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エル・スール 新装版
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エル・スール 新装版
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商品レビュー
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あまりに寡黙で、他者に心を閉ざしたまま亡くなった父親のことを回想する少女アドリアナ。あの人は何を見聞きし考えていたのか、あの人にはどのような過去があるのか--偉大なようで卑小でもあり、“魔術師”のようで凡人でもあった亡父への語りかけが生み出す、アドリアナと父親二人きりの空間。一...
あまりに寡黙で、他者に心を閉ざしたまま亡くなった父親のことを回想する少女アドリアナ。あの人は何を見聞きし考えていたのか、あの人にはどのような過去があるのか--偉大なようで卑小でもあり、“魔術師”のようで凡人でもあった亡父への語りかけが生み出す、アドリアナと父親二人きりの空間。一人称による文体がかつて確かに存在していた何かを紡ぐが、それは単なる懐古ではなく批判や慰撫のように感じた。不思議な読み心地だ。 展開が一部異なるというVíctor Erice監督の映画版も味わってみたい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ビクトル・エリセ氏の映画『エル・スール』の原作小説というよりは、一部設定が共通したまったく別の物語という趣の小説でした 映画と小説をどちらも鑑賞することで、双方の理解深度が高まる…ということはない だから良かった(皮肉ではなくそう思う) どちらの作品も根底にあるのは、分からないことや届かないこと、断絶と喪失の物語だから むしろこの小説の見所は、作者が女性であることから来るものなのか、娘アドリアナ(名前はエストレリャではない)が父親に対して甘美な憧れを抱いている成分が控えめであったり、映画には無かった同世代の女児に対する暴力行為(結構な内容が2回もある)であったり、父の手紙の相手に会いに出かけたり、父の婚外子と思われる男子に(悪気はないのか、それとも復讐の遊び半分なのか汲み取れない)恋愛感情を煽るように仕向けたりと、破滅的な衝動を自覚して飼い慣らしたり小出しにしたりしてるように見受けられる ある意味父に凄く似てるし、超えているとすら感じるところ それが映画にはない手触りで、女の目線や感性をどこか満足させてくれるような悦びを感じる アドリアナもっとやれ、と言いたくなるような… この書籍の解説がとてもビクトル・エリセ氏の映画に心酔している方のもので、映画に触れて間もない人間には勉強になるし刺さる内容であったのも、ありがたいです そして、この小説の『エル・スール』の作者アデライダ・ガルシア=モラレス氏はエリセ氏の妻だったことにも驚きました また、スペインの地においては長らく“女流作家”という存在が育っておらず、ガルシア=モラレス氏はその発展の黎明期の作家であったことなども興味深いです だとすれば先日読んだ“スペイン語圏の小説”で女流作家の作品であった『寝煙草の危険』は、今次々と強い書き手さんが現れてるということなのだろうか そのあたりは、現代のスペイン語圏文学もラテンアメリカ文学にも疎いので良く分からないのでした また読書していて歯がゆくなってしまった
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