トコトンやさしい金属腐食の本 今日からモノ知りシリーズ

吉村泰治(著者)

• 販売会社／発売会社: 日刊工業新聞社
• 発売年月日: 2023/02/28
• JAN: 9784526082580

商品レビュー

2023/10/08

堅苦しい勉強の本ではなく、分かりやすく、専門外の人なら、必ず何かを得られる本。金属が腐食し難くなればインフラや構造物の寿命は延び、結果的にSDGs的なエコの発想にも繋がる。腐食とは何か。どうすれば良いか。今の社会では、どう扱われているか。

鉄は、その原料である酸化物である鉄鉱石の方が安定しているため、水と酸素が近くにあると鉄から元の酸化物に変化しようとする。赤錆の成分は鉄鉱石と同じ鉄の酸化物。こんな風に、金属材料の中には、陽イオンになりやすいイオン化傾向が大きいものと、逆にイオン化傾向が小さいものがあり、イオン化傾向が大きければ酸化しやすく、サビやすい。ちなみにイオン化傾向が大きい金属を「卑金属」、小さい金属を「貴金属」と呼ぶ。

イオン化傾向が小さい金属は金、白金など。腐食しにくい。鉄、マグネシウム、亜鉛はイオン化しやすいので腐食が発生しやすい。錆びやすい金属と錆びにくい金属、というのは日常の実感としてもよく分かる。

腐食を防ぐ方法は4つ。被覆防食、電気防食、金属材料の変更、腐食環境制御。つまり、メッキをしたり、塗装をしたり、錆びない金属に変える、錆びない環境で管理する。

なんとなく知ってはいたが興味深かったのは、海塩粒子は海岸地域、硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質は工業地域で多い傾向があるという事で、これらも金属腐食を促進する。つまり、海の近くに住んでいると、車の寿命が短くなる。じゃあ人間は？と思い、調べてみる。ネットの記事だと、逆に海塩粒子はミネラルを含み、人間の身体にはポジティブな効果だという。確かに海沿いの空気は気持ちが落ち着くが、本当にそうなのか。読めば興味も広がる。良い本だった。