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万葉ポピュリズムを斬る
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万葉ポピュリズムを斬る

品田悦一(著者)

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万葉ポピュリズムを斬る

1,980

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 短歌研究社/講談社
発売年月日 2020/10/07
JAN 9784065209271

万葉ポピュリズムを斬る

¥1,980

商品レビュー

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2021/03/25

ポピュリズム(populism)とは、大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢のことだという。随分と挑戦的な本の題名だ。 「令和」が万葉集から採られたことに対する元安倍晋三首相の言を真っ向から批判している。 いわく政府は漢文籍ではない日本の万葉集から採られたというのを強調している。万葉...

ポピュリズム(populism)とは、大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢のことだという。随分と挑戦的な本の題名だ。 「令和」が万葉集から採られたことに対する元安倍晋三首相の言を真っ向から批判している。 いわく政府は漢文籍ではない日本の万葉集から採られたというのを強調している。万葉集巻五「梅花歌三十二首」の序「于時初春令月 気麗風和」から採られているわけだが、文芸批評の間テキスト性(interrtextuality)の考えを応用すると、張衡「帰田賦」(文選)の「於是仲春令月 時和気清」と王義之「蘭亭集序」の「是日也、天朗気清、恵風和暢」と響き合っていて、序を読む者がそれぞれのテキストの後半までも参照することが期待されているのである。そこには老荘思想や誰もが死を逃れることができないという考えが述べられているし、明らかに当時の政権の腐敗への嫌悪が表されている。令和は、純和製というわけではないし、現政権への批判を秘めた年号ということになる。なぜ大伴家持はそんな序を書いたのか。大伴家と親密であった長屋王の事件が絡んでいるのだ。「梅花歌」には長屋王事件の起こった天平元年の歌だけがないのである。これが指し示していることは明らかであろう。 万葉集が「天皇や皇族、貴族だけでなく、防人や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ」という安倍晋三氏の言は、実は間違いである。東歌や防人歌も地方の豪族が詠んだものなのだ。裕福な者しか所有できない馬や鏡が歌に出てくるし、短歌の字数や連続する母音は一音節として数えられるという規則が厳密に守られているからである。また詠みこまれた地名も「〇〇の○○」というように明らかに中央の貴族たちを意識している。防人も裕福な者しか出せない。万葉集が国民文学と言われるようになったのは、明治政府の国民の一体感を盛り上げようというたくらみのせいに過ぎない。この辺りのことは、今や学者の間では常識らしい。自民党政権の不見識をさらけ出した結果となった。万葉集が庶民に広く知られるようになったのは明治からであり、それまでは貴族の間で知られていたにすぎない。だからといって万葉集は日本の文学に影響を及ぼしてこなかったということにはならない。これはまた別の話であろう。いやはや、驚くことばかりで私自身の不見識も恥ずかしい。万葉集の成立過程やその後については、いろいろ本を調べてみたいと思う。 品田悦一氏は元号とは言わずに年号と言っている。元号という言葉や「一世一元」ということや女性の天皇を認めないということを定めたのは井上毅だそうだ。また、それまでは年号が変わるとその年の一月から元年になっていたのに、前の年号と新しい年号の年数が重なるようになったのも明治かららしい。

Posted by ブクログ

2021/03/05

「令和」の「元号」が発表されたときに、注目された「万葉学者」品田悦一さん。 品田さんは、「令和が万葉集からやってきたというが、その参照もとの大伴旅人の言葉には、中国の古典への参照リンクが存在し、そちらの文脈も踏まえて読めば、「令和、云々」の文章は、太宰府にいた大伴旅人が都の政治...

「令和」の「元号」が発表されたときに、注目された「万葉学者」品田悦一さん。 品田さんは、「令和が万葉集からやってきたというが、その参照もとの大伴旅人の言葉には、中国の古典への参照リンクが存在し、そちらの文脈も踏まえて読めば、「令和、云々」の文章は、太宰府にいた大伴旅人が都の政治を批判したものと読むことができる。そして、それを理解せずに、また万葉集は、天皇から庶民までが素直な気持ちを歌ったすばらしい日本文化の象徴であるみたいな数十年前に棄却された説を引用する政治家は信用できない」みたいな主張をSNS上で発して、話題?になった。 そういう経緯もあって、品田さんの「万葉集の発明 国民国家と文化装置としての古典」が20年ぶりに新装版ででて、わたしも即買いした。 この「万葉集の発明」は、タイトルからもわかるようにベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」の日本版とでもいうもので、「万葉集」が国民国家としての日本をつくるために明治以降にその位置付けを「国書」として位置付けられたものという話。(もちろん、もともとのアイディアは「想像の共同体」かもしれないが、それを具体的に様々なテキスト分析のなかから論証していくことは別の話。これは、極めて説得力のある分析だと思う) そんな感じで、にわか品田ファンになったのだが、そのもとになった令和と大伴旅人についての文章を起点に「万葉集」の「政治利用」的な文章や講演記録などをまとめたのが本書。 話題のSNSの文章では、まだよくわからなかった点がかなり詳細に説得力をもって説明されているし、品田さんの怒りの根っこがとてもよくわかる。 一般の人を対象とした文章なので、わかりやすいのだが、分析の内容のレベルはとても高い。文学理論でいうところのテクスト・クリティーク、間テキスト性なでを踏まえた読解で、思わずうなってしまう。 まえがきが、品田さんのお父さんへの弁明になっていて、つまり、「万葉学者」の息子が、「令和」について人騒がせなことを言っていて、父にも迷惑がかかっているだろうが、許して頂戴的な話し。とてもユーモラスに書かれているのだけど、想像するに、いろいろ大変なことが起きていたと思う。それでも、「万葉学者」として、これは言わなければないんだみたいなところに感動した。 「万葉集」の政治利用なんだな〜。やっぱ。 「万葉集」はすばらしいものなんだけど、これを「天皇から庶民までみんな歌を読んでいた素晴らしい日本国民 ・・・美しい国」と位置付けることで、明治時代には、外国への対抗として利用したし、これはそのまま「そういう素晴らしい国を守るための戦争」という言説を形成していった歴史があるのだ。 そして、今、個人の多様性を脇に置いて、一つの日本文化というかたちで美化して包含してしまおうとする政治的な言説が存在することに意識的であらねばと思った。 これは、「万葉学者」だからこそ発された品田さんのメッセージであるとともに、遠く時代を超えて大伴旅人からのメッセージでもあるのだ。 と書くと難し気になってしまうが、基本的には前提知識なしに読める。

Posted by ブクログ

2020/12/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 文学研究としては、とても真っ当に資料を確実に活用しながら、真理を探究しようとしている。「庶民の歌」はどこから来たのかと考えれば、「万葉集」に対する虚説は無くなる。 (オビや前書きほど過激な本ではないから、落ち着いて読む)

Posted by ブクログ

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