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南方熊楠と猫とイスラーム 学術選書113
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南方熊楠と猫とイスラーム 学術選書113

嶋本隆光(著者)

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南方熊楠と猫とイスラーム 学術選書113

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 京都大学学術出版会
発売年月日 2023/12/01
JAN 9784814005024

南方熊楠と猫とイスラーム

¥2,200

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2024/09/16

博物学者・民俗学者である南方熊楠の思想や行動を、特に彼の多面的な知識や異文化への関心に焦点を当てて考察した本。南方熊楠は、動植物の研究で知られるだけでなく、民俗学や宗教、哲学にも深い関心を持ち、特にイスラーム文化や猫との関わりを重要視していたことがこの本のテーマになっている。思考...

博物学者・民俗学者である南方熊楠の思想や行動を、特に彼の多面的な知識や異文化への関心に焦点を当てて考察した本。南方熊楠は、動植物の研究で知られるだけでなく、民俗学や宗教、哲学にも深い関心を持ち、特にイスラーム文化や猫との関わりを重要視していたことがこの本のテーマになっている。思考法を分析したような内容であり、堅苦しい本、とも言える。 しかし、気になるのは猫である。更にタイトルにはイスラーム。彼の思想がどのように猫やイスラームと結びついているのか。 熊楠にとって猫は、単なるペット以上の存在であり、彼の思想や生活、さらには宇宙観や自然観と深く結びついた象徴的な存在だったという。実際、熊楠は生涯にわたって多くの猫とともに生活し、猫を通して動植物との関わりや自然界の秩序を考察する手がかりとした。 著者は、熊楠が猫を自然界における「多様性」の象徴と見ていた点を指摘する。熊楠は、猫が人間と共存しつつも、独自の生態系の一部として自立している姿に着目し、これを彼の博物学的な視点や多様性の理解と結びつけて解釈した。また、単に、猫の自由な行動や神秘的な存在感を味わっていたようでもある。 ー 人間に霊魂(仏性)を観察できるのは、大日の原子を内に含むからで、人間とのアナロジーで大日の性質について知ることができる、という論理である。大日は「不可知」であるから、大日から人間の性質を知るというのは不可能であるから、そのように考えることは熊楠にとっては矛盾である。これはすでに指摘した通り、宗教的議論であれ、哲学的議論であれ、議論の根底に「絶対的存在」を前提とすることが必要不可父であるという、思惟する者にとっての「いろは」を反映している。信者にとって絶対的な宿仰の対象は「倍仰」にとって必要くべからざるものである。一方、哲学的に思催する者にとっては、合理的議論を行う上で必要不可々な支点(大前提)である。両者ともにこれがないと、すべての根拠を失うことになる。物理学者にとっての「エネルギー保存則」も同様である。熊楠はこの議論の過程で『華厳経」の「四法界論」やユダヤ教のカバラ (qabbalah)などを援用するが、私見では、これは新プラトン主義や一神教的神秘思想に共通してみられる「流出論」に類似したものであると思う。この問題は、熊楠が今検討中の書簡を書く十数年前、一八八〇年代に、わが国では仏教の「信如」をめぐる議論として東京帝国大学の学生を中心に注目されていた。 ー 中沢によれば、熊楠が到達した智で現代人が未だ到達していない領域として「レンマ」の知がある(山内得立「ロゴスとレンマ』、一九七四年、岩波書店、中村雄二郎「西田幾多郎』、一九八三年、岩波書店、参照)。レンマの意味は確かにギリシア語起源らしいが、果たしてロゴスに対立する概念であるのか疑義を呈する立場もある。いずれにしても語源学的な詮索よりも、本当に熊楠が中沢の言うレンマの知に到達していたのか、この点は若干の考察を要する。レンマとは西洋的なロゴスに基づく合理的な思性と対立する、瞬時に獲得される智であるという。どうやらその本家本元はインドであるらしい。中沢と同じ傾向の研究者によれば、この知識について記述した書物は『華厳経』であるらしい。熊楠が英国から帰国して、失意のうちに那智の山中で暮らしたことについては上で述べた。その時持参した書物の中に『華厳経』があったことは事実であり、熊楠はそれを耽読したらしい。そして研究者の中にはこの時期に特別な宗教的体験を果たしたと考える人もいる。 ー 本書で扱うのは、むしろ熊楠の学問の特徴、方法である。熊楠の学問の特徴の一つが「比較」であることは、何人かの研究者によって指摘されてきた。確かに、彼の比較説話的、民俗学的著作を見れば、彼が世界中の説話、民俗学的資料を駆使して、比較検討を試みているのは明らかである。特に英国に渡ってからの情報収集への執念は、並の人間にはとうていおよばないほどのすさまじいものであった。熊楠は大英博物館の所蔵する膨大な資料群に対峙しながら、日々奮闘していた。その姿を想像するだけで感銘を受け、頭の下がる思いをした研究者、熊楠ファンは少なくないだろう。 私自身、大英博物館のこのエピソードから興味を持ったクチなので、彼の思想法や学術的部分は、中々興味の対象になり難く、猫などもこじ付けで、あっさり単純な猫好きを認めてくれた方がよほど分かりやすい人間像なのだが、他人があれこれ意味付けするのは、好き勝手なものである。

Posted by ブクログ

2024/08/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

本作『南方熊楠と猫とイスラーム』は従来の南方熊楠に関する参考書とは一線を画す作品となっています。 南方熊楠といえば「天才的な資質をもった博物学者、民俗学者」として知られており、粘菌や植物の研究でも有名です。 南方熊楠は超人的な資料収集や研究範囲の広さによって後の研究者からも尊敬を集めるようになります。そしてその研究者たちによって語られた南方熊楠はまさに時代を先取りした天才、偉人として讃美されることになりました。 ただ、この南方熊楠という人物ははたしてその通りの偉人であったのか。後の研究者たちの讃美に満ちた南方熊楠像は本当に正しいものだったのかということを本書では丁寧に見ていくことになります。

Posted by ブクログ

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