商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 作品社 |
発売年月日 | 2022/02/28 |
JAN | 9784861828799 |
- 書籍
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プールサイド
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商品レビュー
4.3
7件のお客様レビュー
『もしも志大に言われなければ、屏仔があまりにも静かなことに僕は気づかなかっただろう。彼は黙って料理を箸でつまんでいた。僕らが彼に酒を勧めると、コップを持って一息に飲み干した。コップを置くとき、なんと絨毯の上に置いたかのようにわずかな衝撃音も出さなかった。屏仔はそんなにも静かに、黙...
『もしも志大に言われなければ、屏仔があまりにも静かなことに僕は気づかなかっただろう。彼は黙って料理を箸でつまんでいた。僕らが彼に酒を勧めると、コップを持って一息に飲み干した。コップを置くとき、なんと絨毯の上に置いたかのようにわずかな衝撃音も出さなかった。屏仔はそんなにも静かに、黙ったままだった。まるで声帯の電源が切れてしまったかのような静けさだった。もしかすると屏仔の症状は、つまりその時に始まったんだ。僕は言った。彼の視線は定まっていたか。吐き気を催したり、体がこわばったり震えたりしていたか。そんなことはなかった。とにかくただとても静かで、沈黙していたんだ』―『虎爺/呉明益』 「歩道橋の魔術師」で呉明益を紹介してくれた天野健太郎氏が亡くなってから何年になるだろう。直接お会いしたことはないけれど、生前に一度だけレビューでいいねをもらったことが思い出される。その後、他の訳者によって呉明益の作品は翻訳され続けているし、自分もまたそれを手に取り続けているけれど、天野氏の拘り抜いた日本語への変換をどこかで思い起こしながら読んでしまっている。例えば、先日読んだ棟方志功の物語の中で、志功が語る言葉はやはり津軽弁である必要があるように思うのと同じように、翻訳では失われてしまう台湾の人々が聞いただけで感じる言葉の違い(複数の台湾原住民族、客家・福建係の内省人、外省人の言葉の違いや、世代による言葉遣いの違い)から感じ取るその人の背景を抜きには台湾文学の持つ深さは表現し切れないように思う(というようなことを意識するようになったのも天野健太郎氏の翻訳のお陰です)。とは言え、それが翻訳という薄膜を通り抜けてくれるかは難しいところではあるだろうけれど。 本書の中にも、作風の違いはあれ、性差や出自の違いを意識した作品が多いように思うけれど、そのことは恐らく台湾の置かれた地政学上の位置を反映したものでもあるだろうし、都市と田舎の対照が色濃く残る社会性が投映されているのかも知れない。ある意味平準化された日本語でそれを読むものは、慎重に作家が託したものを嗅ぎ取る必要はあるだろう。もちろん似たような感覚は自分たちにもあるという意識はある。例えば、物語の主題は異なってもそこに幻想を巡る展開が存在する短篇が多いように感じたけれど、それが小説として受け入れられる素地、すなわち都市に棲まいながらもどこか人智の及ばない自然に取り囲まれた風景、そしてそこに住む人々によって伝聞されてきた不可思議な物語を受け容れる土壌、が台湾の人々にはあるということなのだろうけれど、それは恐らく日本にもかつて存在していたものであった筈。それは島弧の縁に位置する島で、はっきりとした四季と多雨による植生(放っておけば全ては植物に飲み込まれてゆく、というのは決して普遍的な風景ではないです)が醸し出すもの。それ故、台湾の作家の作品にはどことなく郷愁感が伴うのだろう。などと小難しいことを言う必要は、本書を楽しむうえでは全くないのだけれども。 複数の作家の作品を集めた私花集ではどうしても好き嫌いは出てきてしまうものだけれど、そして本書はもちろん呉明益が目当てで手に取っているのだけれど、やはり彼の「虎爺」が強い印象を残した。地の文に話し言葉が紛れ込む。それを読んだ瞬間の眩暈のような感覚。心地よい。「雨の島」「自転車泥棒」をどこか彷彿とさせる短篇。そして甘耀明の「告別式の物語」。粘液質の肌ざわりを嫌でも感じざるを得ない語りは少々毒々しい(それが戦争というものの本質だからか)が、結末で全ては天に上る煙のように霧散してゆく。後で気付いたが「我的日本」で引用したのが甘耀明の「飛騨国分寺で新年の祈り」だった。やはりそういうのが好きなんだね、自分。
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台湾の作家11人による短篇集 そして自由な発想の不思議なストーリーの数々。 いろいろな社会問題を織り込んでいても、暗く重くなりすぎない台湾の作家さんならではの世界観に圧倒されました。
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「台湾」という地域 オランダ人、日本人、中国人の統治があり、それ以前から住む人たちも共存しているところ。 ひょっとしたら、中国本土より中華三千年の匂いを残しているのかも……。 もともと、呉明益が読みたくて、このアンソロジーを手に取った。 呉明益『虎爺』、夢と現実の境が見えないふ...
「台湾」という地域 オランダ人、日本人、中国人の統治があり、それ以前から住む人たちも共存しているところ。 ひょっとしたら、中国本土より中華三千年の匂いを残しているのかも……。 もともと、呉明益が読みたくて、このアンソロジーを手に取った。 呉明益『虎爺』、夢と現実の境が見えないふわふわとした、それでいて少しノスタルジーを漂わせる物語。 やっぱり、良いですね。 他にもいくつかお気に入りがあり、また、新たな出会いも感じられた、アンソロジーでした。他に二冊あるので、また、楽しめそうです。
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