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日本幼児史 子どもへのまなざし 読みなおす日本史
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日本幼児史 子どもへのまなざし 読みなおす日本史

柴田純(著者)

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日本幼児史 子どもへのまなざし 読みなおす日本史

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 吉川弘文館
発売年月日 2025/05/26
JAN 9784642078092

日本幼児史

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2025/11/18

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Posted by ブクログ

2025/06/15

この文書は、日本の歴史における幼児観の変遷を江戸時代以降の史料に基づいて考察した学術研究です。主要なテーマは「七つ前は神のうち」という俗説の現代的誤解を解明し、実際の歴史的背景を明らかにすることです。 **研究の問題提起と立場**では、従来の幼児研究が現代の視点から歴史的事実を...

この文書は、日本の歴史における幼児観の変遷を江戸時代以降の史料に基づいて考察した学術研究です。主要なテーマは「七つ前は神のうち」という俗説の現代的誤解を解明し、実際の歴史的背景を明らかにすることです。 **研究の問題提起と立場**では、従来の幼児研究が現代の視点から歴史的事実を解釈している点を批判し、江戸時代における子どもに対する社会意識の実際の変化過程を明らかにすることを目的としています。チェンバレンやフロイスといった外国人観察者の記録から、日本の乳幼児に対する「無親疎(無関心)」や、子どもが親の監督なしに自由に過ごす様子が「神のうち」という信仰と結びつけられていたことが示されています。しかし本書は、この「七つ前は神のうち」俗説が近代の民俗学者によって普及され、十分な史料的裏付けなしに乳幼児への無関心の根拠とされてきた問題を指摘します。 **法制度における幼児の位置づけ**について、律令制から江戸時代の服忌令まで詳細に検討されています。律令では七歳未満の者は犯罪を犯しても刑罰を負わず、服忌令では幼い子ども(特に七歳未満)の死に対する服喪期間が極めて短いか全くないことが規定されていました。紀州藩の服忌令では生後30日未満の死児に服忌なし、七歳未満には「喪に力もなし」として服喪の義務や能力がないと認識されていました。これらは、幼い子どもがまだ完全な法的責任能力を持たない「無責任能力者」として、大人とは異なる「他者」として扱われていたことを示しています。 **幼児観の歴史的変化**では、古代・中世の「疎外」から近世の「保護」への転換が論じられています。古代・中世では高い乳幼児死亡率を背景に、子どもは「異界からの客」と見なされ、「間引き」も生業や人口維持の文脈で理解される現象でした。しかし江戸時代に入り「家」と「村」が社会単位として確立すると、子どもは家族の一員、村の構成員として明確に位置づけられ、寺子屋の普及とともに地域共同体における保護が積極的に行われるようになりました。捨子問題においても、寺社による保護や養育費支給など、地域社会が子どもの保護に積極的に取り組む仕組みが確立されました。 **「七つ前は神のうち」俗説の再検証**では、この表現が伝統的俗信そのものではなく、近代に民俗学者や思想家によって新しい幼児観を形成する過程で意味づけられたものであることが明らかにされています。地域ごとの史料検証により、「神のうち」という表現が地域によって異なる意味合いで使われ、単に幼い子どもを指す表現に過ぎない場合もあったことが示されています。本書は最終的に、この俗説が幼い子どもを大人とは異なる性質を持つ存在として自然な成長を見守るという「放任的」な幼児観を示していたと結論づけ、これが近代的な「保護」とは異なる前近代日本特有の幼児観であったと説明しています。 補論として検討された「産養」についても、新生児の誕生を祝うものではなく、出産後の産婦の心身回復と慰労を目的とした儀礼であり、「穢れ」を清めて産婦が社会生活に戻るためのプロセスとして機能していたことが明らかにされています。このように本書は、日本の幼児観が「天次の人(神聖な存在)」から「人次(人間的な存在)」へと変化し、工業社会の到来とともに子どもの保護が家族や個人の問題から地域社会や国家レベルの社会問題へと移行した歴史的過程を、豊富な史料に基づいて体系的に論証した重要な研究です。

Posted by ブクログ