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ニーネ詩集 自分の事ができたら
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ニーネ詩集 自分の事ができたら

大塚久生(著者)

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ニーネ詩集 自分の事ができたら

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 点滅社/JRC
発売年月日 2022/11/14
JAN 9784991271908

ニーネ詩集 自分の事ができたら

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商品レビュー

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2024/02/01

きっかけは新聞記事だった。2023年8月14日付け朝日新聞夕刊。屋良朝哉さんという男性が大学中退後4年間のニート生活を経て、祖父が残してくれたお金を元手に「点滅社」という小さな出版社を立ち上げたという記事。そして彼が点滅社での最初の出版として企画したのがこの「ニーネ詩集」。私はこ...

きっかけは新聞記事だった。2023年8月14日付け朝日新聞夕刊。屋良朝哉さんという男性が大学中退後4年間のニート生活を経て、祖父が残してくれたお金を元手に「点滅社」という小さな出版社を立ち上げたという記事。そして彼が点滅社での最初の出版として企画したのがこの「ニーネ詩集」。私はこの記事を読むまで点滅社のことを何も知らなかったし、ニーネというバンドの曲も聞いたことがなかった。 そんな私だから、この本の詩集という字面から、昔駅前とかで地面にシートを敷いて並べて売られていた表紙が薄くてページ数も少ない手づくり感満載の小冊子(今で言うところのZINE)を勝手に想像していた。 だが実物の詩集を手にして驚いた。全集のような固い表紙に、344ページもあって本の厚さは約2.5cmもある。手に持つとずしりと重い。表紙をめくると次のページに和紙のような中紙があり、詩集本体の紙質もいい。字の大きさや行間などのレイアウトも統一されている。なによりも、本の真ん中に写真を数枚掲載したページはあるものの、変にイメージイラストなどが途中で挿入されず、フォントや色を変化させるといった遊びは一切見られない。まず詩ありきで、「詩を読ませる」という目的に徹底してこだわっている。 先にニーネをバンドと書いたが、スマホで検索して聞いてみると…初期衝動全開のゴリゴリのロック。ギターやリズム隊の轟音が響く中で歌われる歌詞がこの詩集には並んでいるのだが、活字で見ると、日本語としてすごく整然としている印象だ。つまり、英語とのチャンポンの歌詞とか、体言どめ(名詞止め)の多用とかのよくあるロック歌詞とは正反対であり、(ちょっと違うかもしれないが)フォークソングのように「語る」歌詞に見える。ロックらしくないと言えばないのだが、リフの部分はロックの特性に合わせて強く訴えるフレーズが入ってきている。 「はなそうぜ!」(1997-2002年頃) 話そう もっと話そう もっともっと もっともっと話そう (中略) 二人きりしかいないんだぜ 何でも話し合おうぜ 聞きたくないことなんかそんなにねえ 言いたいことを 何でも言ってくれよ どんどん話し合って だんだん仲良くなるんだぜ 必要かどうかなんか問題じゃねえ とにかくそばにいてくれよ (後略) それと、作詞者の大塚久生(おおつか・ひさお)さんのキャリアに沿った歌詞(一番古いもので1985年作)を追うことで、彼も精神的に強烈に浮き沈みしてきたことにも気づいた。(だから一時期精神的に沈み切った屋良さんの琴線にも触れたのだろうけれど。) 記事によると自死も考えたことがある屋良さんだが、「このままで死んだらダサすぎる」と思いブックオフに毎日通い、100円均一の棚から池澤夏樹や町田康の小説を選んで読んでは「クソな現実を忘れられた」という。一方で屋良さんは同時にニーネの音楽も聞き倒していたのだろう。何も変わらない日常の中で、それでも屋良さんは大塚さんがしたように「空を見上げ」て、雲や星が自分に語りかける何かを聞き取ろうとしたのだろうと思う。大塚さんの人生から紡ぎ出された数多くの歌詞の中からは、屋良さんの場合と同様に、必ず読者の心を大きく動かすものがあるはずだ。 ちなみに私がこの詩集からたった1つだけ好きな詩を選ぶのを許してやる、と言われれば… 「負けるのをやめた私」(2018-2019年頃) 負けるのをやめたぜ 俺は負けるのをやめたぜ 負けるのをやめたぜ 俺はもう やめたぜ 昨日までは負けていたぜ 負けの海で溺れていたぜ だけど今日は違うぜ 負けの海を抜け出したぜ (中略) 負けるのは負けることで誰かの役に立つ時だけ 負けるのは負けることで誰かの役に立つ時だけ 負けるのは負けることで誰かの役に立つ時だけ 負けるのは負けることで誰かの役に立つ時だけ 負けるのは負けることで誰かの役に立つ時だけ 負けるのは負けることで誰かの役に立つ時だけ

