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読史再論-「東洋史」の現在- 逼塞する近代史研究
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読史再論-「東洋史」の現在- 逼塞する近代史研究

佐藤公彦(著者)

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読史再論-「東洋史」の現在- 逼塞する近代史研究

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 青娥書房
発売年月日 2025/05/07
JAN 9784790604051

読史再論-「東洋史」の現在-

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2025/06/13

本書は、佐藤公彦氏による『読史再論—「東洋史」の現在—涵養する近代史研究』であり、東アジアの近現代史研究の現状と課題を多角的に考察することを目的としています。著者は、既存の歴史認識を問い直し、より深く多角的な視点から歴史を理解することを目指しており、その内容は、日中戦争期の文化交...

本書は、佐藤公彦氏による『読史再論—「東洋史」の現在—涵養する近代史研究』であり、東アジアの近現代史研究の現状と課題を多角的に考察することを目的としています。著者は、既存の歴史認識を問い直し、より深く多角的な視点から歴史を理解することを目指しており、その内容は、日中戦争期の文化交流、明清史研究の変遷、歴史上の人物像の再評価、そして現代の領土問題といった多岐にわたるテーマを扱っています。全体を通じて、本書は国家やイデオロギーに偏らない「読史再論」の実践を促し、複雑な東アジアの歴史を正確に把握し、建設的な国際関係を築くための学術的貢献を求めています。 戦時下の言論と国際交流の苦悩:日中・国際ペンクラブ 本書の重要なパートの一つは、日中戦争(「支那事変」)期における日本ペンクラブ、中国ペン、および国際ペンクラブの関係性に関する詳細な分析です。日本ペンクラブは1935年に、中国ペンは1930年に設立され、両者は国際ペンと連携し、文化交流を試みましたが、日中間の政治的緊張の高まりとともに交流は極めて困難になりました。国際ペンクラブは和平への仲介を試みましたが、「支那事変」をめぐるイデオロギー的・感情的な対立は深く、言論の自由を追求するペンの活動を著しく制約しました。この章は、戦時下の知識人交流の困難さ、および国際的な文化団体が直面した政治的現実を鮮やかに浮き彫りにしています。 明清史研究のパラダイムシフト:「郷紳論」から「地域社会論」へ 本書は、明清史研究における**「郷紳論」から「地域社会論」への学術的転換にも深く光を当てています。吉尾寛氏の『地域社会をめぐる議論』を重要な参照点とし、従来の「郷紳論」が郷紳を寄生的な存在として捉えたのに対し、「地域社会論」は、に注目し、より実証的なアプローチを提唱したことを詳述しています。これは、国家中心的な歴史観から脱却し、を示しており、経済史と一般史の融合、そして単一の原因論を超えた多角的な分析の重要性**を強調するものです。 「英雄史観」批判と歴史解釈の深層:近現代中国史人物像の再考 さらに、本書は**「英雄史観」という歴史像の復活**を批判的に検討しています。岡本隆司氏の李鴻章、袁世凱、曽国藩に関する三部作を評価しつつも、歴史上の人物を単純な「英雄」や「悪人」として描くことの危険性を指摘しています。著者は、複雑な歴史的事象や人物を多面的に捉え、その「価値」を客観的に評価することの重要性を強調しており、これは単なる経済的決定論や西欧中心主義的な歴史観を超え、東アジアの歴史をより深く、多角的に理解するための試みでもあります。また、著者の翻訳書『胡適伝』に関する学術的な書簡のやり取りも収録されており、学術論争の重要性と歴史解釈の難しさを示しています。 現代的課題への歴史的視座:尖閣列島紛争と「読史再論」の意義 最終章では、現代の日中関係における喫緊の課題として、尖閣列島(Diaoyu Islands)をめぐる紛争が取り上げられ、特に中国の歴史学者の視点から考察されています。この章は、歴史認識とナショナリズムが現代の紛争に与える影響を分析し、歴史問題解決のための相互理解と対話の必要性を訴えています。本書全体を通じて、著者は、国家やイデオロギーに偏らない**「読史再論」の実践を促し、を正確に把握し、より建設的な国際関係を築くための学術的な貢献**を求めています。

Posted by ブクログ