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血の郷愁 ハーパーBOOKS
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血の郷愁 ハーパーBOOKS

ダリオ・コッレンティ(著者), 安野亜矢子(訳者)

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血の郷愁 ハーパーBOOKS

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 ハーパーコリンズ・ジャパン
発売年月日 2019/06/17
JAN 9784596541178

血の郷愁

¥1,313

商品レビュー

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2020/06/20

ヒロインが実に珍しいタイプである。 主人公は二人。 一人は、オッサンである。 マルコ・ベザーナ。定年間近の、早期退職を迫られてさえいる、たたき上げの新聞記者である。 仕事に全力を注ぎ、家庭を顧みなかったものだから、その上うっかりやらかしたものだから、家庭は破綻している。 その...

ヒロインが実に珍しいタイプである。 主人公は二人。 一人は、オッサンである。 マルコ・ベザーナ。定年間近の、早期退職を迫られてさえいる、たたき上げの新聞記者である。 仕事に全力を注ぎ、家庭を顧みなかったものだから、その上うっかりやらかしたものだから、家庭は破綻している。 その相棒として立たせるならば、どんな人物がいいだろう? 若くて、女性で、インターン(見習い記者)、やる気も実力もあるのに、機会に恵まれずクサクサしている、勝ち気なガツガツ美人? よくあるのはこんなところだろうが、イラリア・ピアッティは違う。 26才、女性で、インターンではあるが、服のセンスの全く無い、話し方のモタモタした、相手をウンザリさせる、方向音痴、路線音痴、不安定、 モサ子、ダサ子、ドジっ子、メガネっ子、・・・・・・ 断言しよう。一部男性に、たまらなくモテる、「萌え」をそそる人物造形である。 ヒロインとしてはたいへんに珍しいタイプの彼女を主人公の一人に据えたのが素晴しい。 このマルコとイラリアのコンビが、連続殺人に取り組むのである。 イタリア北部の街ベルガモで、一人の女性の死体が発見される。 なかなかむごい状態なのだが、あまりそれを感じることはない。 描写をおとなしくしていることもあろうが、主人公が新聞記者だからという理由もあるだろう。 例えば警察官が主人公ならば、彼が見たまま捉えたままを描写しがちだろうが、彼らは記者なので、警察から話を聞く形で被害者の様子を知っていく。 読者に与えられるのは、その間接的な情報なので、描写はおとなしくなっている。 しかし、その話し手の司法警察官がマルコの義弟で、いっしょにカルボナーラを食べながらという点で、別の印象を抱くかもしれない。 そう、これはイタリアミステリなのだ。登場人物は皆よく食べる。美味しそうなものがよく出てくる。 マルコなぞは、おぞましい死体を見たばかりだというのに、燻製生ハムとブリーチーズのパニーノをビールとともにかっ食らう。 ある犯罪学者はグリッシーニをかじり、からすみスパゲッティを作りながら、えげつない犯罪のあれこれを語る。 事件の重要なところに、ピッツェリアがあり、リストランテがある。 ステリーネのスープ、ソーヴィニオンのグラス、プンタレッラのアンチョビ炒め、水牛のモッツァレラチーズ、アーティチョークのパルメザンチーズ和え・・・・・・ さりげなく次々と出てくるのだ。 「まったりとしたクリームの舌触りが」 「パリパリという音とともに香ばしさが鼻をくすぐり」 などという余計な説明もなく、ましてや作り方もレシピもない。 これがいい。 彼らはごく当たり前に、美味しいものを作り、食べ、飲み、味わい、日々の活力としているのだ。 作者ダリオ・コッレンティは、匿名の男女二人組である。 どちらも報道の世界をよく知っているというが、新聞記者として長くやっていた人達ではなかろうか。 というのも、マルコの口を通して語られる今昔の記者エピソードが、実に生々しいのだ。 マルコが新人だったとき、編集局には名士しかいなかったとか、バブル華やかなりし頃の特派員は驚くほどぼろもうけだったとか、インターネットとやらが現われた時、新聞業界はどれほどそれを侮っていたかなどである。 それが今や紙の新聞は、ネットやSNSの時代になり、過去のものとなりつつある。 そんな中にあって、記者というものはと、マルコはイラリアによく語る。 定年間近のオッサンの面倒くさい説教とボヤキと読むこともできる。 けれどもそれは、報道のありよう、あるべき姿を説くものであったり、新聞記者だけでなく、マスメディア全体の変遷を語るものであったりする。 マスメディアの歴史を見るようで、たいへんに興味深い。 定年間近のマルコは、まるで紙の新聞のありようを体現しているようだ。 イラリアは、滅び行く世界に足を踏み入れてしまったのだが、今後どうなっていくのだろう? 「新しい形の報道」を、その体現者として模索していくのだろうか。 イタリアでは、既に2冊目が刊行されている。 そうはいってもまだまだ勢い盛んなマルコと、才能はあっても危なっかしいイラリアの活躍を、日本でも早く読みたいものである。

