商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 共立出版 |
| 発売年月日 | 2025/06/25 |
| JAN | 9784320096820 |
- 書籍
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オークション理論
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オークション理論
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商品レビュー
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魚や果物といった生鮮品からアート作品、果ては国債や携帯電話の周波数まで、あらゆる品物がオークションで取引されている。オークションに参加する買い手は競争相手の出方を頭に入れつつ、できるだけ安く品物を競り落としたいはずだが、入札額を低く抑えれば落札に失敗するリスクが高まる。では、買い...
魚や果物といった生鮮品からアート作品、果ては国債や携帯電話の周波数まで、あらゆる品物がオークションで取引されている。オークションに参加する買い手は競争相手の出方を頭に入れつつ、できるだけ安く品物を競り落としたいはずだが、入札額を低く抑えれば落札に失敗するリスクが高まる。では、買い手にとって「最適な入札戦略」はどのようなものなのか。こうした問題について、ゲーム理論(やメカニズム・デザイン)の枠組みを用いて分析する分野を「オークション理論」という。オークション理論がカバーするテーマは買い手の入札戦略だけではなく、売り手の立場から見たオークション収益が最大化される条件や、オークションの形式と収益の関係など、多岐にわたる。 タイトルが示すとおり、本書はオークション理論の教科書である。難易度は学部上級から大学院レベルで、この分野で定評あるKrishna, V. (2009) Auction Theory, Second Edition(初版の邦訳が2018年に出版されている)より少し易しい。数学モデルを定義した上で定理を示し、証明を余さず書き下していく本書のスタイルは、オークション理論を数学的にきちんと理解したい学習者にとって非常に有益である。表紙の裏にある、「理系学生にもわかる」という謳い文句に偽りはない。 日本語で読めるオークション理論の教科書はほかにもあるが、上記の点を別にしても、本書には類書にない2つの特徴がある。 第1に、本書で取り上げられたテーマは幅広く、総合評価オークション(スコアリングオークション)や複数財オークションの解説にも多くのページが割かれている。総合評価オークションは実際の公共調達をモデル化したもので、工事の請負事業者を選ぶにあたり、請負金額だけでなく、工事の完成度や納期を考慮したオークション形式である。複数財オークションは文字通り、2つ以上の品物を同時に売り出すオークションで、実社会でも多くの場面で実装されている。検索エンジンの検索結果に連動した広告枠や、携帯電話の周波数帯などは、複数財オークションの興味深い実例で、こうした財を売却するためのオークションの理論的基礎について、本書は10—12章でかなり詳しく解説している。 第2に、議論が込み入りそうなトピックでは、買い手の人数や「タイプ」を限定し、モデルを単純化して議論を進めるといった、学習者の理解を促すための工夫がある。たとえば、共通価値オークション(5章)を解説するために、財の価値が入札者のタイプの加重平均である状況に限定したり、総合評価オークションや証券契約オークション(7章)を解説するために、入札者のタイプがある範囲に一様分布する場合に焦点を当てることで、議論の要点が非常に分かりやすくなっていると感じる。本書は、厳密な数学的な議論とモデルの簡単化のバランスに長けている。 ひと通り読み終えて思うのは、本書は、非常に丁寧に書かれたオークション理論の教科書だということだ。このように充実した内容の教科書が日本語で読めるのは非常にありがたく、多くの読者の目に触れてほしいと思う。定理の証明まで追いながら本書をじっくり読めば、オークション理論の基礎について勉強したと読後に自信を持って言えるだろう。
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