日本の庶民仏教 講談社学術文庫

五来重(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 2020/06/11
• JAN: 9784065196113

商品レビュー

2024/09/21

原本は1985年。が、専門誌に掲載した小論を一冊の本にしたもので、1970年代の作品。それだけにここで取り上げられている風習には途絶えてしまったもの、石仏は風化して原型をとどめていないものも多いであろう。
権力者がお金を集めて建てた寺院でもなく、難しい教義を持つ高度な仏教話でもなく、庶民が信じた仏教のお話。死者を弔う、病気平癒を祈る、農業や漁業に関する祈りなど。
大般若教は壮大な経典である。が、雷除けに良いらしいから始まり、あちこちの村々で村巡りしたそうで奈良平安時代のもので欠巻も多いらしい。誰かの病気が良くなるようにと貸し出し続けた結果なので、使命は果たしたんだ、と。
また、宇都宮市民としては、この時点でもう大谷寺の千手観音磨崖仏の風化が甚だしいと書かれていて、はっとした。また、子供の頃にお隣の茨城県の河原子海岸によく行ったが、あの辺りに海に向かい掘られた磨崖仏があったかもしれないとの事(漁民を海難から救うだけでなく海難で亡くなった人を霊を救う補陀落信仰も込めて)
山岳信仰、特に修験道と関係した山の薬師。海岸地域に薬師寺や薬師堂が多く見られる海の薬師の話も興味深かった。仏教の薬師というより、常世から来た神として祭られている。

2022/10/20

ある時から急にむくむくと湧き起こり探求への沼えとハマっていた日本民俗と宗教についての疑問？不可思議に分かりやすく答えてくれる書に出会えた。と思っている。序でに言うと、冒頭記載される「日本の仏教は仏教ではない。」と言う言説とクライマックスっd記載される「全ての現象を日本の言語や民俗で理解するよりも、海外の知識をふりまわすのが、格好いいと思う文化人の習性」と言う著者の態度に僕はいたく共感を覚えた訳である◎充実した読書体験に感謝。良い本です◎