ハムネット 新潮クレスト・ブックス

マギー・オファーレル(著者), 小竹由美子(訳者)

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 2021/11/30
• JAN: 9784105901769

商品レビュー

2025/01/17

ルクレツィアの肖像を読んで、興味が湧いたので
こちらも読んでみた。

なかなか読み進められず結構時間が掛かっちゃった。テンポが悪いわけではなく、私自身洋書だと少し表現がくどく感じて苦手なのかも。

内容は、ウィリアムシェイクスピアの家族の話。
この作者さんは本当に歴史の陰に隠れている女性の話の作り方、魅せ方が上手いなぁと思った。

私自身、シェイクスピアのことはほとんど知らなかったので、彼の奥さんのアン(アグネス)が悪女と言われてることなど全く知らなかった。
だからこそ、面白く読めたのかも。

シェイクスピアの悲劇、ハムレットも少しは関係しているので先に読んでおくと面白さが増すと思います。

2024/12/04

シェイクスピアのこと知ってから読んだ方がいいってわかってて知らずに読んだら案の定全然ハマれなかった、シェイクスピアの妻の名前がアン・ハサウェイって知れたのはよかった

2024/06/22

英女性小説賞、全米批評家協会賞、ドーキー文学賞受賞作。近々映画化も。

一字違いのタイトルを見聞きしている人が多いと思いますが、ご想像通りシェイクスピアにインスパイアされて書かれたお話しです。

とは言え、18歳で結婚して2年後に双子の男女が生まれて、男の子のハムネットが亡くなった史実はあれど、歴史を正確にトレースしているわけではありません。そういう事情もあってか、本書の中でもシェイクスピアの名前は出てきませんので、歴史小説ではないです。

著者がこの本を書こうと思ったのは、シェイクスピアの妻が、”無知な百姓あがりの売女で、天才少年を誑かして結婚し、夫は彼女が大嫌いだったので逃れるためにロンドンへ脱出した…どうしてみんな、自由奔放な男性芸術家像にこだわるあまり、彼女をこき下ろさなくちゃならないんですか？”という疑問からでした。

そういうわけで、妻の視点から語られることが多く、出産時の大変さや自立した芯を持っている女性像、幼い子供を無くした喪失感などがとても良く描かれており、女性は共感できるかも？個人的には、二部構成の第一部は、複数の時制が前後しながら紡ぎ出す物語にドキドキしましたが、第二部以降から終盤に向かうにつれて、女性の悪い面を散々見せられてるようでなんだかな…という感じも受けました。しかし、著者が女性だから、より女性の心情の変化を詳細に書きやすいことも影響しているかもしれず、逆にここまで書けるのは凄いことだなと読後に思い直しました。ラストは『ハムレット』が書かれた事実とは異なりますが、夫への理解と歩み寄りに繋がる上手いまとめ方です。とても素晴らしい読書体験ができたと思いました。

シェイクスピアの『ハムレット』を未読の人は読んでおいた方がいいです。ラストを理解する手助けになるでしょう。

余談ですが、本作は「新潮クレスト・ブックス」という、新潮社の海外文学を出版するシリーズの一冊です。独特なしなやかな触感のカバーや本の紙質が好きですね。中でも『ハムネット』が1番表紙がオシャレだと思います。ちゃんと本作の内容を表すデザインにもなっていますし。

追記:
P138の後ろから4行目(初版)
ベスト→ペスト