風雪挽歌 夜叉萬同心 光文社文庫

辻堂魁(著者)

• 販売会社／発売会社: 光文社
• 発売年月日: 2020/04/14
• JAN: 9784334790141

商品レビュー

2022/10/20

久しぶりに　辻堂魁氏の本を読んだ。
萬七蔵、北町奉行の定廻り同心が、主人公である。
35歳で、このお役抜擢は、凄いものだったのだろう。
やっかみもあり、七蔵は、手柄を立てないといけない！と、
せっつかれる。

さてさて、最初の「序」で、著者のこの風景描き方。
鴫の啼き声迄、細やかに描き出している。
そして、事件は、起きる。
首をスパッと・・・刀をすっぱ抜く。

第一章、「三一侍」、これで、さんぴん侍と、読むのか？と、初めて知った。
コロンボ刑事のやり方のように、最初から、犯人を現わしているのだけど、読んでいて、後半は、この事件が、8年もの期間を有した事に・・・

侍でありながらお手付きの子で、その家では、飼い殺しのように育った田島亮之介。
世の中の不満が、渦巻く中、それに腹を立てているのだけど、今の世の中に生きていたら、どれ位成敗しても追いつかないだろうなんて、読んでいる頭の片隅に思いを馳せながら、読み進む。

そうそう、92頁の「狐そば」・・・
関西では、「タヌキ」というのだけど。
関東の人は、今でも、「狐そば」と、言うのだろうか？なんて、思いながら・・・当時の食生活についても、立喰いそばの夜食が、遅くまであったのだと。

夜叉萬同心シリーズを最初から読んでいないのだが、説明があるので読みやすい。
しかし、もっと主人公の七蔵の剣さばきが、欲しいと、思ったのは、他の時代小説の読みすぎであろうか？

幕切れのも　少し物足らないように思えた。
私が、最初から読んでいないせいだろう。

2020/06/18

北町奉行が異例の若さで定廻り同心に抜擢したのは、萬七蔵、三十五歳。袖の下を使った出世だと噂が広がる中、深川の貸元が何者かに殺害される。あと一歩まで下手人を追い詰める七蔵だったが――。まだ夜叉萬と呼ばれる前の七蔵が取り逃がした凶悪な男と再び対決。侍の世の不条理と、敵への憐憫と、人の心に巣くう何かをも斬る。夜叉萬の始末が胸を抉る傑作小説。

令和2年6月16日～18日