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エルサレム〈以前〉のアイヒマン 大量殺戮者の平穏な生活
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エルサレム〈以前〉のアイヒマン 大量殺戮者の平穏な生活

ベッティーナ・シュタングネト(著者), 香月恵里(訳者)

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エルサレム〈以前〉のアイヒマン 大量殺戮者の平穏な生活

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2021/05/19
JAN 9784622089605

エルサレム〈以前〉のアイヒマン

¥6,820

商品レビュー

5

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2024/08/18

アーレントの「悪の陳腐さ」論が覆されかねない衝撃の作品です! この本で明らかにされるアイヒマンは「悪の陳腐さ」とは真逆の姿です。アーレントはエルサレムで周到に計画されたアイヒマンの罠にかかってしまったことがこの本で語られます。アイヒマンは単なる権力の歯車などではなかったのです。...

アーレントの「悪の陳腐さ」論が覆されかねない衝撃の作品です! この本で明らかにされるアイヒマンは「悪の陳腐さ」とは真逆の姿です。アーレントはエルサレムで周到に計画されたアイヒマンの罠にかかってしまったことがこの本で語られます。アイヒマンは単なる権力の歯車などではなかったのです。恐るべき一冊です。

Posted by ブクログ

2021/06/20

タイトルから想像されるようにアーレントの「エルサレムのアイヒマン」の「以前」、つまり、アイヒマンのナチス時代、アルゼンチンでの亡命時代についての本。 中心は、アルゼンチン時代のアイヒマンの亡命ナチなどとの集まりでの座談会の録音とスクリプトの分析。これが圧巻。 アーレントは、ア...

タイトルから想像されるようにアーレントの「エルサレムのアイヒマン」の「以前」、つまり、アイヒマンのナチス時代、アルゼンチンでの亡命時代についての本。 中心は、アルゼンチン時代のアイヒマンの亡命ナチなどとの集まりでの座談会の録音とスクリプトの分析。これが圧巻。 アーレントは、アイヒマン裁判での答弁を傍聴し、裁判の膨大な資料を読んで、「エルサレムのアイヒマン」を書いたわけだが、そこで有名となった「悪の凡庸さ」と表現された「ただのサラリーマン」はここにはいない。 「アルゼンチンのアイヒマン」は、確信的なナチであり、徹底的な反ユダヤ主義者。 アルゼンチンに亡命したナチの残党は、ホロコーストはユダヤ人のプロパガンダで本当はそこまでの実態はなかったと考えている。その認識をベースに自分とナチ運動を正統化し、社会への復帰のきっかけを期待し、その証拠をアイヒマンの話しに求める。が、その希望はアイヒマンによって打ち砕かれる。 そこにいたのは、ナチの残党でも引いてしまうほどの確信犯的な反ユダヤ主義者だったのだ。自分のやった「業績」を誇ることはあれ、全く反省はない。 アイヒマンは、アルゼンチンでの議論を踏まえて、自分のやったことが他者にどう受け止められるかをさまざまな形で考えていたので、エルサレムでは、「組織の歯車」「いわれたことをやっただけ」「それは事実ではない」を繰り返すことで、「凡庸な」サラリーマン、官僚を見事に演じて、アーレントもだまされてしまった、ということなる。 また、アーレントが、アイヒマンに「考えないこと」という特質を見出し、この考えないことが全体主義を生み出したのだとして、後期の「精神の生活」にその思索をふかめたのだが、実は、アイヒマンは、すごく「考える」人だったのだ。その思想は、身勝手で、邪悪なものであったが、常に独自の世界観を深めていて、自分の世界観とナチの世界観の関係がどうなっているのかを主体的に考え続けていたのだ。 アーレントが裁判当時に利用可能であったテキストは限界があり、事実関係としては、間違いなくこの本のほうが、真実に近いところに迫っていると思う。(著者によると、まだまだ開示されていない文書がたくさんある。現時点でも、それが開示されないのは、この文書がまだまだ社会的に影響がある人、国際関係があるというこを意味する。また、ドイツは、アイヒマンの逃亡先などの情報はかなり早く知っていたにもかかわらず、行動を起こさなかった可能性もありそう) 今後、全体主義について考えるときに欠かせない本になると思う。 アーレントの「悪の凡庸さ」の議論との関係では、それはアイヒマンの評価としては、的外れであった。とはいえ、アーレントもアイヒマンがただ言われたことをやっただけの歯車とは思っていなくて、ナチ思想を「考えもなしに」受け入れたうえで、それを着実に実行した凡庸な「悪人」と考えていたと思う。(上述したようにアイヒマンは、実は「考えていた」のだが) アイヒマンは確信犯であったかもしれないが、ナチを支えた「悪の凡庸さ」を体現する「普通の人々」はたくさんいたはずで、アーレントの議論の骨格は、実はそれほど揺らがない気もする。 ちなみに、この本は、著者はどんな人なのか、あまり気にせずに読んだ。著者の意見・解釈はしばしば入るが、著者の書き振りがしっかりとしていて、とても客観的なものとして読めたからだと思う。全部読み終わったところで、著者の名前をみると、Bettina Stagneth。ドイツの哲学者ということだが、名前が女性ぽいなと思って調べると女性でした。 つまり、本を読んでいて、著者は男性であると無意識のうちに前提を置いていたことに気づき、衝撃をうけた。そっか〜、気をつけなきゃ。

Posted by ブクログ

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