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ロシア文学を学びにアメリカへ? 増補版 屋根の上のバイリンガル 中公文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
| 発売年月日 | 2025/01/22 |
| JAN | 9784122076068 |
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ロシア文学を学びにアメリカへ? 増補版
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商品レビュー
3.3
6件のお客様レビュー
簡単に言ってしまえば、1980年代のアメリカ留学体験記なのだが、タイトルにあるように英語だけでなく、ロシア語、ポーランド語、イディッシュ語、そしてフランス語やドイツ語をはじめとするヨーロッパ諸言語を学んだ著者の視野の広さと、様々な人たちとのやり取りを楽しむ機動力が、唯一無二の魅力...
簡単に言ってしまえば、1980年代のアメリカ留学体験記なのだが、タイトルにあるように英語だけでなく、ロシア語、ポーランド語、イディッシュ語、そしてフランス語やドイツ語をはじめとするヨーロッパ諸言語を学んだ著者の視野の広さと、様々な人たちとのやり取りを楽しむ機動力が、唯一無二の魅力を生み出している。沼野先生が話すと、大変なはずの語学の勉強が楽しいように思えてくるのが、不思議。(もちろん、大変で楽しいことなんでしょうが。) 寮での留学生との思い出、多様なルーツを持つ研究者仲間の紹介、街で出会った人たちとのエピソード。どれもこれも印象的で、ここで感想として取り上げるためにどれかを選ぶのは諦めてしまった。そこから導かれるようにして、言語に向かい合う時に気になる話題が次々に俎上に載せられていくのが、痛快だ。元々「翻訳の世界」という雑誌に連載されていただけあって、少し硬めの記述もあるが、気にせずに読めた。 アメリカの中の移民コミュニティ、イディッシュ語という口語としては死滅する危険のある言葉、ジェスチャーや同じ語源を持つ言葉が生んでしまう誤解、人称代名詞の問題、真のバイリンガルとは何か。イディッシュ語とドイツ語の近さとか、シカゴに巨大ポーランド系移民コミュニティがあることなどは、全く知らなかったし。 沼野先生の人との関わりを楽しむ気持ちが全体を通して感じられて、自分も言語習得に少しは前向きな気持ちになれたのはよかった。 (217ページ)一つだけここで言っておきたかったのは、誤解が、取り除こうと努力すれば完全に取り除けるような性格のものではないということ、つまり、誤解とはことによると、コミュニケーションの本質的な一部なのかもしれない、ということだ。人は、正解を追うことに汲々とするあまり、切り捨ててしまっているものの大きさに気づいていないのではないだろうか。少なくとも、正解と誤解が常に相補的なものだ、ということは忘れないようにしたい。 (186ページ)このような考え方を無邪気に押し進めると、言語のタイプと文化のタイプを単純に結び付けようとする俗説に結局つながっていく危険があるし、また差異を強調するあまり、人間としての当然の共通性を見失う恐れもあるだろう。互いの間の溝の大きさを測る作業も大事だが、その前提になっているのは、これほど互いに違っているのに、なんとか理解しあうことができるということを素直に驚くセンス・オヴ・ワンダーではないか。そのことも忘れないようにしたい、ときみは思う。
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※このレビューにはネタバレを含みます
著者の1980年代のアメリカ留学記だ。 そんな昔の? というなかれ。 冒頭、著者も記すように、 「海外で初めて見聞きする移民の姿やマイナー言語のあり方に心ときめかし、おもしろがった経験が本書には刻印されている。本書を支えているそのような若いころの感動は、古びることは無い」 未体験の生活に好奇心を大いに刺激される日々が瑞々しく描かれていた。 ロシア文学者として斯界の重鎮の著者をして、なぜアメリカ留学? と思うが、 「反体制派のソルジェニーツィンや亡命作家のナボコフやブロツキーはソ連では当時読むことさえできなかったのだ」 と、そんな理由を聞かされると、現代のロシア文学を研究しにアメリカに渡るのも頷ける。 ロシア語を中心とした語学を通じて、周辺諸国の言葉、ユダヤ人のイディッシュ語、エスニック・ジョークなど、様々な話題を振りまき、飽きることなく読める。 特に、今なら、下記の記述で、今年(2025)の米アカデミー賞を席巻した映画『Anora』の舞台背景に思いを馳せることができる。 「1970年代にソビエト政府が国内に住むユダヤ人の一部に出国を認めたために起きた現象で、ソ連を出たユダヤ人の多くが最終的にはニューヨーク近郊に流れ着き、特にブルックリンのブライトン・ビーチBrighton Beachという町を中心に一大コミュニティを形成している。」 映画の中で描かれていたアメリカにおけるロシア人の暮らしが、当時の記録ではあるが、裏どりが出来た気分。 巻末の解説が、奈良倉有里というのも頷ける。というか、連綿たるロシア文学研究の伝統が受け継がれていっているように感じられて、良き。
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初出は雑誌「翻訳の世界」(1985年11月号〜1988年1月号)連載「言語街道交差点」で、アメリカ留学からの帰国後ポーランドに渡る前の時期に書いて、記念すべき1冊目の著書「屋根の上のバイリンガル」として1988年筑摩書房から刊行、その後1996年に白水Uブックスに入って、今回「は...
初出は雑誌「翻訳の世界」(1985年11月号〜1988年1月号)連載「言語街道交差点」で、アメリカ留学からの帰国後ポーランドに渡る前の時期に書いて、記念すべき1冊目の著書「屋根の上のバイリンガル」として1988年筑摩書房から刊行、その後1996年に白水Uブックスに入って、今回「はじめに」「ハーバード生活から、三つのエピソード(あとがき)」それにいくつかの章へ「中公文庫版への付記」を書き下ろした増補版。 連載と単行本はまだ高校生の頃、Uブックス入りはたぶん海外にいたときで、ずっとであいそびれてきたらしく、やっとここで出会えた!という感じ。 亡命/越境文学を視野に入れたロシア東欧文学研究という看板を引っ提げてハーバード大学に留学し、ソ連から亡命したロシア人の学者や作家、アメリカ国内に思いの外大勢いるスラヴ系移住者の海に飛び込んだアメリカ体験記。移民の言語事情やイディッシュなど、ときに複雑なテーマを扱っているのに調子よく読めるしおもしろすぎた。「亡命・移住・バイリンガル・多言語使用」だなんて、21世紀のいまこそ改めて読むべきテーマであり、ロシア(スラヴ)界隈に興味があってもなくても得るものはとても多い。かつては「バイリンガル」そのもののイメージや社会評価がそれほど肯定的ではなかったというのも私にとっては発見だったが、バイリンガルの言語能力についての見解など、40年前にもうここまでおっしゃってたのか、と。 それにしても、なんでロシア語にはこういう文才あふれる人(米原万里、黒田龍之介、奈倉有里⋯)が集まるのだろう。 それにしても当時のハーバード大学スラヴ語学科の陣容も教育内容もすごい(当時にしても浮世離れした特殊なユートピアではあったのだろうが)。いま、トランプ政権のあれこれで学術研究の世界もずいぶん口出しされハーバードなど干されかかっているらしいが、どうなるのだろう。あとがきに引かれていた旧知の某亡命ロシア人のことば「これから四年の間に根絶やしにされてしまうほど、アメリカの知的制度はやわじゃないさ」に希望を持ちたいとは思うが…
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