成熟プラットフォームの持続的成長戦略 競争環境下の衰退現象と再成長への着目

木川大輔(編著)

• 販売会社／発売会社: 白桃書房
• 発売年月日: 2025/04/10
• JAN: 9784561267980

商品レビュー

2025/05/04

本書は、かつて市場を支配したプラットフォーム企業、特にユーザー生成コンテンツ（UGC）に依存するソーシャルメディア型プラットフォームが、なぜ競争激化の中で衰退するのかという問いに答えることを目指します。そのメカニズムを解明し、持続的な成長戦略を探求します。

第I部では、プラットフォーム衰退のメカニズムを分析します。ニコニコ動画、クックパッド、ミクシィの事例研究を通じて、衰退は「環境変化（競合登場や技術変化）→プラットフォーム企業による補完者（コンテンツ投稿者）マネジメントの失敗→補完者エンゲージメントの低下→競争力低下」という共通のプロセスを辿ることが示されます。マネジメント失敗の背景には、運営側が既存の成功体験に固執する「認知的慣性」や不適切な同質化戦略により、多様化するユーザーや補完者のニーズ・動機（収益化欲求、動画コンテンツ志向など）を「過小評価」してしまった点があると結論づけられます。

第II部では、単一事業での成長が困難になる中、持続的成長戦略として「多角化」の可能性を検討します。ニコニコチャンネルやpixivの事例から、成功の鍵は、既存のプラットフォーム資源（機能、データ、ブランド等）を有効活用し、新たなサービス分野の補完者の多様な動機（経済的・非経済的）に応える「プラットフォーム境界資源」を適切に設計・提供すること、そして異なるサービスカテゴリー間で相互補完性を生み出す「水平的補完性」を構築することにあると論じます。

結論として、プラットフォーム企業が競争激化の中で持続的に成長するには、環境変化と利用者・補完者の多様性に対応する柔軟な戦略転換、特にプラットフォーム資源を基盤とした多角化が有効な手段となります。その際、補完者エンゲージメントを維持・向上させる戦略設計が不可欠であることが強調されます。