商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 柏書房 |
| 発売年月日 | 2025/04/28 |
| JAN | 9784760156030 |
- 書籍
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日本とロシア 忘れられた交流史
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日本とロシア 忘れられた交流史
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シュラトフ・ヤロスラブ著『日本とロシア〜忘れられた交流史』を読みました。奈倉有里さんの書評で本書のことを知りました。著者はロシア近現代史・国際関係史の研究者で、十数年来、日本の大学で教えている方です。 専門家である著者が、私たち一般読者向けに、日本とロシアの交流史のいわば「...
シュラトフ・ヤロスラブ著『日本とロシア〜忘れられた交流史』を読みました。奈倉有里さんの書評で本書のことを知りました。著者はロシア近現代史・国際関係史の研究者で、十数年来、日本の大学で教えている方です。 専門家である著者が、私たち一般読者向けに、日本とロシアの交流史のいわば「ガイドブック」を目指して書き上げたのが本書です。平易で読みやすい文章がいいです。豊富なビジュアルが理解を深めてくれます。全37回の講義のような章立てになっています。各章およそ8ページくらいで予備知識がなくてもほぼ理解できる。わかりやすく伝えようとする著者の工夫を随所に感じる本です。 本書の対象は日本とロシアの人的交流が始まった17世紀からロシア帝国が崩壊する1917年まで。現在までの400年に及ぶ交流史のうち約300年が対象です。「ジェットコースターように激しく上下左右に揺れながら」「逆転を繰り返した」日本とロシアの交流史を色とりどりの具体的なエピソードを取り上げつつ描いています。関係する様々な人の「動き」や「顔」が浮かんでくるようです。 日本とロシアの交流のきっかけは日本人漂流民の存在です。昔読んだ小説や教科書などで概略知ってはいました。でも、これほど多くの漂流民がいたとは!江戸時代末までにロシアへの日本人漂着事件は21件。乗組員数にして251人。記録に残っているだけでこれだけあるといいます。記録の外側にどれほどの漂流民がいたんだろう。思わず想像してしまいます。 ロシアの記録に初めて「日本人」として現れピョートル大帝に謁見した立川伝兵衛。ヨーロッパ初の日本語学校の教師になった宗蔵と権蔵。エカテリーナ2世に謁見し漂流民として初の帰国を果たした大黒屋光太夫・・・本書には多くの漂流民の姿が、ロシアの人々との交流をまじえて、生き生きと描かれています。総じて日本人漂流民がロシア国内で生活を保障されたり手厚い待遇を受けていたことにあらためて驚きました。 第9回『平民による、日本人初の世界一周』が面白い。漂流民としてロシアに漂着した石巻の商船・若宮丸の乗組4名がロシア人とともに初の世界一周の旅に挑んだのです。初めて知りました。1803年7月ロシアのクロンシュタット港を出発。コペンハーゲン、カナリア諸島、南米大陸最南端のホーン岬から太平洋へ。マルキーズ諸島を経てサンドイッチ諸島へ。1804年9月に長崎に入港。ロシア人と日本人が互いに初の世界一周の航海を共にしたのです。ロシアが列強に伍していこうとする国策として実行した世界一周航海。加えて、その航海には、漂流民を無事に日本に送りとどけるという目的がありました。そうした人道的な対応で、日本との通商交渉の端緒にしたいと望む、ロシアの狙いが背景にあったわけですが。 日本の開国をめぐる各章を興味深く読みました。第16回『日本開国前夜の極東政策』から第19回『日露国交樹立』まで4章にわたって描かれています。アメリカを筆頭に列強各国との競争やクリミア戦争などグローバルな状況を背景に、日本への対応の基本がロシア国内でいかに形作られてきたかがよくわかります。1853年8月、ロシア全権プチャーチンがペリーに1ヶ月半遅れて長崎に来航。開国交渉にあたって「交渉と平和的手段のみで達成するよう尽す」を基本政策にしたロシアの対応は、武力行使も辞さないアメリカとは対照的なものでした。そのためにプチャーチンは「うんざりするほど長崎で待たされる」ことになったのですが。 1854年に長崎で、1855年に下田で開催された日露会談の場面が印象深い。日本側全権・筒井政憲と川路聖謨との緊迫感漂う交渉過程とともにプチャーチンのウィット溢れる言葉から和やかな会話が交わされる場面が描かれています。その会談で結ばれた日露和親条約は、アメリカとの条約に比べ、日本に対する不平等な内容が少ない、ある意味「親密な」条約でした。へぇ〜そうなんですね。初めて知りました。 著者は最後に以下の5項目を残された課題としてあげています。①日露両国の板挟みになってきた先住民たちの運命②ロシア文学と日本文学の交流③ロシア極東の日本人ディアスポラ④ロシアから来日した背景が異なる多様な人々⑤ロシア革命の絶大な影響や1917年以降の交流関係。いずれも興味が尽きない内容です。 本書を読んで、その後の「ジェットコースターのように激しく揺れる」日露の歴史と現在の状況に想いを馳せるとき、先人の知恵に学ぶ日本とロシアの未来形を想像したくなります。 残された課題を取り上げる本書の続編を期待したいと思います。
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