Posted by ブクログ

2019/08/14

凝った作品です。説明口調が多くて、ストーリー部分に入り込みにくい面はありましたが、真犯人にたどり着くまでのプロセスはなかなかでした。久しぶりにこの種の犯罪ストーリーを読みましたが、想像するにヘビーです。また、イタリア作品だけに料理やワインの描写がたっぷりあって楽しめました。

Posted by ブクログ

2019/07/18

 ホラーかバイオレンスを思わせるような扇情的なタイトルに見えるが、実は主人公のベテラン記者マルコが人生で殺人事件ばかりとつきあって来て、そのことをいつも誇りに思っていることから、引退を迫られている現在の境遇に直面して、血まみれの事件が懐かしく思われるだろう、そうでなければ空虚だと...

 ホラーかバイオレンスを思わせるような扇情的なタイトルに見えるが、実は主人公のベテラン記者マルコが人生で殺人事件ばかりとつきあって来て、そのことをいつも誇りに思っていることから、引退を迫られている現在の境遇に直面して、血まみれの事件が懐かしく思われるだろう、そうでなければ空虚だと感じていることを表わしている。相棒のインターン記者であるイラリアが、それを聞いてマルコの事件記者人生に、また自分の進むべき道への想像の中で何度となく思いを馳せるのだ。  事件は18世紀に実際に起きたイタリア最初の連続殺人事件が原題に模倣され蘇る。カニバリズムを思わせる残酷な死体が夜のミラノに連続して投げ出される猟奇殺人である。本来これを追うのは警察組織であるのに、本書の主人公は新聞記事を書くことを仕事とする二人の記者である。現在日本の映画館を席巻している映画『新聞記者』からもわかるように、時には警察を先取りして事件の真相に迫る<ブンヤ>が存在する。  とはいえ記者を主役に据えたミステリが多いというわけではない。ましてやその記者に生活感と個性を持たせ、人生を抱えさせ、作者が強い愛情を注ぎ込んで存在感を強烈に浮き立たせる小説は、そう多くはないと思う。その意味で本作は稀有と言える。事件そのものより、むしろ二人の記者の日々が活写されていることが相当に魅力なのだ。  マルコ・ベザーナは絵に描いたようなベテラン記者。性格的に強いとは言い難い。妻に浮気され、自分も恋のアバンチュールで痛い目を見る。一方的に愛情を注ぐ息子は彼に寄りつこうともせず、話もろくに聞いてくれない。社内では、ライバルの活躍が目立ち始め、上司から引退を迫られ、その中でこの最後かと思われる事件に対しては特別な想いがある。執念のブンヤなのである。  一方、インターンの女性記者イラリア・ビアッティは、少女期に母が父に殺害され過去を持ち、それがトラウマになっている。いわば被害者家族かつ加害者家族として、殺人事件そのものに深く運命的に関わったしまった人生を強制されているのである。しかし事件記者の仕事に初めて取り組みつつ、強制ではなく自分で選んでゆく人生を彼女は、取材行動を通して見出してゆく。何よりも孤独なオヤジ記者であるマルコの優しさや厳しさに仮想であり理想である父を見ているみたいに。  イラリアは本来は素敵な若い女性なのに、大きな丸眼鏡をかけてジャージ姿という野暮ったい恰好で仕事に出てくる。それでいながら仕事っぷりは天才的で、妙に鋭い観察眼を持ち、勘もよく、何度もマルコに新しいヒントを投げかけては真実の方向に誘導する。この新旧デコボココンビのやりとりが何ともおかしく、暗く残酷な事件を主題としつつも、明るいコメディを読んでいるようにほっとしてしまう。  マルコの優しさとイラリアのかわいらしさ。どちらも一見したところでは見出しにくい長所だが、小説につきあってゆくうちに、彼らの魅力に読者は絡め取られてゆくに違いない。少なくともぼくは見事に吸い寄せられれしまった。やはり小説は、魅力ある人間を作り上げることが一番読者の心に訴えかける、と従来の認識を新たにした次第。  ちなみに作家は二人の男女作家のペンネームである。覆面作家ということだ。彼らはミステリ畑ではないという。なるほど。それにしてはミステリとしての謎解き、ミスリード、DNAを初めとした科学捜査に関わるトリッキーな仕掛けなども見事である。そして何よりも嬉しいことにマルコ&イラリアの記者コンビの続編が期待できそうである。彼らとの再会が待ち遠しいばかりだ。

Posted by ブクログ