他なる映画と(1)

濱口竜介(著者)

• 販売会社／発売会社: インスクリプト
• 発売年月日: 2024/07/03
• JAN: 9784867840061

商品レビュー

2024/10/27

「他なる映画と」の話し言葉編。
全章素晴らしいものがあるが、特に本書籍のタイトルにもなった「他なる映画と」の講義3回がまとめられた章は、本当に素晴らしい。
特に第3回なんかは、映画を観ることに深みを与えてくれるのはもちろんのこと、演劇がコミュニケーションに役立つように、映画を観ること人生そのものを救ってくれるんじゃないか、何ていう夢想を抱かせてくれるような、心にくるものがあった。
「映画はカメラと被写体とのダンスだ」という言葉はしばらく頭に残っていると思う。

2024/10/27

映画の話をわかる言葉でしてる点で珍しい。映画本は哲学や精神分析、または他の観たことない映画の話を出されて辛いことが多いが、濱口監督は、あくまで当該映画の映像と具体的な編集技法と自分の抱いた違和感をもとに話しているので、映画マニアでなくても読めるし、楽しめる内容になっている。
映画の話をするのに、眠くなるという話から始まるのも面白い。カメラは機械なので、人が関心を持つかどうかに関わらず映像を映し続ける（記録性）。だから拒否をして眠くなる。しかし目覚めて再び映像を見ると、眠る前よりも見られるようになっている。この心地よさ。「他なる映画」というのはこのことを指す。
これに対し、機材やスタッフや演出、編集で変わる印象などのカメラに映らない部分は、観客の想像力を刺激するので、フィクションに向いている（断片性）。記録性と断片性は相反する性質を持つが、その両面の魅力を引き出せるのがよい映画作品だという。そんなことは考えたことがなかったという視点が多い。
本書全体を通じて、この人は本当に映画好きなんだな、仕事に真摯に向き合っているんだなという印象を持った。

2024/10/22

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