商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
| 発売年月日 | 2026/03/12 |
| JAN | 9784163920757 |
- 書籍
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貝殻航路
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貝殻航路
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商品レビュー
3.8
5件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
<あらすじ> 北方領土のそばで生まれ、漁師の父に育てられた語り手。よくあることだが、夫が行き先も伝えずに旅に出たため、頻繁に霧が立ち込む釧路に一人で暮らす。孤独を抱える私は幼い頃の父と見た、貝殻島のことを思い出し、その灯台の光は記憶の中では輝いていて——— <感想> 度々霧が立ちこめる街で暮らす語り手。物語の序盤では、たいした娯楽がないといい特に大きな出来事もない日々を暮らしている視点で描かれるためか、読み手側からも何やら薄暗い霧がかかったような雰囲気が感じられる。その雰囲気が感じられる文字たちは私にとって心地よい。読書するときには、その物語の中に入り込む。現実からは逸脱し、身も心もすべてを預けることと成る。それ故、どこか独りよがりになってしまう側面もあるかと思う。だからこそ、作中と同じ霧に包まれることで、同じ空間にいる語り手たちの姿を感じ、冷たいはずのそれからはどこか暖かさを感じる。 灯台の役割は、遠くまで届く光を放つこと。そしてその光を目印に、船は航路を決める。灯台はすべての漁師の味方である。光は私たちの進む道である。自分たちが今まで経験してきたことは、それぞれの胸の中に仕舞われる。思い出す回数なんてたかがしれていても、無意識のうちに保管されている。楽しかったこと、嬉しかったこと、嫌だったこと、絶望を感じたこと。そのどれもが例外なく。私たちは、自らが舵を取る船の行き先を時々わからなくなる。少なくとも語り手がそうであった。夫であるあめみやはどこか遠くへ旅に出て、霧の立ちこめる街に一人で暮らす語り手は、大切なことも嫌だったことも覚えた父の死に直面する。そんな彼女は、かつてその役目として光を輝かせていた貝殻島の灯台を求めた。そして彼女の中には、その大きな光だけでなく、かつての思いが姿を変えた、幾数もの蝋燭のような光を認識した。そして、この経験すらも光へと姿を変え、語り手専用の灯台になってくれるだろう。 読了後、この感想をまとめている時に私の大好きなアーティストであるBUMP OF CHICKENの「sailing day」の一節が頭に浮かんできた。 「誰もが皆 それぞれの船を出す それぞれの見た 眩しさが 灯台なんだ」 この詩が私は大好きで、心に刻んだ言葉として、光り輝く存在として大切にしている。本書に対しても、同じような感情を抱き、この物語も私の中で大切なものとして残り続けると確信した。
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北の地で生まれ、漁師の父はロシアの沿岸警備船に拿捕されて以来、海に出ることはなくなった。 アイヌの血を引く夫は行く先も告げずに家を空けることが多い。 孤独なのか、不安なのか…心の内がわからぬまま義妹とは会う。 淡々と進んでいくのに取り残された感がしないのは、情景が目に浮かぶ...
北の地で生まれ、漁師の父はロシアの沿岸警備船に拿捕されて以来、海に出ることはなくなった。 アイヌの血を引く夫は行く先も告げずに家を空けることが多い。 孤独なのか、不安なのか…心の内がわからぬまま義妹とは会う。 淡々と進んでいくのに取り残された感がしないのは、情景が目に浮かぶからだろうか。 孤独さと寂しさが風景に溶け込んでいて、声は届いてこない。 それは推し量るしかないのかと…。
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『貝殻航路』久栖博季 私は生まれも育ちも札幌だけれど、 釧路や根室には子どもの頃から何度も足を運んできた。 同じ北海道とはいえ、 札幌から6時間、7時間とかかる遠い場所。 大人になってからは自分で車を運転して、 なぜだか引き寄せられるように道東へ向かった。 重く垂れ込める霧...
『貝殻航路』久栖博季 私は生まれも育ちも札幌だけれど、 釧路や根室には子どもの頃から何度も足を運んできた。 同じ北海道とはいえ、 札幌から6時間、7時間とかかる遠い場所。 大人になってからは自分で車を運転して、 なぜだか引き寄せられるように道東へ向かった。 重く垂れ込める霧。 夏でも肌寒いほどの冷たい空気。 潮の匂い。 そして、どこか哀しみをまとった異国めいた気配と、 不思議な拒絶感。 納沙布岬にも幾度となく足を運んでは、 海の向こうの異国の輪郭が見えないかと、 ずっと目を凝らしていた。 そんな馴染みのある空気感が、本作では とても静かな時間の流れのなかで描かれていて、 何度も記憶を揺さぶられ、胸がいっぱいになりました。 ✧ 『貝殻航路』には、 さまざまなモチーフがごく自然に溶け込んでいます。 アイヌ、北方領土、静かに朽ちていく灯台、身近な人の死。 主人公・凪には夫がいるけれど、 その関係は、いわゆる普通の夫婦とは少し違う。 夫はふらりと出かけていき、しばらく戻ってこない。 そのどこか儚さをまとった描写が、とにかく美しいのだ。 「長い睫毛に縁取られて翳りを帯びたまなざしは、 鬱蒼と茂る笹藪の黒々と重なっていく影を思わせ……」(P47) …美しすぎませんか。夫よ。 物語の底を流れているのは、 静かな哀しみなのか、諦観なのか。 この物語を、どう言葉にすればいいのだろう。 ひとつひとつ積み重ねられていく言葉は、 静かに降り積もる雪のようで、 何度も舌の上で転がしたくなるような儚さを帯びていました。 ✧ 実際に、道東のあの独特な空気を知っているのと 知らないのとでは、 受け取るものも少し変わってくる気がします。 物語を閉じたあとも、 道東の冷たい風がしばらく身体に残っているようでした。
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