愛じゃないならこれは何

斜線堂有紀(著者)

• 販売会社／発売会社: 集英社
• 発売年月日: 2021/12/03
• JAN: 9784087900682

商品レビュー

2024/12/14

久しぶりに、新たなこじらせ（女子）の名手と出会えた･･･！
という喜びと苦しみが同時に襲ってくる短編集。

出てくる人間関係はどれも一癖あるものなんだけど、
「愛じゃないならこれは何」って言いたい気持ちも分かる。
何なら脳内で感嘆詞までついちゃう。「愛じゃないならこれは何？！？！」って。
これがわかってしまう側の人間であることは、正直人に知られたくない。

全部ひっくるめて「愛じゃないならこれは何」であるのも秀逸なんだけど
各短編のタイトルもエモい。

「健康で文化的な最低限度の恋愛」は言い得て妙で、
恋愛にはまると今までの「健康で文化的な最低限度の生活」が出来なくなるという話。
恐ろしさもあるかもだけど、大好きなミスチルが歌う「君の好きな僕を演じるのはもう演技じゃないから」もまた真実だと思うのです。

「愛について語るときに我々が騙ること」は
中田永一の「三角形はこわさないでおく」という似たような短編が大好きなんだけど、
本作は大人バージョンというか、別解って感じ。

結論、愛じゃなくても好きなようにすればいいよ。愛だったら正解って考えのほうが私は怖いから。

2024/11/17

めちゃくちゃよかった『星が人を愛すことなかれ』の前日譚が収録されているので早速読んだ。三部作の中ではいちばんハマらなかった。

・ミニカーだって一生推してろ
救われちゃって呪われちゃったアイドルの話。自分の理想にチューニングされていくアイドルを推すのは楽しいだろうし、だからこそ抜けられなくてより理想と合致していくのはもはやホラー。読み手にアイドルとの可能性を感じさせるの怖いし、好きなもの自体が好きであることを強制してくるの何。『星が人を愛すことなかれ』に収録してほしかった。

・きみの長靴でいいです
「長靴でいい」なんて言葉しか使えないから舞踏会のイミテーションにされたんじゃないですかね。告白されたくて、告白してほしくて10年経ってる人間の感情が理解できない。

・愛について語るときに我々の騙ること
ウロボロス三角関係、きもちわる。どちらかを選べないならどちらも好きじゃないのでは。恋愛がどこかに生まれた時点で、友情はすでに壊れているのに見ないふりしてあると信じて、無理して子どものフリしてる大人は情けない。壊してから作り上げる気概もないのは甘えでは。

・健康で文化的な最低限度の恋愛
恋愛したら自分が作り変えられて別物になるのわかるし、無理しているのは確かなのにそれを選んでいるのは自分自身だし、それしか道がないと思いこむのもそうだよね。今作の中で美空木絆菜がいちばんわかりやすかったし筋が通ってた。ただ津籠実郷はやめといたほうがよくない？自分と同じだ！運命だ！ってそれはもう自己愛じゃん。絆菜である必要はなくて、鏡を与えておけばいい。

・ささやかだけど、役に立つけど
愛について〜のウロボロス三角関係の補足。別視点から見たところでたいして広がりもなく話に動きもなく。

2024/11/09

いろいろな恋愛模様の短編の作品でした。星が人を愛すことなかれを先に読んでいたので内容が入り易かったです。まずまず面白かったです。