Posted by ブクログ

2023/03/17

ロックバンド「ニーネ」のヴォーカルの詩集である。文章が繰り返されたり、「おおお」や「イェイ」という言葉が入ったりするなど歌になることが想像できる詩である。 一方でJ-POPのメジャーな歌とは以下の点で趣が異なる。 第一に英語の歌詞は少ない。 第二に恋愛をテーマとした歌は少ない。...

ロックバンド「ニーネ」のヴォーカルの詩集である。文章が繰り返されたり、「おおお」や「イェイ」という言葉が入ったりするなど歌になることが想像できる詩である。 一方でJ-POPのメジャーな歌とは以下の点で趣が異なる。 第一に英語の歌詞は少ない。 第二に恋愛をテーマとした歌は少ない。買い物などの日常生活を歌っている。日々生活をしていく中で詩を書いていくならば『ニーネ詩集』のように日常生活の詩が多くなることが自然である。J-POPの作詞家達は年がら年中、恋愛について考えているのだろうか。 「忘れちゃうってこと」は「煙草は止めてくれ」で始まる(24頁)。今は受動喫煙防止がグローバルスタンダードであるが、1997年から2002年の時期に主張することは先進的である。ヴォーカルは喉の商売であり、受動喫煙防止は深刻な問題である。「何で煙なんていうものがあるのかなあ」とまで言っている。中々の嫌煙派である。 続けて「コーヒーも止めてくれ」と言う。「何であんな変な飲み物があるのかな」「出されたって飲まないよ」と言い切っている。カフェイン中毒もニコチン中毒並みに嫌悪するものなのだろう。 次の「外は寒いよ」では「紅茶を入れて話をしようよ」とある(26頁)。作者はテレビドラマ『相棒』の杉下右京や田中芳樹『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーのような紅茶派なのだろう。ヤンは「コーヒーなんて野蛮人の飲み物だ。見るからに泥水色をしている。それにひきかえ、紅茶は琥珀を陽光に透かした色だ」と言っている。 「外は寒いよ」は「家の中で遊ぼう」とStay Homeである。1997年から2002年の時期に主張することは先進的である。昭和の頃は「書を捨てよ、町へ出よう」がカッコいいという風潮があった。その逆を行っている。 「スーパーにて」では「スーパーが俺たち遊び場なんだよ」と語る(116頁)。これは共感する。私の子ども時代は、これであった。「スーパーにて」を起承転結で分類すると「転」の部分には「誰かに気に入られようとして本気でないものを作」るよりも「好きなままやろう」と主張する。役人的な忖度を否定する。これは表現者としては至極真っ当な姿勢である。 スーパーマーケットという専門店と比べて人間味のないシステマティックな店舗を肯定する詩の中で「好きなままやろう」が登場することが興味深い。消費者としてはスーパーの方が専門店よりも気楽である。それがアーティストの気質にも合っている。芸能界には人脈で売れる側面があるが、そのアンチテーゼになる。 「結」の部分では「本気で必要なものを手に入れていこうぜ」と言い、「スーパーが俺たち遊び場なんだよ」につながる。多種多様な商品が置かれて、そこから消費者が自由に選択するスーパーマーケットが本気で必要なものを手に入れる場所になる。アーティストにとっても作品を置いて、良いと思った消費者が自由に選択する場が欲しいものである。

Posted by ブクログ

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