1,800円以上の注文で送料無料

人間にとって神話とは何か 宗教のきほん
  • 新品
  • 書籍
  • 書籍
  • 1215-04-12

人間にとって神話とは何か 宗教のきほん

平藤喜久子(著者)

追加する に追加する

人間にとって神話とは何か 宗教のきほん

1,870

獲得ポイント17P

在庫あり

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 NHK出版
発売年月日 2025/05/23
JAN 9784140819944

人間にとって神話とは何か

¥1,870

商品レビュー

0

1件のお客様レビュー

レビューを投稿

2025/06/15

この書籍は、フランスの画家ポール・ゴーギャンの名画「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を起点として、神話が人類の根源的な問いに答える普遍的で不可欠な存在であることを探求しています。神話は特定の文化に限定されず、人間存在の根本的な疑問に対する「根源的なルー...

この書籍は、フランスの画家ポール・ゴーギャンの名画「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を起点として、神話が人類の根源的な問いに答える普遍的で不可欠な存在であることを探求しています。神話は特定の文化に限定されず、人間存在の根本的な疑問に対する「根源的なルーラー」として機能し、メソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」から日本の「古事記」「日本書紀」まで、世界各地の文献に記録された多様な物語を通じて、人類共通のテーマを扱ってきました。 神話における神の描かれ方は、それぞれの文化の世界観を反映しています。ギリシャ神話では、ゼウス、ポセイドン、ハデスがそれぞれ空、海、冥界を支配するオリンポスの神々として人間的な感情を持って描かれ、北欧神話では宇宙樹ユグドラシルによって繋がれた九つの世界の階層構造の中で、ラグナロクという終末まで予言されています。一方、日本神話では高天原、葦原中国、黄泉国の三層構造において、神々は山や川などの自然物に宿るアニミズム的存在として表現され、「八百万の神」として人間と同じ世界に住まう身近な存在として捉えられています。神仏習合により、六世紀以降は仏教の影響を受けて神像として造形されるようになりました。 神話が伝える主要なテーマとして、世界の創成と英雄の活躍が挙げられます。創成神話では、最初の両親が世界を生む型(ギリシャのガイアとウラノス、日本のイザナギとイザナミ)、海から大地を持つくる「アースダイバー型」(ポリネシアのマウイ、日本の天沼矛の物語)、巨人の死体から世界をつくる型(北欧のユミル、インドのプルシャ、中国の盤古)という共通パターンが見られます。また、火の起源(ギリシャのプロメテウス、日本のイザナミとカグツチ)、食べ物の始まり(日本のオオゲツヒメ)、人間の創造と死の始まり(「バナナ型の死の起源神話」、日本のコノハナサクヤヒメとイワナガヒメ)といった普遍的テーマが、文化を超えて語り継がれています。 神話と歴史の関係については、単純に無関係とは言えない複雑さがあります。ハインリヒ・シュリーマンによるトロイア遺跡の発掘は、ホメロスの叙事詩が歴史的事実の根源を持つ可能性を示しました。朝鮮半島の檀君神話や日本の「古事記」「日本書紀」のように、神話は民族の起源や支配の正統性を語る政治的・教育的機能も担ってきました。神話を自然現象や道徳的教訓の象徴として解釈するアレーゴリズムと、歴史的事実の歪んだ記録として解釈するエウヘメリズムという二つのアプローチがあり、神話と歴史の境界線は時代や社会状況によって変化し続けています。 深層心理学の発展は神話研究に革新的な視点をもたらしました。フロイトの「無意識」の発見により、神話は人類の集合的な夢として理解され、「エディプス・コンプレックス」のような普遍的心理的葛藤が反映されているとされました。ユングはさらに「集合的無意識」の概念を提唱し、「グレートマザー」「永遠の少年」「老賢者」といった元型(アーキタイプ)が神話を生み出すとしました。日本のスサノオが衝動的な問題児から成熟した英雄へと成長する物語は、個性化の過程を示す例として解釈できます。ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」理論は、異文化の英雄神話に共通する「分離」「通過儀礼」「再生」のパターンを示し、これは現代の「スター・ウォーズ」のような作品にも応用されています。 神話は過去の遺物ではなく、現代においても新たに創造され続ける生きた文化的表現です。十九世紀のワーグナーの「ニーベルングの指環」から現代の「スター・ウォーズ」まで、神話的モチーフは時代精神を反映しながら再解釈されています。近年では従来の男性中心的英雄像に加えて女性の英雄が描かれるなど、ジェンダーの視点からも神話は進化しています。神話は「我々はどこから来たのか」という根源的な問いに対する人間の答えとして、世界の始まり、生命の起源、死の意味といった普遍的テーマを扱い続け、現代を生きる私たちが自分と世界を理解するための永続的な手がかりを提供し、人間の心を豊かにし続けているのです。

Posted by ブクログ