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哀しむことができない 社会と深層のダイナミクス
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哀しむことができない 社会と深層のダイナミクス

荻本快(著者)

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哀しむことができない 社会と深層のダイナミクス

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 木立の文庫
発売年月日 2022/04/08
JAN 9784909862235

哀しむことができない

¥2,970

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2023/01/30

身近な人が亡くなった、或いは失恋などの大きな喪失をした際に人は喪失を受け入れ立ち直るまでの様々な段階を経験する。フロイトはその一連の心理的プロセスを《喪の作業》と呼んだ。本書ではこれを個人の心理動向に留まらず、社会全体の心理にも当て嵌まると述べる。この《喪の作業》が正しく行われな...

身近な人が亡くなった、或いは失恋などの大きな喪失をした際に人は喪失を受け入れ立ち直るまでの様々な段階を経験する。フロイトはその一連の心理的プロセスを《喪の作業》と呼んだ。本書ではこれを個人の心理動向に留まらず、社会全体の心理にも当て嵌まると述べる。この《喪の作業》が正しく行われなかった場合―すなわち「哀しむことができなかった」場合、人はメランコリーという状態に陥るという。その心理的特徴として、苦痛に貫かれた不機嫌さ、外界への関心の喪失、愛する能力の喪失、自己への軽蔑、自分が無価値だと感じる「自我の貧困化」が挙げられる。 《喪の作業》とそれを行わなかったことによるメランコリー状態が、単に個人規模の話ではなく社会心理学的にも当て嵌まる一例として、「アドルフ・ヒトラーの喪失を哀しむことができなかったドイツが現在に至るまで社会的メランコリー状態にある」というドイツの精神分析家による説が紹介される。ヒトラー喪失によるドイツ国民のメランコリーについて書かれる中で、そもそもユダヤ人排除が生じた心的メカニズム、集団の同調圧力が引き起こす外部への攻撃性の投射について本書では語られる。これは日本社会にも見られる「いじめ」や「ハブり」と構造は同じ、スケープゴートの力学であるとする。 アジア各国での日本軍による過剰な残虐行為はなぜ起こったのか。これは他国に類を見ない日本人の「清潔さ」を志向する教育が無関係ではないと述べる。攻撃性と清潔を求める心理の関係性が興味深かったので少し引用する。 “男児が家庭において甘やかされ母親が家庭において奴隷のように働かされていることを指摘し、「個人レベルでは『強迫神経症』と呼ばれる特徴的症状の大部分を、日本人は集団で持っている” “日本の社会は、他のほとんどの社会で是認されている攻撃性を解き放すための機会が少ない。そして理屈からいえば、適当な状況があれば、攻撃性が発散されることになる。このことは、ほとんどすべての訪問者を魅了する日本中に浸透しているその生活の穏やかさと、ほとんどすべての偵察員や新聞記者を怖がらせた戦争中の日本人の閉口させるほどの残忍性とサディズムとの際立った差異に対して、最もうまく説明している。” “コロナ禍にあって、「清潔さ」のトレーニングに拍車がかかっています。(中略)コロナ禍のあいだによく観察されている「自粛警察」といった現象や、 SNSでの残酷なまでの排除や、自死に至るまでの誹謗・中傷、そしていじめといった、攻撃性の発露は、「清潔さ」に関するトレーニングと無縁ではない”

Posted by ブクログ

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