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夢の扉 マルセル・シュオッブ名作名訳集
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夢の扉 マルセル・シュオッブ名作名訳集

マルセル・シュオッブ(著者), 澁澤龍彦(訳者)

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夢の扉 マルセル・シュオッブ名作名訳集

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 国書刊行会
発売年月日 2023/11/25
JAN 9784336075949

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2025/04/01
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精緻な彫刻のような文章に、錚々たる訳者陣の旧仮名遣いがよく映える。それを真っ白な表紙に銀の表題というミニマルかつ品のある装丁で読む贅沢さ。この装丁の美しさはさすが国書刊行会。 シュオッブは当時はマイナーな存在だったようなのだが、その文章の美しさ故に、これらの名訳が多数存在している理由はよく分かる。どれも短い作品だけれど、一文一文が鮮やかに世界を構成していく様は目をみはらんばかり。しかし文体だけが魅力というわけではなく、その完成された美しさの裏に垣間見える詩情やアイデンティティの揺らぎにも同様に惹きつけられる。 「黄金仮面の王」 仮面を捨て自ら盲た王が下界をさまよう中で、癩病の女の服についた鈴の音を羊の鈴と取り違え、羊の毛に触れようと手を伸ばすシーンが好き。ここで羊が出てくるのは羊飼い即ち救い主というキリスト教的象徴の意味もあるだろうが、まるで生気のない寒々とした王宮で生きてきた王が柔らかな羊の毛に触れたがるいじらしさ、人間味は、寓話の王としてのペルソナからの解放をもたらす描写でもある気がして。 「木乃伊つくる女」 私が最初にシュオッブを認識したのは白水uのフランス幻想小説傑作集におさめられていた本作(訳者は異なる)だったので懐かしい。やっぱり素晴らしいなあ。エチオピアの砂漠の九重の砂の環を超えた先、リビアの砂漠の只中で、「私」は環型に配置された円屋根の穴からそこに潜む女達の謎を覗き込むことになるが、幾重もの環のイメージが重なり、なんだか巨大な瞳孔の中を覗き込んでいるような錯視を起こす。また、冒頭のテッサリアの魔女の描写や、天の青い光・地の赤い光の対照を思い起こせば、円屋根は月のイメージでもあった。私と弟、木乃伊づくりの姉妹など、随所に鏡写しの幾何学的な美しさを感じる。とても短い作品なのに、驚く程鮮やかにその魔術的な妖しさ、美しさに捉えられてしまう。

Posted by ブクログ