商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 有斐閣 |
| 発売年月日 | 2025/04/01 |
| JAN | 9784641151369 |
- 書籍
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政治行動論 新版
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政治行動論 新版
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商品レビュー
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本書は、代表民主制において重要な役割を担う有権者の政治行動や実態を研究する政治行動論をわかりやすく説明する教科書である。政治行動論について簡潔に俯瞰した日本語の書はあまり多くなく、すらすらと読める簡潔な書きぶりでありながら網羅的である本書はとても貴重な一冊。個人的には、第1章末の...
本書は、代表民主制において重要な役割を担う有権者の政治行動や実態を研究する政治行動論をわかりやすく説明する教科書である。政治行動論について簡潔に俯瞰した日本語の書はあまり多くなく、すらすらと読める簡潔な書きぶりでありながら網羅的である本書はとても貴重な一冊。個人的には、第1章末のコラム2で説明された「社会的望ましさバイアス」(p. 40) や、第2章「有権者の政治知識と判断」の内容は知らなかったし、第3章「党派性とイデオロギー」で説明されたイデオロギー研究の歴史や学派は知識を整理するのに重宝した。ところどころ不足を感じたことはあったが、参照文献の記述がしっかりとあり、読書案内もあるので、これまで雑多に持っていた知識を体系化したうえで次に繋げられるのがありがたい。第9章「選挙制度の影響」では、小選挙区制の欠点として有権者の意見の多様性を拾えなくなる点が強調されていたのは少し気になった。話題はずれるものの、教科書という立ち位置である以上、なぜ日本政治が小選挙区制に移行するという判断を下したのか (中選挙区制における党本部の指導力低下や腐敗可能性) について説明があると、政治に明るくない読者にも親切だと考える。ただし、全体として非常に出来が良く、教科書でありながら有権者の判断の重要性を説く良いメッセージ性もあり、関心のあるいろいろな人におすすめしたい一冊。
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本書は、「有権者は政治を動かせるのか?」という根源的な問いに対し、政治行動論という学問分野の知見と豊富なデータ分析に基づき、現代の代表民主制における有権者の意見(民意)、行動、そして政治への影響力を多角的に検証する入門書です。ストーリー性を重視し、日米の事例を交えながら分かりやす...
本書は、「有権者は政治を動かせるのか?」という根源的な問いに対し、政治行動論という学問分野の知見と豊富なデータ分析に基づき、現代の代表民主制における有権者の意見(民意)、行動、そして政治への影響力を多角的に検証する入門書です。ストーリー性を重視し、日米の事例を交えながら分かりやすく解説されています。 代表民主制と有権者の役割: 現代民主主義の基本である代表民主制では、主権者である有権者が選挙を通じて代表者を選び、政治を委ねます。しかし、有権者が常に自分たちの望み通りに政治を動かせるとは限らないのが現実です。本書は、そのメカニズムと限界を探ります。 民意の実態 (第1章): 政治家が応答すべき「民意」は存在するのか? 福祉や安全保障といった争点に対する有権者の意見分布を分析し、その多様性と、経済的ニーズ、価値観、社会的要因(集団帰属意識など)といった意見形成の背景を探ります。「小さな政府」志向と「大きな政府」志向の対立軸も示されます。世論調査データの正しい読み方にも注意を促します。 有権者の政治知識と判断 (第2章・第3章): 限定的な知識: 多くの有権者は、政治制度や政策について十分な知識を持っているとは言えません。教育程度や年齢、性別による知識量の差も見られます。 ヒューリスティクスの活用: 知識が限られる中で、有権者は効率的に政治判断を下すために「ヒューリスティクス(判断の手がかり)」を用います。 党派性とイデオロギー: 特定政党への心理的な愛着である「党派性」や、政治・社会に対する一貫した考え方である「イデオロギー」(リベラル/保守など)は、最も重要なヒューリスティクスです。これらに基づき、有権者は複雑な政治状況を理解し、支持政党や候補者を選択します。 有権者の政治参加 (第4章・第5章): 投票参加: 有権者は、投票によって得られる利益(政策実現への期待など)と、投票にかかるコスト(時間、情報収集など)を比較して投票参加を決めます。政治知識が多い人、教育水準や年齢が高い人ほど投票率が高い傾向にあります。棄権は、政治家への「無関心」シグナルとなり得ます。 投票選択: 投票に行く有権者は、①支持政党、②政策争点、③候補者の個人的資質、④過去の業績などを基準に投票先を選びます。政策で選ぶには、争点への関心と政党間の立場の違いの認識が必要です。知識が少ない場合は、党派性やイデオロギーが選択を左右します。候補者の資質や現職の業績も重要な判断材料となります。 情報環境の影響 (第6章): 有権者は、**選挙キャンペーン、マスメディア、社会的ネットワーク(家族、友人、SNSなど)**から選挙情報を得ます。 特に、社会的ネットワークを通じた日常的な会話は、メディア以上に投票行動に強い影響を与える可能性があります。 インターネットやSNSは情報アクセスを容易にする一方、エコーチェンバー(同意見ばかりに囲まれる)やフィルターバブル(見たい情報しか見えなくなる)を生み出し、意見の偏りや分断を助長する危険性も指摘されます。 民意と政治の関係 (第7章・第8章): 経済状況: 景気が良いと与党が有利になる傾向(経済投票)が見られますが、有権者が経済状況を正確に把握できているとは限らず、「見せかけの景気」に影響される可能性もあります。政府の経済政策への責任帰属を正しく行うことも重要です。 政策応答性: 有権者の意見(民意)が、どの程度政府の政策に反映されるか(政策応答性)を分析。選挙は民意の「入力」、政策は「出力」と捉えられます。 選挙制度の影響: 小選挙区制は多数派の意見を反映しやすい一方、少数派の意見が切り捨てられがちです。比例代表制は多様な意見を反映しやすいですが、政権運営が不安定になる可能性もあります。日本の分析では、経済政策より外交・安全保障政策で民意と政策の一致度が低い傾向が見られます。 結論:有権者は政治を動かせるのか (終章): 本書の分析によれば、有権者が選挙を通じて政治家の行動を完全にコントロールするという理想的な状況は、現実には多くの制約を受けます。知識不足、情報の偏り、選挙制度の特性などが、民意と政策の間に乖離を生じさせる可能性があります。しかし、有権者が政治を動かす可能性が全くないわけではありません。多数派の意見に対する政府の応答性を高め、代表民主制をより良く機能させるためには、有権者の政治リテラシー向上と、政治家・政党による透明性の高い情報提供、そして責任の所在の明確化が不可欠であると結論づけています。 本書は、政治への参加や投票行動について考える上で、客観的なデータと理論に基づいた重要な視点を提供します。代表民主制の仕組みと現実を理解し、主権者としてより良く政治と関わるためのヒントが詰まった一冊です。
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