんだろうな 堀さんが戻ったのが、別れを告げるためではなく、言葉を交わして分かり合おうとするためであって欲しいと思う

Posted byブクログ

2024/04/28

夫が突然蒸発、銭湯を切り盛りするかな。 組合からの紹介で働きたいとやってきた男。 探偵下請けの山﨑が追う、夫の行方。 人のことを本当にわかっているのか?そう、そんなことはわからない。でもわかったような顔をしてしまう。興味を持って聞かないといけないし、興味を持っていることが相手にと...

夫が突然蒸発、銭湯を切り盛りするかな。 組合からの紹介で働きたいとやってきた男。 探偵下請けの山﨑が追う、夫の行方。 人のことを本当にわかっているのか?そう、そんなことはわからない。でもわかったような顔をしてしまう。興味を持って聞かないといけないし、興味を持っていることが相手にとって本当に大切なことなのかもしれない。失ってわかる重さはいつも興味を持っているかどうか、から始まっている。 言いたくても言えなかったんだ、という夫の告白と、働いている男、そして過去の失踪事件がどれも重なり合っていく見事な構成と展開に、ぐっと引き寄せられていく感覚は本当に素晴らしい。心の底をえぐられたような、そんな読後感と救われた感、余韻を感じながら長いこと住んでいる、日本ではない、外国の空を眺めてしまった。

Posted byブクログ

2024/03/22

「自分のことをわかって欲しい」と言えない苦しみ。それは薄っぺらい承認欲求とは違って、本当は自分の心の奥底に沈めたままにしておきたかったものをさらけ出すことへの恐怖があるからだろう。そして、わかってもらおうとすることをあきらめた閉ざされた心は、他人のそれに気づかなかった。夫がある日...

「自分のことをわかって欲しい」と言えない苦しみ。それは薄っぺらい承認欲求とは違って、本当は自分の心の奥底に沈めたままにしておきたかったものをさらけ出すことへの恐怖があるからだろう。そして、わかってもらおうとすることをあきらめた閉ざされた心は、他人のそれに気づかなかった。夫がある日突然何の理由も言わずに失踪してしまう事件をきっかけに主人公が「わかってほしい」と言える気持ちを取り戻そうとする歩みと、それを見守る男たちの物語。男たちと書いたのは、もちろんメインは主人公の経営する銭湯に新しく働きにきた男だが、脇の探偵や近所の爺の果たした役割もまた大きいと思った。おそらくキャラのモデルであろうリリー・フランキーは映画版でまたまた儲け役だったなぁ。

Posted byブクログ

2024/02/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初・豊田徹也 なんだこれ 凄まじい緊張感、迫力が全ページ、どのコマにも満ちている。 シリアスなトーンが通底していながらも、ところどころでコミカルな描写がしっかりと差し挟まれており、それらがシリアスさを中和するのではなく、むしろひとつの雰囲気の醸成に奉仕しているようなのが凄い。 主人公の描き方が良すぎる。 ジェンダーレスでハードボイルド、格好いいのもそうだし、人と改まった形で会うとなった時には「女性的」な身なりをしなければならないことの、なんとも言えない哀愁と切なさよ。 最後、出かける前に口紅を手に取っても結局つけなかったこととか、ビンタすると言ってマフラーをかけてあげることとか、凄まじいとしかいいようがない。 誰も幸せになるわけでもなく、しかし単なる薄っぺらい「鬱」だとか「狂気」とかでもなく、ただただ、そこに常にある暗流を見つめて、それでも生きていくしかないことの弱さと強さをともに感じさせる物語だった。

Posted byブクログ

2023/10/29

映画を観てから。映画がすごく丁寧に作られてたのがこちらを読んでよく分かった。原作を一本の映画を観ているような、と評するものがあったが、確かに。 映画のパンフで、原作のラストは完璧、との監督の言葉があった。でも堀さんが去るのをやめたのかどうかを読者に任されたことよりも、映画の方が良...

映画を観てから。映画がすごく丁寧に作られてたのがこちらを読んでよく分かった。原作を一本の映画を観ているような、と評するものがあったが、確かに。 映画のパンフで、原作のラストは完璧、との監督の言葉があった。でも堀さんが去るのをやめたのかどうかを読者に任されたことよりも、映画の方が良かった。

Posted byブクログ

2023/10/22

面白かったー。 久しぶりに漫画を読んでものすごく面白かった。 少し…と言ってCharaのduca歌えるのとか、いいね☺︎

Posted byブクログ

2022/05/14

人を知ること、それをどんなに求めたところで、どうしても知られたくないことはある。対話や過ごした時間ではどうにもならないとこもある。だから世界はこうなっている。 そんな風に考えてしまうのは、悲観的だろうか。

Posted byブクログ

2023/09/20

物語に大切なものは何かと聞かれたら、その一つに「リズム」と答えたい。著者の作品は初めて読んだけれど、回想や風景の差し込み方は映画的であり、細やかに演出されたリズムに乗って物語に没頭することができた。 大切なものの喪失=不在が、アンダーカレントの姿を明らかにする。痛いほど分かる。再...

物語に大切なものは何かと聞かれたら、その一つに「リズム」と答えたい。著者の作品は初めて読んだけれど、回想や風景の差し込み方は映画的であり、細やかに演出されたリズムに乗って物語に没頭することができた。 大切なものの喪失=不在が、アンダーカレントの姿を明らかにする。痛いほど分かる。再会の場面で語られた悟の言葉は、かなえの苦悩や不安と比べると掴みどころがなく呆気ない。現実もそのようなものかしれない…だからこそ、完璧に理解することは難しくても、相手を分かりたいというその気持ちが尊いのかもしれない。

Posted byブクログ