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近世藩儒の研究 18世紀龍野藩の事例を中心に
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近世藩儒の研究 18世紀龍野藩の事例を中心に

浅井雅(著者)

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近世藩儒の研究 18世紀龍野藩の事例を中心に

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内容紹介
販売会社/発売会社 ぺりかん社
発売年月日 2025/03/05
JAN 9784831516923

近世藩儒の研究

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2025/04/02

◆ 序章:研究の課題と方法 問題意識:18世紀日本における儒者(藩儒)の社会的位置づけとその制度化の過程に注目。従来は儒者の思想や藩校設立後の制度研究が中心だったが、本書は藩校設立前を含む18世紀全体を対象に、儒者の**「知の専門職」**としての機能を社会的・制度的視点から再評価...

◆ 序章:研究の課題と方法 問題意識:18世紀日本における儒者(藩儒)の社会的位置づけとその制度化の過程に注目。従来は儒者の思想や藩校設立後の制度研究が中心だったが、本書は藩校設立前を含む18世紀全体を対象に、儒者の**「知の専門職」**としての機能を社会的・制度的視点から再評価する。 方法論:播磨国龍野藩の儒者・股野玉川を中心に、一次史料(日記、年譜、藩政文書)を用いて実証的に検討。思想史にとどまらず、教育史・職能史・地域文化論を横断する視点を採用。 ◆ 第一章:諸藩における儒者登用の動向と〈藩儒の家〉の形成 登用の始まり:17世紀末から18世紀にかけて、諸藩で藩政改革の一環として儒者の登用が本格化。最初は藩主個人の師範(侍講)として始まり、次第に制度化される。 制度化と家格化:常勤の儒者が登用され、知行・扶持・職名が与えられる。これにより**〈藩儒の家〉**が形成され、世襲化・家産化していく。 事例分析:龍野藩では股野家や石原家など複数の藩儒の家が並存し、教育・行政面で重要な役割を果たす。 ◆ 第二章:藩儒の就学過程と公務 就学の軌跡:儒者は幼少期から私的教育を受け、江戸・大坂・堺などで遊学し、昌平黌や懐徳堂などで研鑽を積む。股野玉川は林鳳谷、趙陶南らに師事し、幅広い学術的ネットワークを形成。 藩儒の職務: 侍講:藩主・世子・藩士への講義。 家塾運営:藩士・庶民に向けた教育活動(私会・輪講)。 書物の校訂・出版、儀礼・祭礼への参与、意見書(封事)の提出など多岐にわたる。 日記資料の分析:股野の詳細な日記から、日々の公務・学習活動が把握でき、藩儒が日常的に担った「知的労働」の重さが見えてくる。 ◆ 第三章:藩儒の社会的役割と文化的ネットワーク 知のネットワーク形成: 藩内:家老・侍医・藩主近臣などとの交流。 藩外:江戸・大坂・長崎の学者との書簡・紹介・会合を通じて形成された知的ネットワーク。 文化活動と教化: 和歌会・謡曲・祝賀行事・詩会などを主催し、地域文化を牽引。 庶民や町人、女性も巻き込み、学びの「開かれた場」としての会読会や塾活動を展開。 政策参与: 儒学を基に藩政改革や倫理教化に参与し、現実政治と深く関与。 出版活動を通じて道徳の普及・秩序維持を目指す(例:『孝婦鳴盛編』)。 ◆ 終章:本研究の成果と今後の課題 【成果】 藩儒を制度的・実践的に分析することで、思想伝達者としてではなく、地域社会の知的中核としての実像を描出。 龍野藩の例を通じて、18世紀の地方藩でも江戸と連動する学問文化圏が存在していたことを証明。 「知識を世襲し、教化・文化活動を担う家」という観点から〈藩儒の家〉の持続性を検証。 【今後の課題】 他藩との比較研究の拡充。 儒者以外の知識人(医師、蘭学者、国学者など)との比較。 教育政策と学問の継承構造のより広範な分析。 藩儒と現実政治との関係性の深掘り。 ■ 本書の結論的主張 18世紀の儒者は、「教化者」や「知識人」という枠に収まらず、政治・教育・文化を支える制度的知識労働者であった。龍野藩のような地方藩でも、藩儒が果たす多面的な役割とネットワークの広がりは、近世社会における「知の社会的配置」のあり方を示す好例であり、これを基に、儒学史・教育史・文化史を再編成する必要がある。

Posted by ブクログ