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音楽は絶望に寄り添う ショスタコーヴィチはなぜ人の心を救うのか
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音楽は絶望に寄り添う ショスタコーヴィチはなぜ人の心を救うのか

スティーブン・ジョンソン(著者), 吉成真由美(訳者)

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音楽は絶望に寄り添う ショスタコーヴィチはなぜ人の心を救うのか

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2022/10/25
JAN 9784309256863

音楽は絶望に寄り添う

¥2,915

商品レビュー

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2024/04/30

スターリン政権を生き延びたショスタコーヴィチの複雑で悲劇的な音楽は、時代を超えて絶望の淵にある人びとの心に寄り添い慰める。悲しい音楽が苦しんでいる人の心を安らげる力をもつのはなぜなのか。作曲家の伝記と音楽療法の研究、そして親との関係や双極性障害に苦しめられながらも音楽を聴くことで...

スターリン政権を生き延びたショスタコーヴィチの複雑で悲劇的な音楽は、時代を超えて絶望の淵にある人びとの心に寄り添い慰める。悲しい音楽が苦しんでいる人の心を安らげる力をもつのはなぜなのか。作曲家の伝記と音楽療法の研究、そして親との関係や双極性障害に苦しめられながらも音楽を聴くことで生き延びる力を蓄えてきた筆者の自伝的エピソードが絡み合い、重層的な音色を奏でる傑作エッセイ。 本文中で「ネガティヴ・ケイパビリティ」という言葉が紹介されている。端的な答えの出ない不確かで不可解な状態を受け入れる能力のことだという。ショスタコーヴィチはスターリン(その後フルシチョフ)政権のもと表現規制を受け、ときにはナチの侵攻と板挟みになりながら作曲をした。本書の著者ジョンソンは精神を病んだ母親と疲弊した父のもとで思春期を迎え、双極性障害を抱えながらショスタコーヴィチの音楽に慰めを得た。作る側と聴く側両方が音楽を通してネガティヴ・ケイパビリティを獲得する、そのプロセスを分かちがたいものとして描いているところが強く心を揺さぶる。 ショスタコーヴィチの作品はひどく個人的なものもあるようだけれど、どんなに個人的な体験から生まれた作品でも発表されることで普遍性をもつ「われわれ」の作品になっていく、それこそが広い意味でポップカルチャーなのだと思う。ショスタコーヴィチをポップミュージックと呼ぶのは乱暴だけど、個人の物語が「われわれ」の物語として共有される構造は共通で、明るい曲よりも悲しみや絶望を表現した曲のほうがより密接に作曲家の個と無数のリスナーの個が結びついていくのではないだろうか。だからこそ、ショスタコーヴィチは大学のころ哲学科の教授に聴かされた思い出しかなかった私にも深くシンクロできるのだ。 思春期のジョンソンと母親のエピソードはどちらに感情移入しても辛い。母親の「彼らが大きくなって、みんなオスになってしまうのが、本当に憎たらしい!」という言葉に傷つけられたエピソードは、シャーウッド・アンダーソンの「狂信者」(『ワインズバーグ、オハイオ』収録)で育児放棄した女性が放つ「これは男の赤ん坊だから、欲しいものを自分で手に入れるわよ」「これが女の子だったら、どんなことだってしてあげるでしょうけど」という台詞を思いだす。母親であったりカフカの妹であったり、ケアすべき存在をケアしなかった人として本書で例に挙がるのはみな女性であり、そういったジェンダーロールがジョンソンの母親に与えた影響は大きいだろう。 このエッセイでは戦争、独裁、うつ、自殺願望などが次々トピックにあげられていくが、最後まで読み口は重くも暗くもない。なぜならジョンソンはショスタコーヴィチの音楽から謎めいて魅力的なヴィジョンを取りだし、不定形のクリームから塑像を捏ね上げるように言葉に変えてしまう幻視者だからだ。言語で構築された音楽の世界を揺蕩うのが心地良くて仕方がなくなり、当然BGMにショスタコーヴィチをかけることになった。ジョンソンの音楽表現はけっして美しいだけではないがどこまでも芳醇で、訳者まえがきで「美味しい」と表現されているのもよくわかる。心理学や脳科学の知識も盛り込んだエピソードの繋ぎ方もよく練られているし、訳者による補足が丁寧なのも嬉しい。この内容にグラフィティのようなタッチのイラストを合わせた装幀も絶妙で最高にカッコいいと思う。 この本は私に「音楽に救われる」という言葉の意味をもう一度考えさせてくれた。自己否定のループに嵌ってしまったとき、あるいは自身のなかにトラウマがあると認められないとき、誰かの手を掴むための心の準備を助けるのが音楽だとジョンソンは言う。そうやって「救われた」人が作る側にまわり、悲痛を表現してドン底にいる他者の心を安らげる。その表現は自己憐憫ではなく、同じ地獄にいる人に向けてまっすぐ差しだされた手だ。苦しみや悲しみの表現から勇気を感じることがあるのは、それが地獄を天国と偽ることを拒否しているからだ。聴き手はその勇気ある表現を通じて自らの悲しみを外へ取りだし、見つめることができるようになる。

Posted by ブクログ

2024/04/15

とても力強く、感動的な本。当事者として、共感できる部分がとても多かった。 ・音楽にできることは、極端に偏った苦しい場所から外へ抜け出るための梯子のようなものを提供することです。 ・芸術家は、現実が持つ意味に姿・形を与える。

Posted by ブクログ

2023/03/15

どの演奏が良いとか、どの指揮者が良いといった単なる名盤案内ではなく、ショスタコーヴィチを聴いてきたことによって、著者がどれほど救われたか、精神的な危機から回復することができたか、赤裸々に語られていて、非常に感動的です。

Posted by ブクログ

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