1,800円以上の注文で送料無料

氾濫する豊饒の海 三島由紀夫 最後の五年間
  • 新品
  • 書籍
  • 書籍
  • 1220-02-17

氾濫する豊饒の海 三島由紀夫 最後の五年間

松本徹(著者)

追加する に追加する

氾濫する豊饒の海 三島由紀夫 最後の五年間

2,970

獲得ポイント27P

在庫あり

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 鳥影社
発売年月日 2025/11/28
JAN 9784867821992

氾濫する豊饒の海

¥2,970

商品レビュー

0

1件のお客様レビュー

レビューを投稿

2025/11/28

自決までの五年間の三島由紀夫の言動を時系列で追う 大東亜戦争の敗北を林房雄は物量の不足としたが、三島は『文明開化の敗北』 —————  最後の檄文は「我々は四年待った。最後の一年は熱烈に待った」である。そしてあの驚天動地の三島事件から五十五年を閲した。 「死後も成長する作家」(...

自決までの五年間の三島由紀夫の言動を時系列で追う 大東亜戦争の敗北を林房雄は物量の不足としたが、三島は『文明開化の敗北』 —————  最後の檄文は「我々は四年待った。最後の一年は熱烈に待った」である。そしてあの驚天動地の三島事件から五十五年を閲した。 「死後も成長する作家」(秋山駿)は世界的な評価を得た。ことしは生誕百年、日本ばかりか世界中で三島関連のイベントが開催され、講演会、追悼会ばかりか文学館で展示会、そしてバレー、演劇、演奏会、映画界と多彩な行事が相継いだ。  本書はさらに前の時代に遡及し(実質的には六年間、三島が三十九歳のあたりから)、その言動と精神の軌跡を克明に追求した労作である。 年譜だけで表面的に三島の思想傾斜を理解していても、その発表時点での作品の背景を、創作ノートや、三島の友人たちの日記や回想記にも、そのうえ裁判記録にも目を通し、作品にあらわれた描写から思想遍歴を重奏的立体的に組み立てていく。推理小説風の筆運びでもあり、評者(宮崎)は、「ああ、そのあのときはそうだったのか」と俄に合点がいくことが多かった。  松本氏は、こう言われる。 「今一度、あの衝撃的な最期へと三島が辿った道筋を、辿ってみよう。(中略)最後の五年間(実際は六年間)に絞って、と思い立ち、批判的言辞も遠慮なく書き込んだのだが、改めてこの作家の大きさ、文字どおり生命懸けの姿勢に驚嘆の思いを深めることになった」。  映画「憂国」の試写会は巴里でもおこなわれ、三、四百名があつまって称賛した。「英霊の声」は昭和天皇の人間宣言をつよく意識し、「怨念の激情が前面に押し出され、小説作品としてはやや粗いとも思われる面も帯びる」(母倭文重の回想)。  松本氏がまとめる。  「三島がこの作品で正統性を主張する思想的立場は、幕末において強く押し出された、もっぱら水戸学あたりが中心になって初期から継承してきた、絶対的神秘性、正統性に基づくと思われる。そうして日清・日露の戦争を経て明治も四十四年(1911)になり、大逆事件とも絡んで議論された南北朝正閨論争によって、おおよそ定められたのである。ただし、この議論には致命的難点があった。なにしろ正統とする『南朝』は、早く絶え、明治天皇は『北朝』に属した」(65p)  大東亜戦争の敗北を林房雄は物量の不足によるとしたが、三島は『文明開化の敗北だ』として譲らなかった。 三島は「天皇は『西欧化を代表』するとともに、一方では『純粋な日本の最後の拠点』となる『使命』を帯びていた。ところが二二六事件を昭和天皇は『西欧派の政治理念』によって裁き、『神風連の二の舞』になったしまった。そのため、『日本の改革の原動力』は、必ず『極端な保守の形』でしか現れず、その結果、西洋文明摂取による『積弊』はいつまでも除去されず、本来の『近代化』ができない」(102p)と指摘した。  三島は『日本文学小史』において和漢朗詠集をとりあげ、大津皇子の辞世を高く高く評価した。それは、  「百伝ふ 磐余の池に鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ」  三島はこの辞世を「事敗れた英雄が死に臨んだ絶命詞としては詩に」、「心優しい詩人のこの余の自然に対する訣別の表明として』、『外来の詩的形式と国風の詩的形式を感慨の性質に応じてつかいわけた』と評価した。 松本氏は、まさにこの詩が「すでに死を決して日々を過ごす三島自身の思い」に繋げるのである(328P) (C)有限会社・宮崎正弘事務所 2025

Posted by ブクログ