プログラマー脳 優れたプログラマーになるための認知科学に基づくアプローチ

フェリエンヌ・ヘルマンス(著者), 水野貴明(訳者), 水野いずみ(訳者)

• 販売会社／発売会社: 秀和システム
• 発売年月日: 2023/02/20
• JAN: 9784798068534

商品レビュー

2025/07/28

最近リファクタリングをよくやる機会があって気になって読んだ。

## コーディング中の混乱を紐解く

### 混乱には3種類ある = コードを読むときに起こる認知プロセス

1. 知識不足: このメソッドの意味がわからない ⇒ 長期記憶
2. 情報不足: このメソッドがどうやって動くか、定義元に遷移しないとわからない ⇒ 短期記憶
3. 処理能力不足: プログラムをすべて追って理解していくのが大変 ⇒ ワークングメモリ。思考が生じる場所

- ワーキングメモリで、短期記憶と長期記憶の情報を処理して、思考を行う
- プログラマの時間の60%はコードを書くことよりも理解することに費やされる
- 短期記憶では6つ程度の記録までしかできない

### チャンク

- 特定のトピックについて記憶している情報が多いほど、情報を効果的にチャンクに分割できる
- チャンクにしておけば、6つの短期記憶でも、その6つの情報量が多くなる
- 長期記憶した情報があれば、それはチャンク化して処理できる

### 長期記憶から情報を取り出す際のメカニズム

- 貯蔵強度:
- 長期記憶にどれだけきちんと保持されているか。その内容を勉強するほど、記憶は強くなる
- 増加する一方
- 検索強度
- 特定の何かを思い出すのがいかに簡単かを示す。なかなか思い出せない、答えは喉にあるのに、出てこないなど。
- 年月が経つと低下する
- テストなどで、思い出そうとすると強化されていく
- 能動的に考えると強化される
- 既存の記憶とセットにして覚えると、ネットワークができて、覚えやすくなる

### 認知的負荷の種類

- 認知的負荷: ワーキングメモリを占める容量のこと

認知的負荷のタイプ

1. 課題内在性負荷: その問題自体がどのくらい複雑か
1. 8^2 + 6^2 = のようなこれ以上複雑にならない問題が持つもそもそも課題
2. 課題外在性負荷: その問題の妨げとなる外部要因
1. a = 8, b = 6, c = 9のとき　a^2 + b^2 + c^2 のように、一旦短期記憶やワーキングメモリを必要とするような問題の妨げ
3. 学習関連負荷: 考えたことを長期記憶に保持する際に引き起こされる認知的負荷

メンタルモデル(例え)を使うと、長期記憶をしやすくなる

### 転移

- 一般道路の転移: 意識することなく、実行できるスキルの伝達
- 高速道の転移: 意識して獲得するような複雑なタスク

- 近転移: 領域が違いほど転移が起こりやすい。RubyとPHPなど
- 遠転移: RubyとHaskelなど大きく隣る領域間の転移

- 正の転移: すでに学習した知識が、新たなタスクを実行する際の学習に対して良い影響を与えること
- 負の転移: すでに学習した知識が邪魔になること

### 理解のプロセス
- 意味波
1. まずは一般的な概念を理解する必要がある
- 一般的な概念とは、それが何のために使われるか、なぜそれを知る必要があるのか
2. **アンパッキング**: その後、抽象度の低い方、つまり具体的にその概念の詳細を理解する
3. **リパッキング:** 最後に、また具体的な内容から離れ、抽象的なレベルまで戻って、概念が一般的にどのように機能するかを知って、腹落ちする

2025/05/22

長らく積本していたが読了。プログラミングを認知科学を通して見るアプローチがとても面白かった。
別の書籍等では「わかりやすい変数名やメソッド名はこうで、こういうルールを守りましょう」といった方法論は書いてある。一応理由付けも書いてあった気はするが、本書を読むと「なぜわかりやすいと思うのか」が認知科学の面からより具体的に説明されており、腹落ちする。
今まで、必要なプログラミング作業の手順や、次の日にプログラミング作業がまたがる際は残作業をコメントとして残すことをやっていたが、認知科学的には負荷が低くなる方法を採れていたのだなーと改めて認識できた。

2024/09/16

面白かった。プログラムを書いたり勉強したりするうえでどう人間の認知などに関わってくるのか知れた。また初心者へのプログラミング教育時の問題や対応に関しても勉強になった。