商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 生きのびるブックス |
発売年月日 | 2022/08/26 |
JAN | 9784910790060 |
- 書籍
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商品レビュー
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ダイワハウスの冊子の文がまとめられ、続けて読むとまた、読み応えが違った。こんな贅沢な音楽の旅。目の前で繰り広げられたら、ゾクゾクしっぱなしだろうな。この本との出会いに感謝。
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『おばちゃんたちは太い二の腕をぶるぷるさせながら、鶏の喉を切って血を土に吸わせる。慣れた手つきで羽をむしり、みるみるうちに普段見慣れたチキン肌の丸裸になってゆく。お湯にくぐらせ、炎で炙り、鮮やかな手順で「生き物」が「食べ物」になってゆく』―『1章 馬力/祝福』 テレビがアナログ...
『おばちゃんたちは太い二の腕をぶるぷるさせながら、鶏の喉を切って血を土に吸わせる。慣れた手つきで羽をむしり、みるみるうちに普段見慣れたチキン肌の丸裸になってゆく。お湯にくぐらせ、炎で炙り、鮮やかな手順で「生き物」が「食べ物」になってゆく』―『1章 馬力/祝福』 テレビがアナログ放送だった頃に買った録画機には、山口智子が分厚い資料を抱えて旅をしながら熱く語りまくる番組が幾つも保存されている。DVD化された番組もあるけれど、彼女が制作に携わった番組の多くは記録として残されていない。「LISTEN」もまたそんな番組の一つ。もちろん、何でもデジタル映像にして残せばいいというものでもないし、一期一会の価値観も理解はしているつもりではあるけれど。そんなもやもやとした思いを抱く人々への慰めということでもないだろうけれど、本書は、紙の媒体を通してこの稀代の好奇心旺盛な女性が吸収してきたものを、凝縮して開示したという一冊。まさか、こういう形で記録に残すとは、という率直な驚きを覚える。 山口智子のファンだというと誤解する向きもあるだろうけれど、いわゆる「月9」ドラマで演じる山口智子を観たことはないし、女優デビューとなった「朝ドラ」も観ていない。けれど、ダブルキッチンでの野際陽子との嫁姑の確執をコミカルに演じた山口智子は好き。では何故、この多方面への破格の情熱を示す人物のファンになったかというと、切っ掛けは「手紙の行方:チリ」を読んだこと。それは実に意外な一冊で、女優の手慰みなどでは決してない「本気」の一冊だ。その後「反省文:ハワイ」を読んで再度感心し「旅シリーズ」第一弾の「ゴッホへの旅」で語りまくる山口智子の知的好奇心の発露の情熱的なことを知り決定的にファンになった。 彼女の情熱には際限のない好奇心が突き動かす探求が決まってついてくる。そうして集まった情報は独特の分類法で整理(調理?)され、血となり肉となる。一端そうして身体の一部になったものから湧き上がる感情には、理屈はない。そしてこの発信者はそのことを恐れない。学術的に正しいことや、研究者の言うことをそのまま語るのではなく、感じたことをそのまま伝えることに躊躇が無い。だから言葉が迸り出る。それはドキュメンタリーでも、文章でも同じ。 だがその情熱には危うさもある。古今東西の諸々の営みが混然となり、思っても見なかった関連性を引き出し、無意識に繋がりを求める。それは人の知的営みの根本でもあるけれど、無意識の情感がそうさせるが故に、冷静な批評を受け入れぬような激しい断定を示すようにも見えてしまうからだ。それをこの稀有な女性は持ち前のしなやかさで制御しているようにも見える。 「LISTEN」以前に山口智子が手掛けたドキュメンタリーでは、ゴッホや芭蕉やエカテリーナなど情熱を傾ける対象が定まっていて、彼女の掘り下げた探求の結果がまっすぐに言葉となる出力される様を見て共感するという、ある意味受け身で視聴するものだった。一方、LISTENの山口智子は制作者に徹しドキュメンタリー映像に登場することはなく(本書には、とてもいい表情で写る貴重な写真が二葉あり。馬と向き合う一葉、そして中央アジア風の衣装の男性の横に座って俯きつつ微笑む一葉)、その思いを熱い口調で語ることもない。あるのは音と映像による問いかけにも似たもの。それは能動的な共感へと誘う仕組みでもある。映像を観た時にはそれが意外でもあったけれど、その様式は、山口智子が感じたことを、音楽に、そして音楽を奏でる人々に、直接語らせたいという思いからの構成だったのかと、本書と出逢ってようやく解る。この幾つかの媒体に書かれた文章を集めた一冊を読んでいると、北斎やゴッホを語る山口智子の口調が蘇り、その探求心にぶれがなかったことがよく解る。 ところで可笑しなことを言うようだが、自ら語った筈のインタビューの言葉よりも、文字として表現することを前提として自ら執筆した文章の方がドキュメンタリーで語る山口智子の口調を彷彿とさせるのは何故だろう。恐らく、山口智子は本来、文字の人なのだ。それはもうとっくの昔に解っていたことではあるのだけれど。
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