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アリストテレス 生物学の創造(下)
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アリストテレス 生物学の創造(下)

アルマン・マリー・ルロワ(著者), 森夏樹(訳者)

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アリストテレス 生物学の創造(下)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2019/09/18
JAN 9784622088356

アリストテレス 生物学の創造(下)

¥4,180

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2022/07/08

《ヒツジの谷》 遺伝や変異、性決定、先祖返りについてのアリストテレスの理論は、思弁的ではあったが、ありうべき血の通うシステムを精巧に描きだしていた。 《カキのレシピ》 アリストテレスが奇妙にも自然発生論をもちだして説明づけている生き物たちがいる。なぜ彼は自身の体系をねじ曲げて、...

《ヒツジの谷》 遺伝や変異、性決定、先祖返りについてのアリストテレスの理論は、思弁的ではあったが、ありうべき血の通うシステムを精巧に描きだしていた。 《カキのレシピ》 アリストテレスが奇妙にも自然発生論をもちだして説明づけている生き物たちがいる。なぜ彼は自身の体系をねじ曲げて、一部の生物の自然発生を信じたのか。 《イチジク、蜜蜂、魚》 アリストテレスは生物の生活史を世界全体の動的平衡とサイクルの中に位置づけ、環境の要請と動物の体の要求を見事に関連づけていた。十分に説明がつかない生物種は、彼をもっとも悩ませ、かつ魅了した。 《石の森》 進化論を含まないアリストテレスの生物学は忘れられた。しかしその影響はリンナエウス、キュヴィエを通じてダーウィンへ、そして現代の生物学へと引き継がれている。 《宇宙》 アリストテレスの生物学には群集生態学が欠けているように見えて、そのことは彼の生物学と政治学、形而上学、倫理学などを結ぶ補助線でもある。その全体は壮大な「宇宙の目的論」のヴィジョンをなしている。 《ピュラー海峡》 彼の遺産はなぜかくも徹底的に忘れ去られたのか。一七世紀の科学革命にまでさかのぼり、アリストテレス評価の変遷とその妥当性を再考する。 補遺  I アリストテレスの動物一二種と、六つの形態学的特徴のためのデータ・マトリクス II 胎生四足類(哺乳類)の栄養(troph?)摂取とその配分経路 III 知覚と動作のCIOMモデル IV アリストテレスの心臓—肺の体温調節サイクル V アリストテレスの生活史データ——胎生四足類と鳥類 VI 生活史の特徴間の関係を現代のデータを使用して図示

Posted by ブクログ

2022/02/20

17世紀にベーコンやデカルトらから否定され、いつしか科学者たちから忘れられたアリストテレスの生物学。だが、アリストテレスは彼以前の古代ギリシャの自然哲学者(ピュシオロゴイ)たちと違い、観察と実験に基づく理論によってその後の西洋科学の礎を築いた。著者はアリストテレスがフィールドワー...

17世紀にベーコンやデカルトらから否定され、いつしか科学者たちから忘れられたアリストテレスの生物学。だが、アリストテレスは彼以前の古代ギリシャの自然哲学者(ピュシオロゴイ)たちと違い、観察と実験に基づく理論によってその後の西洋科学の礎を築いた。著者はアリストテレスがフィールドワークをしたと言われるレスボス島のラグーンへ赴き、従来のネガティブなイメージや神のごとく崇められるイメージのどちらでもない、アリストテレスの本質を探っていく。 著者ルロワ自身も発生生物学者。若い頃は貝類学者をめざしていた時期もあったという。自ら足を伸ばしたレスボス島でアリストテレスと同じ生き物を見ているかもしれないという興奮が伝わってくる文章は、純粋な好奇心とセンス・オブ・ワンダーに満ちあふれていて惹きつけられる。表紙に使われた若冲の貝甲図がぴったりだ。 『動物誌』を起点にアリストテレス生物学を復権したいという情熱に突き動かされているルロワの姿は、グリーンブラットの『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』(22/1/11読了)にも近しいものを感じた。双方とも、西洋思想の根幹にいる人物として古代ギリシャ人を召喚する。けれど、『一四一七年〜』のルクレティウスが伝えた原子論とアリストテレスは真っ向からぶつかる立場。それゆえアリストテレスは啓蒙主義時代の思想家から攻撃され、捨て去るべき遺物とされてしまった。 ルロワが強調するのは、アリストテレスは現代にまで続く学術的な思考法を打ち立てたということ、自然について考えることがすべて〈哲学〉の範疇だった時代に、彼が〈科学〉を創り上げたということだ。そして生物学者としての功績はリンネの分類学とダーウィン進化論にまで微かだが確かに響いており、科学史上でアリストテレスはダーウィンに比肩すると考えているようである。 それがどこまで妥当なのかは素人読者なので保留しておくとして、ルロワが「イルカのいびき」「コウイカの霊魂」「カキのレシピ」などの魅力的な章タイトルを立てて解説してくれる古代ギリシャ一流の生物学は確かにとても面白い。もちろんルロワは現代の科学者として時に厳しくアリストテレスを批判し、論理のあいまいな部分にツッコミを入れているけれど、そのがっぷり四つの姿勢には深い敬愛を感じる。なにしろ2300年以上前のテクストなのである。 私が一番興味深く読んだのは、上巻「コウイカの霊魂」「泡」の章で取り上げられている発生に関するアリストテレスの考え方。「形相」と「質量」という用語は哲学史で学んだけれど、ニワトリの受精卵を割って胚の成長過程を観察したアリストテレスにとっては観念上の話ではなかったのだ。ルロワは「形相」をたやすく現代の遺伝子学に結びつけることにはNoを示しつつ、アリストテレスが後生説を採っていたことを評価する。だが、生物の機能にはすべて目的があるとする考えはダーウィニズムの適者生存とは相容れなかった。 では、すべてに意味と目的があるとするアリストテレスが考える〈生命の目的〉とは何だろう。ルロワによれば、アリストテレスは「生物が生き延びて生殖することを望むのは、それによって『永遠なる神的なものに与ることができるからだ」と説明しているという。思うに、ここにこそ後にトマス・アクィナスがスコラ哲学を作りだす芽があったのだろう。また彼は単純な生き物から複雑な生き物へという序列を作り、そのヒエラルキーの頂点に人間の男性を置いた。ヨーロッパで広く支持され、20世紀にアーサー・ラヴジョイが「存在の大いなる連鎖」と呼んだこの世界観も、カトリシズムがアリストテレスを取り込むことのできた要因の一つだった。そしてダーウィン以後、彼が忘れ去られる原因にもなってしまった。 プラトンに師事しながらもイデア論に反旗を翻し、現実に即した論理を組み立てるという西洋科学の土台を創りだしたアリストテレス。そして彼への敬愛をこの本にしたためたルロワとレスボス島の生き物たちに、ささやかながら拍手を送りたくなる爽やかな一冊だった。

Posted by ブクログ

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