マイナス相続サバイバルガイド 人生を棒に振らないためにやっておきたいこと、ぜんぶ

永峰英太郎(著者), 速水陶冶(監修), 大塚英司(監修)

• 販売会社／発売会社: 東洋経済新報社
• 発売年月日: 2025/04/23
• JAN: 9784492047729

商品レビュー

2025/07/24

知らないことがいっぱいでした…
⚪︎親が認知症になる前に、定期預金は解約。生命保険も受取人の変更を。
⚪︎成年後見人制度は結構お金がかかる。
⚪︎不動産の遺産は兄弟トラブルのもと。

2025/05/27

この書籍の中心テーマは「マイナス相続」という概念で、遺産相続への無関心や準備不足が招く様々なリスクを警告し、その回避策を包括的に解説したものです。多くの人が「うちには財産がないから関係ない」と考えがちですが、実際には親の借金の相続、相続税の発生、親族間トラブル、不動産の負動産化など、誰にでも起こりうる問題が潜んでおり、事前の知識と対策が不可欠であることを強調しています。

第一の重要ポイントは、親が認知症になる前の事前対策です。親が認知症になると、金融機関との取引や遺産分割協議書の作成が困難になり、相続手続きが停滞します。このため、親が元気なうちに実印登録やマイナンバーカードの取得、預貯金の暗証番号共有、生命保険の受取人変更、そして最も重要な遺言書の作成を済ませておく必要があります。特に2020年に創設された自筆証書遺言書保管制度により、遺言書の利便性と安全性が向上し、認知症の相続人がいても遺言執行者が単独で手続きを進められるようになりました。

相続税対策については、2015年の基礎控除額引き下げ（3000万円＋600万円×法定相続人数）により、一般家庭でも相続税が課税される可能性が高まっています。主な節税手法として、暦年贈与（年間110万円まで非課税、ただし2024年から相続開始前7年以内は相続財産に加算）、相続時精算課税制度（2024年改正で年間110万円の基礎控除枠新設）、教育資金贈与の特例（1500万円まで非課税）、小規模宅地等の特例（330㎡まで最大80%減額）などが紹介されており、早期の対策開始が重要であることが示されています。

親の借金問題への対処では、相続放棄の重要性が詳述されています。相続人は相続開始を知った時から原則3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行う必要があり、この期限を過ぎると自動的に借金も含めたすべての財産を相続することになります。親が健在なうちに借金の有無を確認し、必要に応じて債務整理（任意整理、個人再生、自己破産）を検討することも重要です。また、相続放棄は相続順位が移動するため、他の親族への影響も考慮して情報共有を行う必要があります。

兄弟姉妹や親族間のトラブル対策として、遺言書の作成時には遺留分（兄弟姉妹を除く法定相続人に保障された最低限の取り分）を考慮する必要があります。不動産の遺産分割では、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割の4つの方法がありますが、共有分割は将来的なトラブルの原因となりやすいため避けるべきです。寄与分や特別受益といった法的概念も理解し、公平な分割を心がけることで、家族関係の悪化を防ぐことができます。

最後に、親の家の相続と売却戦略では、2024年4月から相続登記が義務化されたことを受け、迅速な名義変更が求められています。空き家となった実家については、維持か売却かの判断が重要で、売却する場合は空き家の譲渡所得の3000万円特別控除（2024年改正で買主による解体・耐震改修でも適用可能）を活用することで税負担を大幅に軽減できます。不動産仲介業者との契約では専任媒介契約を選び、事前の相場調査と戦略的な売却タイミングの見極めが成功の鍵となります。