野生の中へ 谷口ジロー狩猟短編傑作集 ヤマケイ文庫

谷口ジロー(著者)

• 販売会社／発売会社: 山と溪谷社
• 発売年月日: 2022/10/17
• JAN: 9784635049443

商品レビュー

2022/10/18

谷口ジロー『野生の中へ 谷口ジロー狩猟短編傑作集』ヤマケイ文庫。

『猟犬探偵 完全版』『K』に続き、ヤマケイ文庫が刊行した3作目の谷口ジロー作品。野生と狩猟をテーマにした7編を収録したセレクト短編集である。

あらためて読んだが、いずれも描かれた時代を感じる傑作揃いである。

『西風は白い』。後に谷口ジローとコンビを組んで様々な傑作を産み出した関川夏央の原作。樺太に渡った若い女性学者が行き倒れになり、現地の猟師に助けられ、その後、行動を共にするというサバイバル漫画。双葉社の『西風は白い』という同名の短編集の表題作。この時期、関川夏央と谷口ジローは、このような辺境の地で小さな歴史を刻んだ日本人を描いていた。

『ユーカラの森』。祥伝社の『新・大いなる野生』に収録されていた1作。アイヌの若者が人を襲ったヒグマを倒しに行き、思わぬ事態に遭遇する。アイヌの怪異譚という感じだ。

『枯柴灘』。こちらも『新・大いなる野生』より。熊野灘の漁師とマッコウクジラの死闘を描いた短編。エロスとバイオレンスは、この時代の劇画のお約束。絶望的なラストはページ制限のためだろうか。

『鷹』。『新・大いなる野生』より。登場するのは老鷹匠とクマタカだけという小説のような短編。そして、静かな余韻を残す結末。後の谷口ジロー作品に繋がる画風のように思う。

『森へ』。『新・大いなる野生』より。イラストレーションに物語を加えた谷口ジローの初期作品にはよく見られた技法の作品。谷口ジローの画力があってこそ成立する作品だろう。

『山へ』。小学館の『凍土の旅人』より。谷口ジローの後期作品。秋田県を舞台に息子をイタズに殺された老マタギが憎きイタズに命を賭けて復讐する物語。自然が老マタギに送ったメッセージは……

『凍土の旅人』。『凍土の旅人』の表題作。カナダとアラスカの国境地帯を舞台に白いヘラジカを追い求める老猟師とジャック・ロンドンの邂逅を描いた作品。谷口ジローは後にジャック・ロンドンの作品を漫画化している。

解説は関川夏央。『西風は白い』を巡る谷口ジローとの思い出が語られる。

定価1,045円
★★★★★